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がんの初動で「すべきこと」と「してはいけないこと」

今や日本人の2人に1人ががんになる時代。誰もがいつがんになるかわからないことから、がんを自然災害になぞらえて「がん防災」を呼びかける、がん治療医の押川勝太郎先生。今回は治療の成否はもちろん、生活までも左右しかねない「がんの初動」について解説。がんとわかった人がまず向かいがちなネット検索には、注意が必要です。

つらい気持ちはため込まず「相談すること」で一歩を踏み出せる

病院でがんと告知を受けるのは、相当に衝撃的なことです。

実際に告知を受け「頭が真っ白になった」「どう家に帰ったか思い出せない」という人も多いといいます。

 

「ショックを受けるのは当然のことです。

つらい気持ち、怒り、絶望感…そうしたさまざまな気持ちは、一人で抱え込まずにまず誰かに話してほしいと思います」

 

がん相談支援センターに相談するのもいいでしょう

「こうした心のケアも広い意味での『緩和ケア』に含まれます。(※第3回参照)

 

積極的に緩和ケアを受ける、これがかつてのがん治療と今のがん治療の大きな違いです。

相談支援センターは、地域のがん拠点病院には必ずあります。

別の病院にかかっていても相談できますし、直接行かなくても電話相談も可能です。

 

『心の内を話したところで』と思っている人でも、行けば何かしら必ず有益な情報が得られるはず。

あるいは話を聞いてもらうだけでも楽になり、絶望感から立ち上がって前向きに治療に取り組もうとする勇気にもなるでしょう」(押川勝太郎先生)

 

「現在地を知る」ことで治療を自分主体で考えられる

もうひとつ大事なことは、自分の現状を知ること。

 

「がん=死、ではないというのは第1回でお伝えしましたが、がんの治療の成否やがんになって以降の生活は、患者さん自身の考え方や取り組み方によって大きく変わります。

 

その意味で、まず自分のがんがどんながんで、ステージが何なのかを初めに確認することは大切です。

というのは、治療の主体は医師ではなくあくまで患者さん自身だから。

 

『先生にお任せします』ではなく、自分自身で調べたり学んだりする人のほうが満足いく選択ができ、結果的にいい結果に結びつくことが多いのです。

 

それには自分の現在地を知ることが欠かせません。

意外なようですが、紹介で私のところにやってくる患者さんの中にも、自分のがん種とステージを正確にわかっていない人は、けっこういるんです。

 

医師は治療の専門家ですが、患者さんは『患者という専門家』。

それぞれの専門家が協力し合ってがんに立ち向かうというのが、がん治療の目指すところです

 

記事が続きます

がんのステージと余命は比例しない

ちなみにがんの「ステージ」については、意味を取り違えている人も多いようです。

 

「がんは進行度に応じて0~Ⅳの5段階に分類され、0に近いほどがんが小さく1カ所にとどまっている状態。Ⅳに近いほどがんの広がりや散らばりが大きい、という状態です」

 

ただし「ステージⅣ=末期がん」というのは大きな誤解

 

「ステージⅣは体中にがんが散った状態ではありますが、それと余命は直結しません。

『治るか治らないか』で考えると、ステージⅣは確かに根治は難しい。

ですが第2回でお伝えしたように、抗がん剤でそれ以上大きくならないようにコントロールできれば、一本勝ちではなくても判定勝ち。

 

こうなれば糖尿病や高血圧などと同じで、『コントロールしながら付き合っていく病気』となり、がんとわかったその後の生活をどうするか考えることが大事になります。

 

実はがんとわかって退職したり廃業する人は2割程度ながら、そのうちの半数が治療開始前だったという調査結果もあります。

(※国立がん研究センター「令和5年度患者体験調査報告書(速報版)」)

 

がん治療には、程度の差はあれ経済的な負担が発生します。慌てて退職して、後悔することのないようにしたいものですね」

 

 

がんについて一人でネット検索してはいけない理由

もうひとつ押川先生が「気をつけてほしい」と言うのはネット検索。

がんについて情報検索をする女性のイメージイラスト

「少しでも有益な情報を集めたいというのは、当然の心理だと思います。

でも気をつけなければならないのは『ネットには詐欺師がたくさんいる』ということ。

 

検索窓に『がん』『治る』と入力すると、がんが小さくなるサプリ、がんが消えるお茶…いろいろな情報が出てきます。

詐欺的なものも多く含まれていますが、混乱したり不安が大きいなかで一人で検索を続けていると、怪しいものを見抜くことができなくなります。

 

『がん』×『自分の希望』という検索ワードは、詐欺の餌食になりやすいのです

 

記事が続きます

そうした怪しい情報を見抜くひとつの目安として、押川先生は意外にも「免疫力」というワードを挙げます。

 

「免疫力には医学的な定義はありません。

血中の白血球や好中球の値が下がると感染症にかかりやすくなり、これを免疫が低下した状態とみることはできますが、ではどうすれば免疫力を上げられるかというのは、定義があいまいなだけにとても難しい。

 

医療の現場では、免疫力というのはまず使わない言葉なのです。

だから『免疫力が上がる〇〇』なんて言っている時点で『科学的根拠がないな』『怪しいな』ということになります」

 

がん闘病の配信動画も、のめり込みすぎには注意が必要です

 

「同じがん種の方の闘病が気になるのは当然です。

でも、例えば同じがん種、同じステージであったとしても、まったく同じ経過をたどるがんというのはひとつとしてありません。

がんは十人十色、他人の経験談は自分に当てはめても意味がないのです。

 

もちろん参考程度に見る分にはいいでしょうが、一喜一憂しているとその配信者がよくない経過をたどったときに、自分もそうなるに違いない…と落ち込んでしまいます。

絶望して治療に前向きに取り組めなくなったり、うつになる恐れも。

 

また、配信者が『この抗がん剤を使ったら副作用が強く出た』と言ったら、自分も強く出てしまったり、といった心理的な刷り込みも起こり得ます。

 

もちろん、そうした危険性を知ったうえで注意喚起をしながら配信している方もいますが、そうでない方がいるのもまた事実。

私自身は、患者さんにはあまり闘病動画は見ないようにおすすめしています」

 

 

【教えていただいた方】

押川勝太郎
押川勝太郎さん
腫瘍内科医師
公式サイトを見る
Instagram

宮崎善仁会病院・腫瘍内科非常勤医師。抗がん剤治療と緩和医療が専門。NPO法人宮崎がん共同勉強会理事長。がん化学療法の専門家として、6年前からYouTubeチャンネル「がん防災チャンネル」を主宰し、がんに関する正しい情報を発信し続けている。著書に『新訂版 孤独を克服するがん治療 患者と家族のための心の処方箋』(サンライズパブリッシング)などがある。

 

 

イラスト/macco 取材・文/遊佐信子

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