明らかに糖化を進めてしまう生活習慣とは?
体の「酸化」は生活習慣次第で改善することができるけれど、一度「糖化」が起こると元には戻らない…と聞いたことはありませんか? 実はそこには誤解があります。
「結論から言うと、約3カ月で改善できる糖化もあります!
糖化は体内で過剰になった糖や脂質由来のアルデヒドと、体のタンパク質が結びついて起こります。これが終末糖化産物と呼ばれるAGEs(エージス)=Advanced Glycation Endproductsとなり、体のタンパク質がこのAGEsに置き換わることによって、体のさまざまな機能が低下します。これが病的老化であり、体の不調や病気を引き起こします」(米井嘉一先生)
抗加齢医学や予防医学の現場では、「AGEsリーダー」という機械を用いて、皮膚や皮下組織に蓄積されたAGEsを検出して数値化することができます。
「私のケースをお話しすると、体のコンディションにより、1.6※(28歳相当)と良好なときもあれば、2.3(68歳相当)と悪いときもあります。しかし、たとえ悪い数値が出ても、その後に生活習慣を改善すると、よい数値に戻ります。皮膚のAGEsは2カ月でアカとして落とすことができるのです。※単位はなし。

その生活習慣とは『食事、運動、睡眠』です。
食事はタンパク質2割、脂質2割、糖質6割の栄養バランスを心がけ、15分の運動習慣をつけ(運動の内容はなんでもOK)、睡眠は7時間半を目安にします。
私の数値が悪いときは、たいがい忙しく、睡眠不足で過労ぎみ。食事もいいかげんにすませているときです。しかしながら、時間や気持ちに余裕ができ、睡眠をしっかりとって、散歩をしたり、食事の内容を気にして、楽しみながらよく嚙んでゆっくり食べるといった生活に戻すと、数値もよくなります」
喫煙、飲酒、寝不足が3大リスク因子
さらにAGEsを増加させるリスク因子があります。それが喫煙と過度の飲酒です。
「タバコに含まれるニコチンは依存性を高め、タールはさまざまな有害物質を発生させ、一酸化炭素は酸化ストレスの負荷を強めます。煙には有害なホルムアルデヒドを含んでおり、体内のタンパク質と反応して糖化を進めます。
こうして酸化や糖化を進め、新陳代謝に関与する成長ホルモンや長寿ホルモンと呼ばれているDHEAの生成や機能の低下を引き起こし、それに伴い女性ホルモンの分泌も低下します」
一方で、飲酒については「百薬の長」であるとか、「飲酒では血糖値は上がらない」といった説がはやったことがあります。実のところ、どうなのでしょうか?
「残念ながら、過度な飲酒でも糖化は進みます!
アルコールは肝臓で代謝され、その過程でアセトアルデヒドが生成されます。これはALDH(アルデヒド脱水素酵素)によって分解されますが、そこで処理しきれないアルデヒドは糖や脂肪などと反応して、酸化や糖化を起こし、結果、AGEsを増やすことになります。
飲酒で顔が赤くなる人はアセトアルデヒドの分解力が低いので、より注意が必要です。
また、『飲酒で血糖値が上がらない』はウソです。確かに飲んだときには上がりません。アルコールの場合、数時間かけて肝臓で代謝され、糖質として蓄積されたり、最終的にエネルギー源として活用されます。そのため、飲酒により血糖値が上がるのは翌日以降になります。
前出の睡眠不足も大きな危険因子のひとつです。特に睡眠が6時間未満の人は、20代の若い世代であってもAGEsの数値を悪化させることがわかっています。さらに、この喫煙、飲酒、睡眠不足の3大リスクが重なると、AGEsの生成が爆増することがわかっています」
【教えていただいた方】

1958年、東京都生まれ。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター/糖化ストレス研究センター教授。日本抗加齢医学会理事、糖化ストレス研究会理事長。公益財団法人医食同源生薬研究財団代表理事。抗加齢医学研究の第一人者として、研究・臨床に従事。近年の研究テーマは「老化の危険因子と糖化ストレス」。著書に『糖と脂で体は壊れる 疲労、病気、老化の原因「糖化」の正体』(池田書店)など、多数。
『糖と脂で体は壊れる 疲労、病気、老化の原因 「糖化」の正体』著者・米井嘉一(池田書店)
イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子


