握力アップの第一歩は手首の柔軟性を高めることから!
サルコペニアとは、加齢によって筋肉量の減少や筋力が低下した状態のことです。これを放っておくと、やがて認知症発症や要介護生活へ進み、健康寿命を短くするリスクが高まります。そのサルコペニアの診断基準のひとつに「握力」があります。握力が低下している場合は、体全体の筋力も低下しているという目安にされているのです。
※サルコペニアに関しては第1回参照。
「握力が低下すると、生活シーンでさまざまな不便が生じるので、できるだけ維持したいですね。そのためには、手に負担をかけずに腕全体の筋力アップを図ることが大切です。
まず最初にしてほしいのが、手首の柔軟性を高めることです。スマホやパソコンの長時間の操作や重い荷物をいつも同じ手で持つなど、手首に負担がかかることを続けていると、手首の筋肉や腱が固まって、動きが悪くなります。
そこでおすすめなのが、手首のストレッチです。手首を大きくグルグルと回すことです。このとき、右回りと左回りで、やりやすいほうがあると思います。慣れない方向に回すと違和感がありますよね。この違和感を覚えることが大切なんです。
慣れていない刺激を受けることで、脳や筋肉が活性化され自律神経が整います。血流がよくなり、手首の柔軟性が高まります。
この違和感で慣れない刺激を受ける方法には、もうひとつおすすめがあります。それは手の指を組むことです。左右の手の指を組むとき、右の親指が上になるか、左の親指が上になるかは人によって癖がありますよね。
一般的に左の親指が上なら右脳タイプ(直感的)、右の親指が上なら左脳タイプ(論理的)などといわれています。これを時々、いつもと違う組み方をしてみるのです。この違和感を体感することが、脳にとてもよい刺激になります。思考さえ変えるともいわれています。
少し話がそれましたが、手首グルグル体操のときも、苦手なほうにもしっかり回すことが重要です」(市野さおりさん)
【手首グルグル体操】
1 左手で右の手首をしっかり握ります。
2 この状態で右手首を回します。このとき、回すほうの右手首を90度近くに曲げて、握った左手の上部をグルリとなでていくように、大きく回すのがポイントです。右回りに10回、左回りに10回行います。
手を替えて、左手首を右手で握り、同様に行います。苦手なほうを少し回数を増やすといいでしょう。
タオルを握って力を抜いて、優しく握力アップ!
「握力を高めるために、手のグーパー運動がありますが、私のおすすめはタオルを握って力を抜くことです。何も持たない、もしくは硬いものをギューッと握ってから力を抜くやり方は手に負担がかかります。
丸めたタオルのような柔らかいものがベスト。握ったときに内からの反発がないので、手を痛めることなく、握る力をアップすることができます」
【タオルニギニギ体操】
1 タオルをひとつ結びにして小さなこぶし大の球状にします。丸めて筒状でもOKです。
2 タオルを握ったまま腕を軽く伸ばし、体から少し離した位置で、タオルをギュッと握ったり力を抜いたりを繰り返します。約30秒~1分、ギュッ→パッとリズミカルに繰り返すのがコツです。このとき腕全体が下がりすぎないように努力しましょう。
「手は前腕や上腕の筋肉まで連動しているので、この動きをすると、腕全体をバランスよく刺激することができます。これにより、心臓のポンプ力も高まるので、血圧を整える効果もあります。低血圧の人、高血圧の人、どちらにもおすすめです」
【教えていただいた方】
自衛隊中央病院勤務後リフレクソロジーやアロマセラピーの資格を生かし、統合医療ナースとして活躍。その後、「コンフィアンサせき鍼灸院」でボディケアを行いながら、足や手を通したセルフケアを提案。著書に『不調と美容のからだ地図』(日経BP)、『若返る頭さすり:顔が引き上がる! 目が大きくなる!』(Gakken 美人力PLUSシリーズ)など多数。
イラスト/green K 取材・文/山村浩子