腕全体をバランスよく鍛えることが握力アップの秘訣
握力アップのために手先だけを鍛えようとすると、逆効果になることがあります。手はただでさえ日頃から使いすぎています。
まずは1日1回、ストレッチなどで手指や手首の柔軟性を養ったり、温めて血流を高めるなどのケアでしっかり休ませることが大切です。
※指のストレッチは第7回参照。
※手首のストレッチは第9回参照。
「そのうえで加えたいのは、上腕と前腕のアイソメトリックス(等尺性筋収縮)です。アイソメトリックスとは関節を曲げたり伸ばしたりせず、ある姿勢を一定時間保つことで筋肉に負荷をかける静的な筋肉トレーニング方法です。
例えば、腕相撲で互いの力が拮抗して腕が止まっている状態は、筋肉の長さが変わらずに力を入れていることになります。この状態を意識的に作り出すのです。
体幹を鍛える「プランク」※がそのひとつ。
※プランクはうつ伏せの状態で前腕とひじ、つま先を地面について、背中からお尻、脚を真っすぐにキープするエクササイズ。
アイソメトリックスは関節への負担が少なく、短時間でエネルギーをあまり使わずに簡単に筋肉を鍛えることができるのが大きなメリットです。特に、握力をアップさせるには、手先の筋トレではなく、上腕と前腕をこのアイソメトリックスで鍛えるのがおすすめです。
手の筋肉は前腕→上腕へとつながっているので、腕全体を鍛えることが結果的に手力を高めることにつながります」(市野さおりさん)
背もたれを利用して簡単上腕トレーニング
「上腕を椅子の背もたれに押しつけて静止し、パッと力を抜くエクササイズです。背もたれに押し当てる抵抗を利用し、上腕の筋肉に負荷をかけます。
このとき血流が抑えられ、その後に力を抜くことで一気に血流がアップするので、筋力アップに加え、血管を強くする効果もあります。
丸めたタオルをふたつ、左右の手に持って行うことで、腕全体がバランスよく鍛えられ、握力アップにも効果的です」
【上腕アイソメトリックス】
1 背もたれのある椅子に座り、上体の姿勢を正します。腕を90度に曲げ、丸めたタオルを持った手を上に向けます。
2 丸めたタオルをギュッと握りながら、上腕を背もたれに押しつけて8秒静止します。力をパッと抜いて4秒休み、また力を入れて押しつけます。これを3~5回繰り返します。
手の動きに大きくかかわる前腕を鍛える
前腕を膝にのせたクッションに押しつけるエクササイズです。このとき、手のひらを内側に向けたり、上に向けることで効く筋肉が変わり、前腕をまんべんなく鍛えることができます。
【前腕アイソメトリックス】
1 椅子に座り、膝の上に大きめのクッションをのせ、姿勢を正します。左右の手に丸めたタオルを持ち、ひじを90度くらいに曲げます。
※クッションをのせるのが膝の上だと低すぎる場合は、テーブルの上にのせてもOK。ひじが90度になるように調整してください。
2 タオルを持った手を内側に向けて、ギュッと握りながら、前腕を下に向けて押しつけて8秒静止します。力をパッと抜いて4秒休み、また力を入れて押しつけます。これを3~5回繰り返します。
3 続いて、手を上に向けて同様に行います。手の向きを変えることで、前腕の違う筋肉を鍛えることができます。
「息は止めずに通常の呼吸を続けながら行います。丸めたタオルはなくてもOK。その場合は手を軽く握った状態で行います。ギュッと握り締める必要はありません。
上腕と前腕への力の入れ方をマスターすれば、工夫次第でいろいろな場所、例えばカフェや電車の中、オフィスでも実践できます。短い時間でもちょっとしたときに繰り返し行うことで、筋力アップをすることができます」
【教えていただいた方】
自衛隊中央病院勤務後リフレクソロジーやアロマセラピーの資格を生かし、統合医療ナースとして活躍。その後、「コンフィアンサせき鍼灸院」でボディケアを行いながら、足や手を通したセルフケアを提案。著書に『不調と美容のからだ地図』(日経BP)、『若返る頭さすり:顔が引き上がる! 目が大きくなる!』(Gakken 美人力PLUSシリーズ)など多数。
イラスト/green K 取材・文/山村浩子