羊羹、草餅、豆大福…カロリー的には和菓子がベターだけれど?
「長らく、和菓子と洋菓子では和菓子のほうがヘルシーといわれてきました。今もそう思っている人は多いですよね?
確かに和菓子のおもな材料は米粉や小麦粉、小豆、砂糖なので、脂肪分少なめ、カロリーが低くてヘルシーな印象。一方の洋菓子は小麦粉、バター、オイル、牛乳、生クリーム、卵、砂糖などが使われ、脂肪分が多めでカロリーは高めです。
でも! 血糖値となるとどうでしょうか? 僕自身もいろいろな食べ物の血糖値を測ってきましたが、その結果がすごく面白いんです」
そう解説してくれたのは、YouTubeでのユニークな血糖値実験が話題の糖尿病内科医、山村聡先生です。
今回の企画ではOurAge世代の6名が2週間、血糖値をモニタリング(*1)。血糖値の変動を見るため、点ではなく線で血糖値をチェックしました。
さっそく、和菓子と洋菓子を食べたときの血糖値を見てみましょう。
*1:自動的に血糖値(正確には間質液中のグルコース値)を測ってくれる「FreeStyleリブレ2」を装着。
よもぎ餅とコンビニのシュークリーム、血糖値が急上昇したのは?
まずは、モニターYさんから。
よもぎ餅とシュークリームの対決です!
[A]よもぎ餅 [B]シュークリーム
左のAがよもぎ餅を食べたときのグラフ。
19:00に夕食をとった2時間後によもぎ餅(*2)を単独で食べてみました。ちょうど食事によって上がった血糖値が下がりかけているタイミングです。すると、血糖値が25mg/dLほど上昇。その後また急に下がるなど寝ている間に乱高下してしまいました。
右のBがシュークリームを食べたときのグラフです。
夕方、セブン-イレブンのとろ生カスタードシュー(*3)を単独で食べています。空腹時にいきなりスイーツを食べたので、血糖値は急上昇するかと思いきや、結果は意外にも上がらず。むしろ、夕食までの空腹時間を長引かせない、よい間食になったようです。
*2:よもぎ餅の推定糖質は20g。
*3:セブン-イレブンのとろ生カスタードシューの糖質は13.8g。
羊羹とシュークリーム、血糖値が急上昇したのは?
続いて、モニターTさん。
あえて、ランチにまったく同じコブサラダを食べ、デザートとして和菓子と洋菓子を食べて比較しました。
[C]羊羹 [D]シュークリーム
左のCがコブサラダ+いちご羊羹の日。
14:00にランチのコブサラダと小さないちご羊羹(*4)を食べると、血糖値はぐーんと上昇。基準値(グリーンの範囲)を超えて180mg/dL近くなり、血糖値スパイクを起こした様子です。
右のDがコブサラダ+シュークリーム
この日も14:00にコブサラダのランチ、そしてシュークリーム(*5)です。血糖値はやや上がりましたが、いちご羊羹に比べるとピークは低く、基準値内で収まっています。
*4:とらやの小形羊羹「いちご」の炭水化物(糖質+繊維質):33g。
*5:シュークリームの推定糖質:20g。
豆大福とショートケーキ、血糖値が急上昇したのは?
次は、モニターMさんです。
豆大福とショートケーキを食べ比べました。
[E]豆大福 [F]ショートケーキ
左のEが豆大福を食べたときのもの。
18:20に豆大福(*6)を食べると、いきなり急上昇してしまいました。お腹が空いて血糖値が下がっている時間帯だったことも影響していそうです。
右のFがショートケーキ(*7)を食べたときのグラフです。
15:00のおやつに食べています。じわじわ血糖値が上がったり下がったりを繰り返してはいますが、急激な上昇には至りませんでした。
*6:豆大福の推定糖質は30.7g。
*7:いちごのショートケーキの炭水化物(糖質+繊維質)は23.6g。
血糖値上昇という観点で見ると、洋菓子のほうがベター
3人の結果を見ると、どちらも血糖値が上がっていますが、和菓子のほうが急上昇しやすい傾向があるようです。
「糖質は栄養素の中で唯一血糖値を上昇させる栄養素ですが、お菓子に含まれる糖質量は多いですからね。どちらもある程度は上がります。バターやクリームが使われている洋菓子のほうが一般的にトータルカロリーは高いのですが、糖質で見るとどうでしょうか? 和菓子は米粉(餅やぎゅうひ)が主原料だったり、小豆を砂糖で煮たあんこがメインだったり、小麦粉を使ったお菓子もあるので、合わせ技でトータルの糖質量はかなり多くなります」
現在、糖質量を抑えた低糖質のお菓子もたくさん出ています。和菓子と洋菓子、同じ糖質量だった場合はどうなりますか?
「いいところに気づきました! もし同じ糖質量だったとしても、洋菓子のほうが血糖値が上がりにくいんですよ。なぜって、バターや生クリームなどの脂質が含まれているから。
脂質と一緒に食べることによって、糖の消化と吸収が遅くなり血糖値の上昇は緩やかになります。上がり方がゆっくりだから、血糖値を下げるインスリンの放出がゆっくりでも血糖値のピークが低くなるし、スムーズに血糖値が下がってくれます。
逆に、和菓子はあまり油分を含まないので、ダイレクトに糖質が血糖値に影響を与えます。
とは言え、油脂が血糖値の急上昇を防ぐと言うと、ポテトチップスなど油で揚げたお菓子もいいんだと思ってしまう人がいますが、いもは糖質が高いので気をつけてくださいね。また、しょっぱいせんべいや辛い柿の種ならいいでしょうという人もいますが、さにあらず。せんべいはお米ですからね、そのまんま糖質ですよ」
なるほど。血糖値を急上昇させたくないけれど、ちょっと甘いものが食べたいな〜という場合は、低糖質の洋菓子なら理想ですね。
ところで、スイーツといえばお砂糖ですが、お砂糖の種類も気にしたほうがいいですか?
「黒糖、三温糖、てんさい糖など砂糖の種類は、血糖値の上がり方とあまり関係がありません。大きい分類で言うとどれもショ糖なので、糖は糖。量が多ければ多いほど血糖値を上げます。
栄養面からすると、精製されていない糖のほうがいいかもしれませんが、玄米、白米の比較と同じで、どちらも糖質の量だけ血糖値を上げますよ」
朝食でとる人も多いフルーツはどうでしょうか?
「フルーツの糖質は、果糖(フルクトース)と呼ばれる糖類です。皆さんが装着した『リブレ』で測っているのはブドウ糖(グルコース)だけなので、実は直接果糖を測ることができません。
フルーツを食べると果糖は肝臓で代謝され、一部が腸内細菌の力でブドウ糖に転換されます。血液中に出てくるのはその後なので、血糖値の急上昇にはなりにくいと思いますね。
ただ、ドライフルーツは干すことによって糖分が凝縮されていますから注意が必要です。
以前お話した通り、40代以降は血糖値を下げるインスリンを出すすい臓の働きが少しずつ落ちてきます。血糖値を急激に上げるスイーツやおやつの食べすぎには注意してくださいね」
結論。和菓子と洋菓子では、和菓子のほうが血糖値の急上昇を招きやすい。健康診断で血糖値が高めと言われた人、血糖値スパイクが気になる人は、血糖値の上昇をなるべく緩やかにしてくれるおやつをを選びましょう。
【教えていただいた方】
九州大学医学部卒業。東京ミッドタウンクリニックで診療するかたわら、糖尿病啓発・予防のため血糖値に関するSNS発信を行っている。豊富な診療経験をもとに、一人一人のライフスタイルに合わせた血糖値改善、ダイエットプログラムの開発にかかわるなど予防と医療の架け橋として活動中。 自らの体を実験台にしてさまざまな食材の血糖値を測定するYouTubeチャンネル「やさしい内科医のY's TV」が人気。登録者数は7万人超。
※血糖値の変動には個人差があり、モニターの結果はあくまで一例です。同じ食材をとっても人によって、また食べるタイミング等によって変化します。
※食べ物の糖質量は推定量です。
取材・文/蓮見則子