長時間デスクで仕事をしていると、椅子の座り心地が気になってきますよね。つい姿勢が悪くなってしまう一因かも、と思ってしまうミーナです。「骨美人」になれる椅子、知りたいです。
楽ちんなだけじゃない! 骨美人になれるのはこのタイプ。
骨盤を整える! 一歩先の「椅子選び」
椅子に座っているときは、立っているときや寝ているときの数倍も腰に負担がかかっていること、ご存じですか?
椅子に座る時間が長くなった私たちだからこそ、座ることで正しい姿勢になれる椅子選びが急務です!
ここでは、正しい姿勢のために必要なことは何か、そして、自分に適した椅子選びのポイントなどをご紹介します。
今回は、姿勢研究の第一人者として、本来の美しい姿勢のための椅子の開発も行っている矢田部英正さんにお話をうかがいました。
姿勢の研究から生まれた、
日本身体文化研究所の「生きるための椅子」とは?
矢田部英正さん Hidemasa Yatabe
profile
1967年生まれ。文化史家、造形作家、「日本身体文化研究所」主宰。武蔵野美術大学、放送大学の非常勤講師。体操選手時代の姿勢訓練が高じて、東洋の伝統的な身体技法を研究。姿勢研究の一環として1999年より椅子の開発に着手し、開発、デザイン、製作を手がける。
日本身体文化研究所 東京都武蔵野市吉祥寺東町4-16-6 ☎0422-22-7219
http://www.corpus.jp/
骨盤をサポートし、
健康へ導く椅子を開発
東洋の伝統的な身体技法の研究に携わり、姿勢研究の一環として椅子の開発に着手、椅子作家として活躍中の矢田部英正さん。矢田部さんの椅子作りは、家具を作ることそのものが目的ではなく、人の体の感覚を作っていくのが目的だと言います。
「体が本来持っている自然の形で、本来の力を発揮すれば、自分自身が持っている力を最大限に使いきれ、おのずと外見的な美しさが備わってきます。日本を含めアジア各地には、自然と一体になろうとする健康法が深く根づき、その根本としてとらえていたのが坐です。この床坐の感覚を椅子によって再現できないだろうか? と研究を始めたのが、そもそもの椅子作りのきっかけでした」
日本では長年、腰椎を反らせて座るタイプのものが主流でしたが、矢田部さんは上半身を骨盤で支える椅子を提唱。人間工学の世界に多い、座面を前に傾けて骨盤を前傾させるという手法ではなく、骨盤の真ん中にある仙骨に背もたれが当たるようにし、上半身をしっかり支えるという方法を採用しています。
「骨盤を支えるのか、仙骨のすぐ上にある腰椎骨で支えるのか、ほんの数㎝の差で、座れば座るほどどんどん元気になるのか、腰痛になるのか明暗が分かれてしまうのです」
上半身を骨盤で支える椅子の構造はそのままに、オーダーした人の体型や年齢、用途などに合わせて1㎜単位で細部を調整。一人一人の体を整える「生きるための椅子」を完成させていきます。
椅子選びに大切な
自分の適正寸法を知る
オーダーメイドの椅子作り。誰もが憧れるところですが、すぐには難しいという人も多いはず。市販の椅子の上手な選び方はあるのでしょうか?
「自分の体に合うかどうかを判断する基準として、自分の寸法を知ることです。大切なのは座面の高さと奥行き。適正寸法を測る際は、背もたれのない椅子に、腰を壁につけ膝を90度に曲げて座ります。その状態で測定した膝裏からかかとまでの長さが座面の適正な高さ、膝裏から壁までが奥行きになります。
座面が高すぎると、太ももの裏側を圧迫して血行を妨げたり、坐骨神経痛、むくみなどの原因に。また奥行きが広すぎて腰が背もたれに届かないと、猫背が慢性化して椎間板を痛める可能性が高くなります」
例えば身長160㎝の女性の場合、適正な座面の高さは40㎝前後ですが、市販されている椅子のほとんどは座面の高さが45㎝。椅子でもサイズ展開をしているブランドもありますが、まだまだ少数派のため、調整方法を知っておくといいでしょう。
高さは、足台を置く、ヒールのあるサンダルを履くなど足の下を高くすればOK。座面が広すぎる場合は、クッションなどを置いて対応しますが、大きすぎると胸まで反らせてしまうため、20〜25㎝くらいの枕のような形状のものがベストです。
「座面の高さと奥行きが合うとフィット感があり、本来の自分の居場所という感じで、とてもくつろげると思います。自分の適正寸法から前後2〜3㎝ならストレスになりませんから、上手に調整して本来あるべき自然な姿勢を保てるようにしていただきたいですね」
次回は、矢田部さんオリジナルのレーベルをはじめ、厳選した骨美人になれる椅子をご紹介します。
撮影/梅川良満 取材・原文/蕨 康子