【教えてくれた人】
東京医療保健大学大学院医療保健学研究科医療栄養学領域修了。慶應義塾大学SFC研究所 食・フードサイエンス&テクノロジー共同研究機構メンバー。著書は『麻生れいみ式ロカボダイエット』(ワニブックス)、『20kgやせた! 糖質オフ入門 最新版』(宝島社)などすでに28冊に及ぶ。ベストセラーも多数。
本音で言えば、和食はちっともヘルシーではありません!
こんにちは、こんばんは。
朝に夕に、食べ物と健康のことばっかり考えている管理栄養士の麻生れいみです♪
「私、和食中心の食生活なんですが、まったく痩せません〜」という人は、昔から多いもの。
まず質問です。これからランチを食べます。
A)小鉢がいくつかついた煮魚定食
B)サラダ付きステーキランチ
あなたはどちらを食べたいですか?
大半の女子はA)の煮魚定食を選びます。そう、和食のほうがバランスもいいしカロリー少なそうだしヘルシーな印象だからよ。
でも、太る太らないという観点からいうと、決してヘルシーではありません。
逆に「和食は本当にヘルシーなのか?」と考えさせられる研究論文も出てきています。
和食の短所は、糖質、塩分過多&脂質、タンパク質不足。
盲点なんだけど、和食は、いってみれば目に見えない糖質のオンパレード。
煮物をはじめ、和食の調理には砂糖、みりん、日本酒など、糖質の高い調味料がかなり使われているでしょう?
これを「隠れ糖質」と呼びます。和食は「隠れ糖質」が多いと心得てね。
家で作る和食なら「薄味にしよう」と思う人も多いでしょうけど、今、自炊でも1品や2品は買ってきたお惣菜にしたりするのは普通。
買ってきた惣菜は得てして味が濃くできている。塩にも砂糖にも防腐効果があるからたくさん入ってるの。そのほうがご飯がすすむし、砂糖には中毒性があるからリピートしてもらえるのよ!
糖質というと砂糖など甘いものばかり思い浮かべるかもしれないけれど、お米も小麦粉もそば粉でも「ほぼ糖質」でできてますから。
そして和食には根菜類もよく使われる。いも類もかなり糖質が高いんです。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、炭水化物(糖質)の推奨量は1日に摂取するエネルギー(カロリー)の50~65%となっています。
でも、主食のほかに隠れ糖質、間食の糖質を入れたら、多くの人は50%や60%ではすまないわね。
糖質のとりすぎで太る理由、それは「体脂肪のもとになるのがおもに糖質だから」
糖質をとりすぎると、なぜ太るのか? そこ重要でした。
糖質は太るとよく聞くけど、実際なぜなのかわかっていない人が多い。
ズバリ、答えましょう。体脂肪のもとはおもに糖質だから!
お米やパン、麺、いも類などの「ほぼ糖質」は、体内でブドウ糖になります。糖質を多くとりすぎると、急激に血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)が上がります。
すると体は危機を感じて、インスリンというホルモンをドバッと出して血糖値を下げようとする。このインスリンがくせ者で、血液中の糖質を薄くするとともに、余った糖質を中性脂肪に変えてため込もうとする働きがあるの。
この中性脂肪が皮下脂肪や内臓脂肪になるのよ。知ってた?
だから、脂肪をため込むお手伝いをするインスリンは「肥満ホルモン」と呼ばれたりしてます。
そもそも、血糖値の急激なアップダウンは、眠くなったりイライラするなどメンタルを不安定にすることも。イライラ解消のために脳はさらに糖質を欲しがるという悪循環に陥る。
これが「糖質中毒」「糖質依存」などといわれる理由。
さっき「砂糖には中毒性があるからお惣菜をリピートしてしまう」と言った意味はそこです。
もちろん、ブドウ糖はエネルギーとして消費されれば問題ないので、消費されないほどとりすぎていないかが重要よ。
タンパク質と脂質は必要なの、こっちは少なくしないでね!
糖質の話をすると「そうはいっても、カロリーは少ないほうがいいのよね?」という人が必ずいます。
脂質やタンパク質は、確かに糖質よりもカロリーは高い。
でも、カロリーという机上の概念を切り離さないと、肥満ホルモンといわれるインスリンの作用とごちゃごちゃになってしまうでしょ。
糖質制限をしているつもりで、実はカロリー制限も同時に行ってしまうことになるの。
摂取カロリーが基礎代謝量を下回ってばかりいると、体は飢餓状態に備えようとして消費エネルギーを下げて節約モードになり、太りやすくなるタイプの人もいます。
和食は油脂が少ないので、カロリーが少なくてよさそうに見えるけど、これまた大きな誤解。
よい油脂は細胞を元気にします。脳、神経、皮膚などを健やかに保つために欠かせない栄養素。
油脂を極端に減らすと、細胞が活力を失って抵抗力が落ちるなど健康によくないばかりか、お肌や髪の毛がカサカサパサパサになったり、美容面でもよくないです。
このところ世界的にも日本食ブームだけど、どちらかといえば「プラントベース」という意味で健康的といわれているのよ。
プラントベース? それは直訳すると「植物由来」。動物由来の原材料を使わず、植物由来の材料で作られた食品や、植物由来の食品を積極的に取り入れる食への考え方を指します。
欧米は、ステーキをはじめとして肉を食べる量が半端ない。そこを「動物性は減らして植物性のタンパク質を入れていこう」という流れになっているわけです。
だから豆腐などの大豆製品が世界で人気なの。
日本人の食事はもともと大豆製品が多いので、そもそもがプラントベースぎみでした。
たんぱく質は植物性と動物性で1:1のバランスを意識しましょう!
和食は、調理がシンプルで「素材が目に見える」ものを選んで!
では、どんな和食なら太らない、もしくは痩せやすいのか?
まず、主食のお米は少なめに。
家庭のご飯茶碗1杯は約150g。含まれる糖質は50〜55gです。これ、角砂糖に換算すると13個分だって知ってた?
これらの量を半分にすることから始めましょうか。
お店では茶碗が大きめで1杯180〜200gくらいあることが多いので、より注意が必要。玄米でも糖質量は同じ。雑穀米なら糖質量は少し減らすことができます。
タンパク質や野菜類などのおかずを先に食べ、おかずでお腹がいっぱいになるなら、主食は無理に食べなくてもいいという考えに。
そして、隠れ糖質の多い調味料を避けるためには、調理がシンプルなものにしましょう。
砂糖やみりんを使う煮物よりは、焼いたり蒸したり、炒めたりしたもの。
素材が目に見えることが一番です! 何が入っているかわかるものね。
つくねじゃなくて鶏をそのまま焼いたもの、魚もつみれじゃなくて刺身や焼き魚。
迷ったら素材が目に見える調理法のメニューを選ぶと間違いありません。
私がこれまでに食事指導した人の例を見てみましょう。
和食派で、よくお店の定食メニューを利用している方です。
いちばん好きな「鶏と野菜の黒酢あん」定食(ご飯180g)。そこにひじきの煮物の小鉢をプラスしてあり【糖質の合計:133.5g】です。
シンプルな調理法のメニューをとアドバイスしたところ、「サバの炭火焼き」定食にしてくれました。これなら【糖質の合計:75.7g】です。
別の日はさらにステップアップして、ご飯をやめて自主的に「ひんやり豆腐サラダ」にしました。すると【糖質の合計:12.3g】に!
糖質量はひと桁違います! シンプルな焼き魚には糖質がほとんどないことがわかるでしょ?
こんなふうに、和食の糖質には落とし穴がいっぱい。
ね、和食で太らない、なんていうのは幻想です!
取材・文・画像制作/蓮見則子 イラスト/カケハタリョウ