血糖スパイクを起こさない食べ方が体の糖化を防ぐ
これまでに、糖化とはどのようなものなのか?※1 体にどのような悪影響を与えるか?※2 についてお話ししてきました。それをくい止めるためには、毎日摂取する食事が大切です。では、具体的にどのようなものをとったらいいのでしょうか?
「糖化とは、食事から摂取した過剰な糖と脂由来のアルデヒドが、体内のタンパク質と結びつく現象です。ということは、特に注意すべき食材が2点あります。それが糖質と脂質です。
食事をしたあとは血糖値が上がります。特に空腹状態から大量の食事(特に糖質)をとると、食後の血糖値が急激に上がり、その後下がります。この急上昇・急降下することを「血糖スパイク」といいます。これが起こると、アルデヒドが連鎖的に増えて「アルデヒドスパーク」という現象が起こり、これがAGEs(最終的な糖化産物)を増やす大きな原因になります。
この『血糖スパイクを起こさない食べ方』が糖化を促進しない食事方法のひとつといえます」(米井嘉一先生)
【血糖スパイクを起こさない食べ方】
POINT1 朝食を抜かない
「朝食を抜くと、前日の夕食から考えると15時間以上、食事をとらない断食の状態になります。するとお昼を食べたときに、血糖値が急激に上がります。さらに、朝食にどのようなものを食べるかでも、昼食での血糖値の上がり方が変わってくることがわかりました。
こんな実験をしました。朝食に『白米だけ』、『コンビニ弁当』、『牛丼』を食べ、そのあとの昼食に『白米だけ』食べて血糖値を測定しました。その結果、いちばん血糖値が上がらなかったのが『牛丼』でした。さらに、その牛丼のどの食材が影響を与えたかの実験をしました。『肉だけ』『玉ねぎだけ』『汁だけ』のうち、最も影響が大きかったのが『肉だけ』でした。
このことからも、朝食にタンパク質をとると、昼食後の血糖値が上がりにくいことがわかりました。卵料理や納豆など、タンパク質を朝食に加えるのがおすすめです」
POINT2 食事の間隔は5時間あけて、1日3食が理想
「血糖スパイクを起こさないためには、小分けに何回も食べるという方法があります。しかしこれだと成長ホルモンの分泌に悪影響があります。前の食事が消化されてお腹が空いてから次の食事をとると、グレリンというホルモンが分泌され、それが成長ホルモンの分泌につながります。
このことを前提に、食べたものを消化吸収する時間や、夕食が遅くなると血糖値が上がりやすくなるなどを考慮した結果、食事の間隔は5時間あけるといいでしょう。朝食が8時なら、昼食は13時頃、夕食は18時頃がベストといえます」
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POINT3 一気飲み、早食いはNG!

「急激に大量の食品や飲み物をとることも、血糖スパイクが起こる原因です。食事はゆっくり食べるように心がけ、甘いドリンクやアルコールの一気飲みも避けてください」
POINT4 ベジファーストも有効
「野菜を先に食べる『ベジファースト』もおすすめです。食物繊維が豊富な野菜を先に食べると、血糖スパイクを防ぐ効果があります。オイル&ビネガーのようなドレッシングをかけると、さらに血糖値の上昇を遅らせる効果が高まります」
良質な脂質で脂質由来のアルデヒドスパークを防ぐ
「もうひとつ注意したいのが、脂質のとりすぎです。普段の食事でどうしても多くなりがちなのが炭水化物(糖質)と脂質です。これらの量を減らす工夫をするのも、アルデヒドスパークを防ぎ、糖化しない食べ方といえます」
【アルデヒドスパークを起こさない食べ方】
POINT5 タンパク質を意識する

「血糖スパイクやアルデヒドスパークを起こさないためには、三大栄養素のPFCバランスを『タンパク質2:脂質2:炭水化物6』にするのが理想です。忙しいと、コンビニ食やファストフードなどの外食に頼りがちですが、それだと炭水化物(糖質)や脂質が多くなってしまい、タンパク質が少ない傾向に。タンパク質の摂取を意識してみてください」
POINT6 玄米食で動物性の高脂肪食を断ち切る
「主食を選ぶなら玄米がおすすめです。玄米には食物繊維、ビタミン、ミネラルのほか、腸管免疫を刺激して、免疫向上、アレルギーの抑制に役立つLPS(リポポリサッカライド)という物質も含まれています。
さらに、高脂肪食ばかり食べていると、動物性脂肪依存症になるリスクがありますが、玄米にはこれを防ぐ『γ-オリザノール』という物質が含まれているので、脂肪のとりすぎを防ぐのに役立ちます。玄米はよく嚙まないと消化不良を起こす人もいるので、最初は白米に1~2割ほど混ぜて、少しずつ増やしていき、よく嚙んで食べる習慣をつけてください」
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POINT7 オメガ3系の良質油を増やす
「油すべてが体に悪いわけではありません。体内で生成できない油を必須脂肪酸といいますが、その中でも不足しがちなオメガ3系の油を意識してとりましょう。オメガ3系の油には、青魚(サバ、アジ、イワシなど)に含まれるEPA・DHA、えごま油や亜麻仁油に含まれるα-リノレン酸などがあります。抗酸化作用や抗アレルギー作用などがあり、糖化を防ぐ効果もあります。1日の摂取目安は4.3~4.7g(小さじ1杯程度)です」
【教えていただいた方】

1958年、東京都生まれ。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンター/糖化ストレス研究センター教授。日本抗加齢医学会理事、糖化ストレス研究会理事長。公益財団法人医食同源生薬研究財団代表理事。抗加齢医学研究の第一人者として、研究・臨床に従事。近年の研究テーマは「老化の危険因子と糖化ストレス」。著書に『糖と脂で体は壊れる 疲労、病気、老化の原因「糖化」の正体』(池田書店)など、多数。
『糖と脂で体は壊れる 疲労、病気、老化の原因 「糖化」の正体』著者・米井嘉一(池田書店)
イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子


