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老化って結局どういうこと? 老化のメカニズムを、細胞レベルでわかりやすく解説

私たちは老化して、やがて死を迎えます。では「老化する」とはどんなことなのでしょうか? どうやって老化が進んでいくのか、そのメカニズムを追ってみましょう。

老化のプロセス

老化のプロセスを1~9の段階に分けて解説します。

1.生活の乱れ

偏った食事、運動不足、不規則な生活、睡眠不足、ストレス過多などが、日常的になった状態

2.細胞の炎症

最初に起こるのが細胞の炎症です。軽くても長期間続き慢性化した状態を「慢性炎症」といいます

3.ミトコンドリアに異常事態

細胞の中にある、エネルギーを産生する器官ミトコンドリアが、活性酸素などを大量に産生

 

◆ミトコンドリアとは?
エネルギーを産生する命の源
生きていくのに必要なエネルギーを産生する、細胞の中にある小器官。筋肉を収縮させたり、脂肪の燃焼や糖の代謝にもかかわっています。また、アポトーシス(細胞死)に関与したり、活性酸素を発生させる役割も。ミトコンドリアがしっかり働くことで、各細胞が元気になります。

4.フリーラジカルの出現

細胞の酸化を促進させる物質が大量に発生して、細胞にダメージを与えます

 

◆フリーラジカルとは?
細胞を傷つけて老化を促進
活性酸素もフリーラジカルもミトコンドリアでのエネルギー産生の際に生まれるもので、増えすぎると細胞の酸化を引き起こします。これにより体内のタンパク質や脂肪などの細胞が変性し、老化が促進します。また、糖尿病や脂質異常症、動脈硬化、がんなどの生活習慣病の原因にも。

5.遺伝子の変化

テロメアが短くなって細胞分裂をやめたり、遺伝子が傷つくなどで細胞のコピーミスが起こります

 

◆テロメアとは?
老化や寿命のカギを握る
細胞は分裂しながら、新しい細胞に入れ替わっています。テロメアは染色体の末端にあり、細胞の複製時のエラーやDNAの損傷などを防いでいます。テロメアは細胞分裂をするたびに短くなり、ある程度まで短かくなると分裂できなくなります。このことから「命の回数券」と呼ばれています。

染色体の末端にあるテロメア

染色体の末端にあるテロメアがある程度まで短くなると、細胞分裂ができなくなります

 

◆遺伝子とは?
体をつくる設計図
筋肉や骨、血液や脳もすべて細胞からできています。この形も働きも異なる細胞を正しく再生するためには、正確な「設計図」が必要です。その設計図が遺伝子です。遺伝情報に沿ってタンパク質が作られ、細胞になっていきます。ここが傷ついたり、情報ミスが起こると、細胞は正しく作られず機能障害を起こします。

6.細胞の働きの低下

分裂できない古い細胞が居残る「老化細胞」が増えていきます。すると各細胞の働きが悪くなります

 

◆老化細胞とは?
分裂を停止したのに居残る細胞
通常、古くなった細胞は、新しい細胞と置き換わるときに自ら死んで壊れるアポトーシスを起こすか、免疫細胞に食べられるなどして体内から消えます。しかし、なかには分裂を停止しても居残るものがいます。これを「老化細胞」といいます。ほかの細胞にも悪影響を与え、老化を促進させ、病気の原因になります。

老化細胞

老化細胞が体内に増えると、がんをはじめさまざまな病気を発症する原因に

7.内臓・組織の働きの低下

老化細胞が増えることで、まわりの細胞にも悪影響を与え、やがて内臓や組織の働きが悪くなります

8.病気

睡眠、体温調節、血圧などの生理機能が低下。やがて生活習慣病など、さまざまな病気を発症します

9.死

最悪の場合は命を落とします。この一連の「老化」の速度は、生活習慣が大きくかかわっています

 

細胞の炎症が老化の始まり。命の回数券があった!

「人の体は約60兆個の細胞からできており、分裂を繰り返して新旧を入れ替え、若さや機能を保っています。老化の始まりは、その細胞の炎症です。これが細胞内でエネルギーを産生しているミトコンドリアに作用して、活性酸素・フリーラジカルを過剰に発生させます。

 

すると、細胞内にある遺伝情報を含むDNAが損傷し、複製の過程で遺伝情報に異常を起こしたり、染色体の末端にあるテロメアが短縮します。やがて細胞はそれ以上分裂しなくなります。この古くなった細胞が体内に残ったものが『老化細胞』です。老化細胞が体に増えすぎると、組織や内臓の働きが悪くなり、やがて病気へと発展していきます」

 

樂木(らくぎ)宏実
樂木(らくぎ)宏実さん
大阪ろうさい病院院長
公式サイトを見る

大阪大学大学院医学系研究科内科学名誉教授。日本老年医学会前理事長、日本高血圧学会前理事長

 

 

イラスト/カケハタリョウ 構成・原文/山村浩子

 

 

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