食間8時間 vs. 4時間、血糖値に差は出る?
「朝食や昼食を抜いたりせず、食事はできるだけ3食食べること」とよく言われます。
空腹の時間と血糖値はどうかかわっているのでしょうか?
食間の長さと血糖値の変動について、40代と50代の血糖値モニター4名が検証してくれました。
ミッションは、朝食と昼食の間隔を長くした場合と短くした場合の血糖値の変動を調べること。朝食も昼食も同じメニューにして、食事の間隔だけ変えてもらいます。
まずは、モニターTさんの場合です。
朝食のメニューはもち麦と玄米入りのご飯、ハムエッグ、ベビーリーフ、味噌汁、ヨーグルト&ブルーベリー。
昼食はシーフードペンネです。2日間とも同じ食材で作りました。
朝食と昼食の間を8時間空けた日の血糖値を見てみましょう。
グラフのグリーン部分(70〜140mg/dL)が血糖値の正常範囲といわれる目安です。
記事が続きます
【左★朝食7:30/昼食15:30】食事の間隔は8時間
【右★朝食8:00/昼食12:00】食間の間隔は4時間
食間が8時間あった日(食間が長い日)は、15:30のランチで血糖値スパイク(*1)が起きています。
*1 血糖値が急上昇し、その後急降下する状態。グラフにスパイクのようなトンガリができることからこう呼ばれます。特に血糖値ピークが180mg/dLを超え、かつ30分で60以上の急上昇の場合。
そして、食間が4時間だった日(食間が短い日)は、血糖値スパイクが抑えられています。朝食、昼食ともに血糖値スパイクが起きた日とまったく同じものを食べているはずなのに!
Tさんはどちらも在宅勤務の日で、運動などもしないでほぼ一日中、家で仕事をしていました。食間の長さ以外の条件はほぼ一緒です。
同じ食事でもこんなに違う! 血糖値のリアルな変動
この大きな違いについて、糖尿病の専門家であるドクター、やさしい内科医こと山村聡先生に解説してもらいました。
「まったく同じメニューでこれだけ差が出たのは、わかりやすいですね。そもそもペンネに限らずパスタは糖質量が多いので、昼に食べると血糖値は急に上がりやすいんです。さらに8時間も食間を空けたので、血糖値スパイクが起きてしまったんですね。
もう1日の食間が4時間の日はスパイクが起こっていません。ただ、この方は朝食後の血糖値がちょっとずつ上がったり下がったりしているところを見ると、朝食の消化に時間がかかるタイプかもしれません。
玄米やもち麦の消化に時間がかかっているのか、もしくはこの方にとって朝ごはんが多すぎるのか…。
こういうタイプはランチまでの時間が短すぎると、朝食で上がった血糖値が下がり切らないうちに次の食事を食べることになるので、食間は5~6時間ほど空けて、なるべく消化がスムーズなものを少量、と心がけるといいかもしれないですね」
記事が続きます
5時間 vs. 2時間! カツ丼を食べたらどうなる?
次に、モニターFさんの場合を見てみましょう。
朝食のメニューは塩パン、ゆで卵、ヨーグルト、コーヒーです。
昼食はカツ丼。2日間とも同じお店で食べています。
血糖値の変動の違いを見てみましょう。
【左★朝食8:40/昼食13:40】食事の間隔は5時間
【右★朝食9:15/昼11:20】食事の間隔は2時間
食間が長い日は朝食から5時間後のランチですが、血糖値が思い切り上がり、スパイクが起きてしまいました。
食間が短い日は、朝食の2時間後にランチ。血糖値の上がり方はグッと抑えられています。
この血糖値の変動について、山村先生、どう比較分析しますか?
「食間が5時間というのはまあまあ普通で、間隔は長くはないかもしれません。
でも、こんなに血糖値スパイクが起きているのはカツ丼だからでしょう(笑)。
カツ丼の白米は、丼1杯でかなりの量になります。おまけにカツの衣も炭水化物なので糖質量は高いんです。
この方にとっては糖質量が多すぎたと考えるのがいいでしょう。
ここまで血糖値スパイクが起きていれば、ランチのあとはすごく眠かったはずですよ。
糖質量が多いと、その分血糖値を上昇させます。
カツ丼のような糖質量の多いものを食べるときは、最初に野菜サラダなど糖質以外のものをゆっくり時間をかけて食べ、できればご飯を残すくらいにしたいものです。
カツ丼に限らず、天丼や親子丼などの丼物やパスタなどの単品メニューは、どうしても炭水化物を最初から食べてしまうので注意が必要です。
ちなみに、間が短い日も、ピークは抑えられているとはいえ、血糖値の山が二つに分かれています。
これもトータルの糖質量が多いせいですね」
食間が長いときの対策は? 間食のススメ
山村先生、食間が長くなりそうなときはどうしたらいいのでしょうか?
「間食がおすすめです。昔からいう“3時のおやつ”って、そのためにあるんだと思います。
空腹が長く続くと血糖値が下がりすぎ、その反動で次に食べるもので血糖値がぐーんと上がってしまう傾向にあるので、空腹を感じたらおやつを食べましょう。
もちろんおやつといっても、甘いものなど糖質が多いものは選ばないでくださいね。
血糖値の観点からすると、おやつに向くのは高タンパク質&低糖質のもの。サラダチキンなんていいですね。
または脂質はあっても糖質が少ないナッツなどもよいと思います。
和菓子と洋菓子を食べたあとの血糖値の比較も以前やりましたね。そちらも参考にしつつ、おやつを工夫してみてください」
【教えていただいた方】

九州大学医学部卒業。2024年12月に「やさしい内科クリニック」を開院。糖尿病啓発・予防のため血糖値に関するSNS発信を行っている。豊富な診療経験をもとに、一人一人のライフスタイルに合わせた血糖値改善、ダイエットプログラムの開発にかかわるなど、病気の予防と医療の架け橋として活動中。
自らの体を実験台にしてさまざまな食材の血糖値を測定するYouTubeチャンネル「やさしい内科医のY's TV」が人気。登録者数は8万人超。著書に『糖尿病専門ドクターが検証! 血糖値を下げる食事法について、実際に試してみた』(KADOKAWA)。
※血糖値の変動には個人差があり、モニターの結果はあくまで一例です。同じ食材をとっても人によって、また食べるタイミングなどによって変化します。
※モニターはFreeStyleリブレ2を2週間装着して間質液中のグルコース値を測定しました。間質液中のグルコース値は血糖値と相関することが知られています。この記事中では、間質液中のグルコース値を「血糖値」としています。
取材・文/蓮見則子