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がん患者の私が言われてうれしい言葉は…/50代。乳がんサバイバーになりました。

hijiri

hijiri

都内在住の50代会社員。2019年5月に乳がんと診断される。仕事を続けながら同年10月までに3回にわたる手術を経て、2020年1月に放射線治療が終了。現在は、10年間にわたるホルモン療法薬の服薬を継続、年に一度の検診で経過観察中。放射線治療中も継続したランニングの趣味が高じて、ランニングアドバイザー、スポーツ医学検定2級、ナヴィゲーションスキル ゴールドレベル等の資格を持つ。「琉球茶道ぶくぶく茶」東京分室主催。元おでかけ女史組メンバー。

 

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以前、乳がんになったら生活はどう変わるのか、をお伝えしました。

 

あの記事を書いた後、周囲に乳がんが判明した人がいるのだけど、どう声をかければいいのか、どう接していいのかわからない、という相談を時々受けるようになりました。

 

そこで、改めて乳がんサバイバーとしての思いを書いてみることにします。

もちろん、あくまで私の感覚なので、皆さんがそうだというつもりもありません。その前提で読んで頂けたらうれしいです。

普通ってなんだ?

 

まず、普通にしてほしいという気持ちは強いです。

 

ここでいう”普通”とは、サバイバーであってもなくても態度を変えてほしくない、という意味もありますが、変に持ち上げたり鼓舞してほしくないという意味の方が強いかもしれません。

 

どういうことかというと・・・。

 

メンター編

 

「SNS見てて感動しました。がんに負けないhijiriさん尊敬します!これからも応援しますね!!」

 

SNSの時代です。身近な友人だけでなく、こんな感じのメッセージを割とたくさんいただきました。

 

褒めて頂けるのはうれしいです。心配してくださるのも100%嬉しいです。この手の言葉をくださった方の顔をずらりと思い浮かべても真剣にそう感じて言ってくださってるの、すごーくわかるんです。

 

でも、そこまですごいことをしているわけではないので、なんだか困ってしまう。むしろ距離を感じちゃうというか。

 

ある意味、やらないと死に直結するので頑張っている。本人的には命かかってますから割と必死です(笑)

 

すごーい、とか言われ過ぎちゃうと、ずっと1人で頑張らないといけないみたいに感じることないでしょうか。そんな感じです。

 

ウォリアー編

私の趣味のひとつがランニングであることは、おでかけ女史組ブログの方でご存知の方も多いかもしれません。この記事を書いている今現在は中止になってしまいましたが、数年来落選続きだった大きなマラソン大会に初当選していて、なんとか出たいと思っていました。

 

前の記事で、主治医と色々相談したと書きましたが、実はこの大会で走ることができるかどうか、も含まれていました。当初の予定では治療はとっくに終わっているはずだったので安心していたのですが(手術一回想定の頃です(笑))、結果的に三回の手術で期間は長引いています。放射線治療完了まで計算に入れると、該当の大会までの猶予は約2カ月。

 

走るという行為は、ちょっとお休みするとすぐにレベルが落ちます。心肺機能だけでなく、筋力も同時に落ちるからです。実際に一回目の手術の後、病人のセオリー通りに引きこもっていたら、2カ月後には5kmも走れなくなっていた苦い体験もありました。

 

結果として、術後に患部の化膿がなければ、放射線治療中にも徐々に練習してもよい、PB(プライベートベスト=自己記録)は無理だろうけど完走はなんとかできるだろう、とお墨付きをもらうことができました。それでも走る距離は控えて決して無理をせず、さらには通院の後などにわざわざ病院の近くで走ることにしました。もしも走っている途中で気分が悪くなったりしたら、すぐに病院に駆け込めばいいと考えたからです。

 

結局、毎回の通院後、顔見知りになった窓口の方や放射線治療の技師さん方に、「今から走るの?頑張ってね」とエールを頂く、というおまけまでつきました(笑)

 

この話を周囲にしたところ、無理して頑張っているみたいに思われることが多かったのです。私が割と普通よりも回復が早い傾向があったことが影響しているかもしれませんが、「がんと戦って(無理して)頑張ってる」「走れないと悔しいから(無理して)頑張っている」と捉えられることが思いのほか多く、「私、いったいなにと戦っているんだろう??」と感じることもしばしば。実際に「戦いだよね?」と(たぶん褒め言葉で)言われたこともあります。

 

走ることは趣味ですし、記録が出せるならそれに越したことはない。でも、そのためになにかを犠牲にしたいとまでは思っていません。あくまで大丈夫なのであれば出たいと思っただけなのです。見た目のイメージだと勢い主導に見えるようなのですが、実は無理をしてまでなにかをやりたいとまではまったく思わないタイプです。結果的に、石橋を叩きつつ、主治医の言うことは全部守って、できる限り負担なく無理のない方法を実行しただけなんです。

 

でも、がんのような大病→マラソン大会に出場のために練習、という事実だけが独り歩きすると、どうも無理して頑張っているととられがちでした。

実際には、無理しているわけでも、健康を犠牲にしているわけでもないのに、”戦ってる”イメージが先行してしまうのには、ちょっとうんざりしたのは事実です。

 

繰り返しますが、私、医者の言いつけは100%守る方なんですよ(笑)

 

「頑張れ」ではなく「頑張ったね」がうれしい

私もサバイバーになるまでは理解していなかったと思うので偉そうには言えませんが、がんだけでなく病気になるということは、そこからの回復も含めて「全く元通りには戻らない」ということだと思います。

 

乳がんの話だけで言えば、手術がうまくいっても、再発しないと診断されるまでに実に10年かかります。100%大丈夫と口に出せるようになるまでにそれだけの時間がかかる、と言い換えてもいいかもしれません。

 

さらに、治療後は身体の調子も変わります。薬や手術の影響で変わる面もあるでしょう。生活も変わります。お酒が弱くなったり(笑)、回復のために生活を変えたりと、とにかく”前の私のそのまんま”には、どう頑張っても戻せないのです。

 

頑張っているから、強くいられるから治療をしているわけではなく、するしかないからやっているんです。ただでさえ”やらなければいけない”が強い状況です。どれだけ好意からきていても、やっぱり「頑張れ」という言葉には負担を感じざるを得ません。

 

逆に「のんびりしてればいいじゃん」「無理しないでね」も、自分が”何もできなくなった”や”前みたいにできない”ことを突き付けられるようで、わがままなようですが苦しいのです。

 

だから、「頑張って」や「すごい」ではなく、「無理しないで」などでもなく、できれば「頑張ったね」って声をかけてあげてほしい。そう言ってほしい。

 

頑張ったことだけは、変わらない事実だから。

少なくとも私は、その言葉で救われました。

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