【教えてくれた人】
東京医療保健大学大学院医療保健学研究科医療栄養学領域修了。慶應義塾大学SFC研究所 食・フードサイエンス&テクノロジー共同研究機構メンバー。著書は『麻生れいみ式ロカボダイエット』(ワニブックス)、『20kgやせた! 糖質オフ入門 最新版』(宝島社)などすでに28冊に及ぶ。ベストセラーも多数。
更年期太りで悩んでいるのは、あなただけじゃない!
こんにちは、こんばんは。
朝に夕に、食べ物と健康のことばっかり考えている管理栄養士の麻生れいみです♪
ひと昔前に比べて「更年期」や「閉経」のことを、オープンに話せる時代になってきましたね。
思春期がそうだったように、誰でも通るのが閉経、そして更年期。
全然恥ずかしいことじゃない。
更年期の時期には差があって、40代前半で始まっている人もいれば、60歳過ぎてもまだ更年期にいる人もけっこういるのよ。
女性ホルモン「エストロゲン」が急に減っていくせいで、さまざまな不調が起きる人もいますね。
「太りやすい」「痩せにくい」なんていうのも、まさに更年期あるある!
年齢とともに内臓が徐々に老化するし、基礎代謝、エネルギー代謝は当然ながら糖代謝も脂質代謝も低下する。脂肪が蓄積されやすくなってしまう。
さらにそこへ更年期でメンタルも体調もイマイチで、だるい、やる気が出ない、疲れる。
家で食事の支度するのなんてめんどくさい。
お惣菜を買ってきて終わらせよう…。そうなりますわね、そりゃ。
太ったのは、本当に更年期のせいだけですか?
すごくいい例があるんですよ!
私がダイエット指導をしていた、更年期で太ってしまったという人。
もう70kgを超えてしまったんだけど、それを「更年期だから」と言い張るのよ。
話を聞くと、更年期に入ったらしくて身も心もだるくて起きられない、出かけられないと。
だから、カロリーを考えて食事は少ししか食べてない。
それでも太るから悩んでいるというんです。
食べているものを数日分、報告してもらったら…
うそ〜!と思わず目を疑いました。
カップラーメン、カップ焼きそばのオンパレード。時々お皿や丼が出てくるのは、インスタントの袋麺か冷凍パスタ(盛りつけるだけ)です。
これを1日2回だけ食べているんです。
でも、牛乳を一緒に飲んでいると!
彼女によれば「カロリー表示を見て、1食500kcalくらいに抑えている」「牛乳はカルシウムがあるからよさそう」と表現するわけです。
昭和あるあるというか、令和のこの時代の話とは思えません。
カップ麺や超加工食品だけでいいと思う?
カロリーは少ないかもしれないけど、栄養が少なすぎるの。
それじゃ太るのは当たり前よ! と思わず言ってしまいました。
前にも話したけれど、タンパク質もビタミンもミネラルも食物繊維も、全部ちゃんととらなかったら、脂肪は1ミリも燃えません!
彼女がなぜこんなことになったかというと…。
夫が会社を定年退職して家にいるようになったから、なおさらいろんなことが面倒になっちゃって、動かなくなったんですって。
要するに、めんどくさくて顔を合わせたくないの。
夫が寝たら彼女は起きる。夜中に起きてテレビで映画なんか観てるわけ。
夫が起きたら彼女は寝る。昼夜逆転の生活を悪いと思っていないの。
それで太らないわけがないんだけど、たぶん脳にも栄養が行き渡っていない彼女には、それが太った原因だとは理解できていないのよ。
脳はいろんな栄養素によって調子よく動いてくれるんだから。
きっと夫が定年になる前から、インスタント食品は多かったんだろうと想像がつきます。
それがさらに高じて、より太ってしまったんだと思うわ。
食事が変わるにつれて、体調もメンタルも上向きになる!
とにかく、何でもできる範囲でいいから、いろいろなものを食べましょうよと。
「タンパク質をしっかりとって、コンビニの野菜でもいいから食べてくださいよ」と、アドバイスし続けました。
いちばん好きだというカップ焼きそばの代わりに、中華麺を買ってきて肉と野菜を入れて焼きそばを作ってと。
この際、糖質がどうのなんて言いません。
そしてコンビニに行けるならと、サラダチキンもついでに買ってもらって。
今度は卵とカット野菜のキャベツも買ってきて、サラダチキンと炒めただけでも立派な料理になるんだから。
そんなやりとりで、ちょっとずつでも料理を始めるところからやってね。
少しずつだけど料理ができるようになりました。
そしたら、そのうち体重がじわじわ減ってきたの。
やればできるのよ!
3kg減ったあたりで、それはもう気分が明るくなってきちゃって、料理をする気も湧いてきた。
そうすると料理の彩りもよくなってくるのよね。
この彩り豊かになるっていうのは、ダイエットあるある!
栄養を考えていろんな食材を使って料理するようになるからですよね。
そして、3カ月後には体調にもメンタルにもすごく変化が表れてきた。
昼夜逆転生活が少しずつ直ってきて、夫と食事を一緒にしたこともなかったのに、夫の分まで作れるようになってきたの。
簡単なものだけど、鍋いっぱいに料理を作って半分ずつ食べるっていうんです。
さらにすばらしい変化は、外出もできるようになってきたこと。
なんと、夫と一緒にデパートにお出かけできるようになったの。すごくない?
メンタルが落ち着いてきたというかね。
更年期更年期と言ってるけれど、ごはんだけであっという間に変わったりするわけです。
確かに更年期にはいろんな不調も出ます。
それも事実だけど、なんでも更年期のせいにしてない?
食事だけでも頑張って栄養をちゃんととってみたら、少し体調がよくなる人はけっこういそうな気がするんです。
更年期太りもお腹ぽっこりも、当たり前だけど諦めない!
最後に。更年期太りは人によって差があると思います。
でも、痩せている人でも「お腹ぽっこり」が気になる人は多いですよね。
私も漏れなくそうですよ、もちろん!
女性ホルモンのエストロゲンは、内臓脂肪の蓄積を防ぐことが解明されてきています。
内臓脂肪は、表面に近いところにつく皮下脂肪と違って、主に腸管のまわりにつく脂肪です。
更年期にエストロゲンが減少すれば、内臓脂肪が増えてお腹ぽっこりになるのは当然。
そのうえ、エストロゲンが減っていくと、食欲を抑制するホルモン「レプチン」の分泌も減ってしまうこともわかってきました。
なんだか食欲のコントロールができなくなってきたかもしれないと感じる人は、そのせいかも。
でも、そこで「しょうがない、更年期だもの」と諦めないで。
食事はこれまでより糖質を控えてみるとか、歩く歩数を増やしたり軽く運動をするなど、何かしてみましょう。
更年期だからと諦めしまうと、先ほどの例のように悪循環に陥ってしまいがち。
更年期のせいにばかりしないで、前向きにいきましょうよ!
取材・文・画像制作/蓮見則子 イラスト/カケハタリョウ