【教えていただいた方】
「葉子クリニック」院長。関西医科大学卒業。大学病院・総合病院を経て、福岡県北九州市で「葉子クリニック」を開設。総合内科専門医、腎臓内科専門医。本当の健康とは「心」「体」「スピリット」が整った状態と考え、西洋医学だけでなく、東洋医学、自然療法、民間療法も取り入れてホリスティックに治療を行う。著書に『おなかのカビが病気の原因だった』(ユサブル)、『パンと牛乳は今すぐやめなさい!』(マキノ出版)、『デジタル毒』(ユサブル)など多数。
誰の腸にもカビは存在する!
腸内にいる菌、腸内細菌は広く知られていますが、お腹にカビ? と驚いた人は多いのではないでしょうか? カビというと、パンの青カビや風呂場の黒いカビなどを思い浮かべます。そんなものが私たちの体内に?
「これについては米国ではもっと知られていて、英文で専門書も出ています。下記のような不調や生活習慣がある場合は、『お腹のカビ』の増殖が原因の可能性大です」(内山葉子先生)
【お腹のカビチェックA】
□ 異常に疲れる
□ 抑うつ、気分の変動がある
□ 集中力が続かない、記憶力の低下が見られる
□ 頭痛もちである
□ 皮膚トラブル(じんましん、水虫、爪白癬、いんきんたむし、慢性皮膚炎、目のかゆみ、肛門のかゆみなど)がある
□ 消化器症状(便秘、下痢、腹痛、ゲップ、お腹の張り、すぐに満腹になる)がある
□生殖器に関する症状(月経不順、月経困難症、月経前症候群、腟炎、前立腺炎、勃起障害など)がある
□ 筋神経症状(筋肉や関節の痛み、腫れ、しびれ、麻痺、灼熱感、筋力が弱い、鼻血をよく出すなど)がある
□ 呼吸器症状(長引く咳、喘息のように呼吸が苦しくなる、慢性的な鼻の詰まりなど)がある
□ 耳の症状(中耳炎などの耳の感染症を繰り返す、耳の詰まり感、めまい、音に敏感など)がある
【お腹のカビチェックB】
□ 不調があり、さまざまな治療やケアをしたが改善しない
□ これまで何度も抗生剤を服用してきた
□ 発酵食品や砂糖を含む食品をたくさん食べてきた
□ スイーツやパン、アルコール飲料が大好きで欠かせない
□ スイーツやパン、アルコール飲料をとると体調が悪くなる
□ 低血糖症状を起こすことがある
□ ピルやステロイド剤を服用している、または服用したことがある
□ 雨や曇りの日は調子が悪くなる
□ 湿度の高い場所やカビの生えている場所に行くと調子が悪くなる
□ 化学物質過敏症(タバコ、香水、化学物質などで気分が悪くなるなど)がある
□ 歯科治療などの際、麻酔が効きにくい
AとB、両方にひとつでも当てはまるものがあれば、「お腹のカビ」による可能性大! Aの項目が多いほどカビの量が多いと考えられます。
出典/『おなかのカビが病気の原因だった』(ユサブル)内山葉子
いかがでしたか? 思い当たる人は少なくないのではないでしょうか。そもそもカビと菌はどう違うのでしょうか?
「肉眼で見えないくらいの小さな生物を微生物といい、真菌、細菌、ウイルスなどが含まれます。カビはこの中の真菌の仲間です。その違いのひとつは大きさ。人間の細胞は約10μm(マイクロメートル)※、真菌は約5μm、細菌は約1μm、ウイルスは約0.1μmです。
※1マイクロメートル=0.001ミリメートル.
また、真菌は人間の細胞と同じように『核』を持っており、人間の細胞に近い特徴を持っています。
真菌の仲間にはカビのほかに、きのこや酵母が含まれます。きのこは大きくて微生物とはいえませんがカビの仲間で、カビとともに菌糸体を持つ糸状菌です。食品に生えたカビが目に見えるのは、多数の菌糸体や胞子が集まっているからです。いうなれば、きのこはカビが巨大化したものともいえます。
一方、酵母は菌糸体を作らず、丸い形をしています。パン酵母やビール酵母が有名ですが、私たちの体に害となるカンジダ菌も酵母の仲間です。
カビも腸内細菌とともに組成バランスが大事
腸内には腸内細菌がいて、腸壁の粘膜表面で増殖しています。人体に有益なものを善玉菌、有害なものを悪玉菌、どちらか優勢なほうに加担する日和見菌などで構成されています。
善玉、悪玉といった言い方をしますが、悪玉菌の中にも有益に働くものもいて人体に必要です。大切なのはこれらの組成バランスなのです。
そして、この中にどんな人にも1%程度はカビがいます。健康であれば、こうしたカビが悪さをすることはありませんが、異常繁殖するとさまざまな影響が出てきます。腸の環境が悪化することで免疫力の低下をはじめ、精神面も含めた全身の不調を引き起こすのです。それがチェックリストに登場した症状です。
カビが腸内で異常増殖する原因のひとつが抗生剤の多用です。服用を続けると、腸内細菌が死滅して、抗生剤が効かないカビが増えていきます。
抗生剤の服用をやめると腸内細菌は元に戻っていきますが、カビの増殖により腸内の組成バランスがくずれます。日本人には抗生剤神話のようなものがあって、抗生剤を飲みすぎる傾向があるので、注意が必要です。
また、カビの大好物である甘いものや小麦製品、そしてカビの一種である発酵食品のとりすぎもカビを増殖させます。一見、健康によいとされるものが含まれるのも落とし穴です。
そして、夏には高温多湿になる日本の気候はカビが大好きな環境です。風呂場やエアコンのカビなども、吸い込むと肺炎だけでなく、腸内のカビも増えます。
このように、日本人のお腹はカビが増殖する要因がそろっているともいえます。病院に行ってもなかなか治らなかった不調や病気も、これらの要因を改善していくことで治るケースをたくさん見てきました。
不調や病気の原因が『カビ』という意識は日本にはまだ広がっていませんが、慢性的に悩んでいる不調があるのなら、一度疑ってみるといいでしょう」
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子