【教えてくれた人】
東京医療保健大学大学院医療保健学研究科医療栄養学領域修了。慶應義塾大学SFC研究所 食・フードサイエンス&テクノロジー共同研究機構メンバー。著書は『麻生れいみ式ロカボダイエット』(ワニブックス)、『20kgやせた! 糖質オフ入門 最新版』(宝島社)などすでに28冊に及ぶ。ベストセラーも多数。
糖質オフ、糖質ゼロは魔法の言葉じゃない!
こんにちは、こんばんは。
朝に夕に、食べ物と健康のことばっかり考えている管理栄養士の麻生れいみです♪
もともと私は低糖質、糖質制限、ロカボ、ケトン食、ケトジェニックダイエットなどの食事指導が多く、その関係の本もたくさん出させていただきました。
実践している人を多く見ているなかで、最近特に多くなったのは「糖質オフ、糖質ゼロのものばかり食べているのに全然痩せない」という訴え。
特にこの10年ほどで、低糖質の食品が本当に増えましたしね。
コンビニやスーパーに行って、パンでも何でも「糖質オフ」に吸い寄せられてしまうそこのあなた、おやつに困らない時代がやって来たと喜んでいるスイーツ好きのあなた、お酒やノンアル飲料は必ず糖質オフを選ぶというあなたも…、もう習慣になってる人は多いんじゃない?
なのに、どうして痩せないのかって?
「糖質オフ」は魔法の言葉じゃありません。
よく見て。「痩せる」とはどこにも書いてないの。
血糖値の急上昇を防ぐとは書いてあるかもしれないけれど。
どちらにしてもたくさん食べれば、チリツモで糖質の量は多くなるはず。
食べたものの表示をチェックして、ちゃんと計算してみてよ。
糖質数十gはすぐ超えちゃうんだから。
お店で何か購入するときは、手に取ったらまず「栄養成分表示」をチェックする習慣をつけてしまうといいわね。
ちなみに、間食はしていいけど1回の糖質量は10g程度までに。
それくらいなら、1日2回でもいいのよ。
急に血糖値を上げないことがインスリンをドバッと出さない、脂肪をため込まないコツだから。
今回は、近所のコンビニやスーパーで見つけてきた「糖質ゼロ」「糖類ゼロ」などの表示がある商品を購入して、栄養成分表示をチェックしてみます。
パッケージの栄養成分表示によると…
■商品A
「糖類ゼロ」表示のチョコレート[1箱5本入り]
1本(10g)当たり:糖質3.1g/糖類0g
■商品B
「糖類ゼロ」表示のビスケット[1箱11枚入り]
1枚(標準6.6g)当たり:糖質3.3g/糖類0g
■商品C
「糖類ゼロ」表示のクリスピーチョコレート[1袋28g入り]
1袋(28g)当たり:糖質13.5g/糖類0g
■商品D
「糖類ゼロ」表示のチョコレート[1袋40g入り]
1袋(40g)当たり:糖質15.9g/糖類0g
A〜Dまで見ればわかると思いますが、確かに「糖類」はゼロです。でも「糖質」はけっこうある!
ここ重要なので、後で説明しますよ!
■商品E
「ゼロ」をうたうビールテイスト飲料[1缶350mL]
100ml当たり:糖質6.9g
■商品F
「ゼロ」をうたうビールテイスト飲料[1缶350mL]
100ml当たり:糖質0g
どちらも「ゼロ」がつくのに、糖質量はだいぶ違いました。
Fは確かにゼロ! 対してEは6.9gだから許せるか…なんて思ったら、100ml当たりの糖質量なんですよ!
350ml缶だから、1缶飲めば糖質量は24g以上になるじゃありませんか。
これ、飲料にはあるあるなんです。
ゼロだと思い込んで2缶も3缶も飲んでしまったら、想像以上に糖質をとっていることに!
糖質オフの集中ダイエットで推奨しているのは、だいたい1食の糖質が20g。
飲み物だけで食事1食分以上にもなるのは避けましょうね。
老眼が進んできた人は「糖質」と「糖類」を見間違えないようにすることも大事よ!
糖質と糖類の違いは、きちんと覚えておいて
糖類はゼロでも糖質はゼロじゃない…これは、糖質オフダイエットを長らくしている人には当たり前のことだと思うけれど、もう一度整理しておきます。
まず、「炭水化物」と「糖質」の違いから。
栄養成分表示には「炭水化物」「食物繊維」しか書かれていなかったりして(最近はだいぶ減りました)、同義語に扱われることの多いこのふたつ。
炭水化物は、小学校でも習ったように三大栄養素(タンパク質・炭水化物・脂質)のひとつです。
糖質とは、炭水化物から食物繊維を除いたもの、と定められています。
食物繊維は体に吸収できない炭水化物のこと。
昔の栄養学ではカロリーがゼロだということで食物繊維はまったく重要視されず、炭水化物の一部と見なされていたわけですね。
炭水化物 = 糖質 + 食物繊維
つまり
糖質 = 炭水化物 ー 食物繊維
これを覚えておくと、表示を見る際にも理解しやすいわね。
そして肝心の「糖質」と「糖類」の違いについて。
糖質にはいろいろな種類がありますが、糖類はそのうちのひとつを指します。
糖質 > 糖類
ということですね!
図でわかるように、「糖質ゼロ」なら確かに糖質はどれも入っていない。
でも「糖類ゼロ」だと砂糖や果糖などは入っていないけれど、それ以外の糖質が含まれている可能性大。
例えば、でんぷんなどの多糖類がわんさか入っているかもしれないし、あまり体によいといえないアセスルファムK、アスパルテームなどの合成甘味料が使われている場合が多いんです。
「糖質オフ」でも、脳はだまされない人がいる!
そして、最近のあるあるは「糖質ゼロ」「糖質オフ」「カロリーゼロ」のワナ。
確かに糖質はカットしてあるのに血糖値が上がる人がいることです。
そもそも、糖質ゼロを表示してよいのは「100g(飲料の場合は100ml)当たり、0.5g未満の糖質を含む」食品。完全に「ゼロ」とは限らないんです。
糖質ゼロと銘打っていても、ほんの少しで甘味を感じさせることができる、砂糖より強烈な甘味料が使われていることが多いの。
甘味料には主に「天然甘味料」「合成甘味料」「糖アルコール」があって、血糖値を上げないとされるものがほとんど。
ただし、脳が「甘〜い♡」と感じた瞬間に、体内でインスリンのドバドバ分泌が始まってしまう人もいます。
体はだませても脳がだまされないっていう人ね。
合成甘味料は砂糖の何十倍何百倍もの甘味があるから、もう自然な甘さではもの足りなく感じたりする人も多い。
それどころか、この甘味に脳が慣れてしまうと、さらに甘いものが欲しくなる人もいるの!
満足感が得られずに、食欲が止まらなくなってしまうのかもしれないわね。
最後に。いくら低糖質や糖質オフでも、加工食品は太ります!
これ、うすうす感じている人いるんじゃないかな?
近年は着色料、増粘剤、乳化剤とかの食品添加物に関する研究論文が増えてきて、「超加工食品*」のような食品ばかり食べていると、食欲のブレーキが利かなくなるという研究データもよく見かけます。
*超加工食品とは、保存料や食品添加物を用いた加工済み食品のこと。スナック菓子や量産されたパンや菓子、ケーキ、インスタント麺、市販の飲料、冷凍ピザのような加熱調理済み食品やソーセージなどさまざま。
加工食品を使わないと、食事の用意に時間もかかるし食費は確かに高くつく。
でも、それだから痩せないんじゃない? そのことを自分の胸に聞いてみて。
自分へのご褒美は、シンプルなタンパク質がおすすめよ!
取材・文・画像制作/蓮見則子 イラスト/カケハタリョウ