筋肉は脳の命令を聞いているだけでなく、運動で筋肉が収縮するたびに、脳を刺激する物質を分泌して脳へ働きかけているそう。近頃、ちょっとオツカレ気味のミーナ、しっかり筋肉を動かして心身の安定に役立てなくちゃ。
今も将来も、美しく健康でいるために
私たちには「筋活」が必要です!
「要介護」や「寝たきり」なんて、まだまだ先のこと…。そう思っていませんか? 確かに、寝込むのは先のことかもしれません。でも、それを防止するためには40代、
50代での「筋活」が必須! 筋肉を鍛えることを習慣化することが、何より大切です
「筋肉を鍛える」ことは認知症、うつ予防にも効果が!
筋肉の働きは、ただ体を支えたり、動かすだけではありません。
認知症やうつといった、脳に関係する不調の改善にも効果があることが、最近の研究でわかってきました。
今回は、うつや不眠対策、ストレスの解消など、筋肉を鍛える「筋活」がもたらす好影響について、中高年の筋トレや健康について研究している久野譜也先生にお話をうかがいました。
久野譜也さん Shinya Kuno
profile
1962年生まれ。
筑波大学大学院人間総合科学研究科教授。
スポーツ医学の分野で、サルコペニア肥満、
中高年の筋トレ、健康政策などを研究。
2002年「つくばウエルネスリサーチ」を設立。
〝科学的根拠に基づく健康づくり〞を
基本理念に健康情報の発信を行う
"うつ"不眠"対策にも
「筋活」がひと役買う!
筋肉は、単に脳の命令を聞いているだけではなく、自ら脳へ働きかけています。その方法は、運動で筋肉が収縮するたびに、脳を刺激する物質を分泌するのです。
「その物質は、現在わかっているだけで約30種類もあり、マイオカイン(筋肉由来内分泌因子)と総称されています。特に注目されているのがBDNF(脳由来神経栄養因子)です。脳の肥料の役割を果たし、記憶力を高めるだけでなく、情動のコントロールや摂食行動との関係、うつ病やアルツハイマー病を防ぐ作用があることを示唆する研究もあります」
運動を行うと、心地よい疲れを感じるとともに感情が安定するので、睡眠と関係があるとする調査結果も。しっかり筋肉を動かしていると、心の安定にも役立つのです。
"ストレス"マネージメントには
「筋活」が一番!
上記のように、運動習慣は、心の健康にとてもいい影響を与えることがわかっています。なかでも多くのエビデンス(科学的根拠)に裏づけされているのは精神的ストレスに対して。運動をしたら心のモヤモヤが晴れて、気分がすっきりした! という経験をした人も多いはず。
「それは運動により、体内のストレスホルモンが減ったから。運動の前と後でストレスホルモンの血中濃度を調べると、運動後には大きく下がるというデータも。また、運動により普段と違う視野を持つことで、悩みが吹っ切れることもあるでしょう」
ストレスはこまめに解消することが大切。運動を習慣化することで、脳も体も若返らせながら、日頃のストレスを上手にコントロールしていきましょう。
"やる気が出ない"ときには
まず体を動かそう!
ランニングなどをして、強い高揚感が現れるのがランナーズハイ。こうした気分の高まりは、歩いていても起こり、これがウォーキングハイです。
「いずれも、脳内にエンドルフィンという物質が分泌されることで起こります。ハイ状態で気持ちが大きくなり、考え方も前向きになるので、これを上手に利用すれば、仕事などへのモチベーションを上げることができます」
ドーパミンが分泌されるまでには、ウォーキングなら1時間くらいかかるそうですが、〝最近どうもやる気が出ない…〞というときには、家でダラダラせずに、長く歩いてみるのもいいかもしれません。達成感により、自信がつくことも、やる気スイッチをオンにするのにも役立ちます。
人生をも変える
「筋肉の底力」に注目!
ちょっとしたことで元気になったり、落ち込んだりする不安定な心。
「その心を安定させるには、運動で体を動かすことが一番。運動を習慣づけると、心の調子もコントロールできるようになります。また、筋肉は、体を動かすだけでなく、代謝機能もアップさせます。代謝がよくなれば、体脂肪も減り、肌もきれいになり、体力が向上。体力がついてフットワークが軽くなると、心のフットワークも軽くなり、新しいことに挑戦する気持ちがわいてきます。運動は〝運〞を〝動かす〞と書きます。運動で動くのは筋肉だけでなく、その人の運も動き出し、人生が開けてくるものです」
平均寿命86.83歳。寝たきりになるか? スーパーばあちゃんになるか? それは筋活次第です!
上の3つのグラフでは、青色は運動する前、ピンク色は運動したあとの結果を示しています。
「問題あり」は、それぞれの項目での精神的ストレス傾向がある人の群。平均値+標準偏差
*:vs.Pre、p<0.05
次回からは、「筋トレ」についての正しい知識と間違った知識をQ&A方式でご紹介していきます。
撮影/板野賢治 ヘア&メイク/木下 優(ロッセット)モデル/栗本奈央 スタイリスト/本瀬久美子
図表製作/ビーワークス 監修/久野譜也 構成・原文/山村浩子