患者さんの爪を本来の形に戻す治療法
「私のクリニックでは、巻き爪には爪にあけた穴に超弾性ワイヤーを通し、巻いた爪を徐々に広げていく『マチワイヤー』という治療を行います。痛みもなく、治療は5分ほどで終わります」
巻き爪の治療
「巻き爪の治療は、爪を本来の形に戻すことが大切だと考えているので、私はワイヤーの復元力で爪を広げるマチワイヤー法を採用しています。最近は個人でも使えるような矯正具も市販されています。フェノールという薬剤で爪母(そうぼ)(爪を作る部分)を処置する医療機関もありますが、爪の形が一生変わってしまうので避けたほうがよいでしょう」
マチワイヤーの治療法
【1】
爪の端に裏側から器具で穴をあけ、超弾性ワイヤーを通します。痛みはありません
【2】
反対側にも穴をあけ、爪の上側にワイヤーを通します。爪の強さ、厚さによりワイヤーの強度も変わります
【3】
ワイヤーを引っ張って爪に沿うようにすると、ワイヤーの復元力で、少し爪が開きます
【4】
余分なワイヤーを爪の裏側からカットし、ワイヤーが外れないように、端を接着剤で固定して終了です
巻き爪がこうなる
「ワイヤーを通したからといって、ただちに巻き爪が治るわけではないですが、通すと圧迫が緩和されるので、すぐに楽になったと言う患者さんが多いです。症状にもよりますが、爪は数カ月かけて徐々に平たくなっていきます」
●初め
両端が巻いている爪。爪が皮膚にくい込んでいます。人によっては、かなり巻いていても痛みを感じないこともあります
●3カ月後
マチワイヤー法で治療して3カ月後。かなり平らになってきました。爪は月に2㎜程度ずつ伸びるので、焦らずに治療を
●半年後
何度かやり変えるうちに、すっかり平らになりました。治療をやめて再び巻いた場合は、またワイヤーを通す施術をします
アートで楽しく巻き爪治し
「ワイヤーにビーズを通したりネイルアート用のシールを貼ったりすることも可能。私はジェルネイルの資格を取って“楽しい治療”を心がけています」
陥入爪の治療法は?
塩之谷香先生のクリニックでは、陥入爪が悪化した人の治療として、爪周辺の炎症部分を切除する手術方法を考案。症状に悩んでいる人は、ぜひ一度相談を。
「爪がくい込んだ部分が炎症を起こし、症状が進むと、赤い“肉芽”という組織ができます。じくじくした液体がにじんできますが、細菌感染が原因ではないので、塗り薬を塗っても解決しません。爪と皮膚の間にチューブを差し込んでくい込みを解消し、爪が欠けた部分には人工爪をつけるなどして、正常な爪の形に戻すことが大切です」
塩之谷 香さん
Kaori Shionoya
62歳 整形外科
塩之谷整形外科
「爪の外来で、毎日50人ほどの爪の患者さんを診ています。巻き爪で悩んでいる人は多いですね。巻いている爪は超弾性ワイヤーを使って治療。患者さんの本来の爪の形に戻すことを目指して治療しています」
撮影/素敵女医 取材・原文/上田恵子