糖質たっぷり!? パンと血糖値の知られざる関係
パンは小麦粉を主原料とするため、どうしても糖質(炭水化物)が多くなります。
食べた糖質は体内でブドウ糖に変わり、血液中に取り込まれることで、血糖値はぐんと上昇。これを下げようとして膵臓から分泌されるのがインスリンというホルモンです。
インスリンには血糖値を下げる働きがある一方、余った糖を中性脂肪として蓄える作用もあるため、糖質のとりすぎは太る原因に。
だからこそ糖質のコントロールや「低糖質パン」に注目が集まっているのです。
最近はスーパーにも、見た目も味も普通のパンと変わらない低糖質タイプが続々登場。
ならば、血糖値の面でも安心なのか? 今回も「FreeStyleリブレ2」で血糖値をモニタリングしながら検証してみました。
朝のパンを変えると血糖値も変わる? 実験開始!
まずは、モニターFさん。
朝食に、普通のクロワッサンを食べた日と、「低糖質」表示のクロワッサンを食べた日で、血糖値の変化を比較してもらいました。
パン以外のメニューはヨーグルトとコーヒーで統一。
1日目はパン店で購入した普通のクロワッサン(糖質 推定約17g)。
2日目は市販の低糖質クロワッサン(糖質7.6g)です。
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血糖値の上昇をグラフで比べてみると…
左:9:30に普通のクロワッサンを食べ、直後に血糖値が140㎎/dLに急上昇。
右:8:30に低糖質クロワッサンを食べていますが、20㎎/dL程度しか上がらず、グラフにトンガリが現れませんでした。
「低糖質クロワッサンの糖質量は1桁台。正真正銘の低糖質パンですね。
Fさんが購入したパン店で販売されているクロワッサンの糖質は表示されていませんが、おそらく2倍以上はあると思われます」
と語るのは、やさしい内科医こと山村聡先生。
「クロワッサンはバターをたっぷり使います。カロリーは高くなりますが、脂質と一緒に糖質をとると消化と吸収のスピードが落ちるため、血糖値の上がり方は緩やかになるんです。
これが、もし白い食パンなど油脂の少ないパンだったら、普通のパンの日は、もっと急激にスパイクしていたかもしれませんね」
市販のパンなら、「表示」を見て糖質量をチェックせよ!
次のモニターMさんも、朝食で普通のパンと低糖質のパンを比較。
はちみつがけヨーグルトとりんご、コーヒーを添えて、パン以外は共通です。
1日目は市販のチョコパン小2個(糖質37.8g)。
2日目は低糖質のチョコパン1個(糖質10.8g)。
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血糖値の上昇程度はどうでしょう?
左:6:45に普通のチョコパンを食べ、直後に血糖値が150mg/dL近くまで急上昇。
右:7:00に低糖質のチョコパンを食べ、ほんの20mg/dLしか上昇しませんでした。
小さいパンでも、2個食べると糖質はかなり高くなりがち。血糖値のグラフにもその違いはハッキリ表れています。
「市販品は栄養成分表示があるので、糖質量を目安にしやすいのが利点ですね。2個食べることで糖質をどれくらいとることになるのか、表示を見れば一目瞭然です。
購入時に『何個でどのくらいの糖質か?』を意識するだけでも、血糖値への影響はだいぶ違ってきます」
ヘルシーに思えるベーグルの糖質量は…? 血糖値とパンの本当の関係
一般的にパンは小麦粉を使っている分、消化吸収が早く血糖値が上がりやすい食べ物です。
「全粒粉パン、ライ麦パンなどはGI値が低い=血糖値が上がらないというイメージですが、それは少し古い考え方。
糖質量が多ければしっかり血糖値は上がります。血糖値は糖質量に比例するんです!
ですが、糖質量が高くても、脂質が多いパンは吸収が緩やかになるケースも。ポイントは“糖質と一緒に何をとるか”なんですよ」
では、身近なパンにはどのくらい糖質が含まれているのでしょう? 主なパンの糖質量をまとめておきます。
血糖値コントロールを考える人は、以下を参考にパンを選びましょう。
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・食パン1枚(8枚切り/約45g)
糖質は約19g、6枚切りなら約25g、4枚切りだとなんと約38g。
・ロールパン1個(約30g)
小さめでも糖質は約14gあります。
・クロワッサン1個(約45g)
糖質約17gで、油脂が多い分、血糖値の上昇はやや緩やかになると思われます。
・フランスパン1切れ(約25g)
糖質約14g、カンパーニュなら1切れで約30g。
・ベーグルは1個(約100g)
ずっしりしているので量があり、糖質は46〜50gにも!
・デニッシュ1個(約80g)
糖質は約31g。油脂も多いけれど糖質も多い。
・イングリッシュマフィン(1個/約60g)
糖質は約20g。フォカッチャ(1個/約60g)だと糖質約25g。
※糖質量は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」および、大手製パンメーカーの栄養表示をもとに算出しました。
【教えていただいた方】

九州大学医学部卒業。2024年12月に「やさしい内科クリニック」を開院。糖尿病啓発・予防のため血糖値に関するSNS発信を行っている。豊富な診療経験をもとに、一人一人のライフスタイルに合わせた血糖値改善、ダイエットプログラムの開発にかかわるなど、病気の予防と医療の架け橋として活動中。 自らの体を実験台にしてさまざまな食材の血糖値を測定するYouTubeチャンネル「やさしい内科医のY's TV」が人気。登録者数は8万人超。著書に『糖尿病専門ドクターが検証! 血糖値を下げる食事法について、実際に試してみた』(KADOKAWA)。
※血糖値の変動には個人差があり、モニターの結果はあくまで一例です。同じ食材をとっても人によって、また食べるタイミングなどによって変化します。
※モニターはFreeStyleリブレ2を2週間装着して間質液中のグルコース値を測定しました。間質液中のグルコース値は血糖値と相関することが知られています。この記事中では、間質液中のグルコース値を「血糖値」としています。
取材・文/蓮見則子