【教えていただいた方】
「イシハラクリニック」副院長。西洋医学、漢方を含む東洋医学、自然医療にも詳しい。わかりやすい医学解説と親しみやすい人柄で、クリニックでの治療のほか、メディア出演や講演も多数。『眠れなくなるほど面白い 図解 免疫力の話』(日本文芸社)など著書多数。
便秘には効果てきめん! 免疫力アップや美肌や美髪効果も
水を温めるだけの白湯ですが、ポテンシャルの高さは「ただのお湯では?」とは言えないほど多岐にわたります。
「まず顕著なのは便秘解消。腸は胃にものが入ってくると動き出す性質がありますが、ただの水よりも温かい白湯のほうが腸の働きがより活性化するのです。
腸は最大の免疫器官なので、腸の調子がよければ免疫力も上がり、体が温まれば代謝がよくなって太りにくい体にもなる。早い人では2~3日、1週間も続ければ便通の効果は表れます」と石原新菜先生。
一方、美容面で大きいのは美肌効果。
「肌のターンオーバーを活性化させるには、細胞ひとつひとつにまで血液が行き届く必要があります。
白湯で体が温まると血流がよくなり、毛細血管にも血液が流れるようになるため、肌のターンオーバーが活発に。
頭皮にある毛母細胞も同じで、毛母細胞に血液が行き渡ることで健康な髪が生えてくるので、白髪や薄毛対策としても期待できます」
白湯で「TRP(トリップ)チャネル」が活性化、腸の働きがアップ
白湯が腸の働きを活性化させるのは、実は温度が大きく関係しています。
「トリップチャネル」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
2021年にノーベル生理学・医学賞を受賞した研究分野なのですが、温度や化学刺激を感じ取る細胞の感覚受容体のことで、五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)とは別の感覚センサーとして注目されています。
「白湯を飲むと、その温かさに胃や食道にあるトリップチャネルが反応し、副交感神経が優位になります。その結果、腸の働きがよくなって便通が改善されると考えられます」
水道水は煮沸がマスト! 白湯の正しい作り方、飲み方は?
白湯がもたらすすばらしい健康美容効果を余すところなく享受するには、正しい作り方や飲み方が大切。
「水道水を使う場合は、やかんに水を入れたらふたを開けて10~15分煮沸しましょう。
水道水に含まれる塩素のにおい(いわゆるカルキ臭)が抜けますし、有害性が心配されるトリハロメタンも10分以上の煮沸でなくなるとされています。ふたを開けておかないとこれらが揮発しないので、必ずふたを開けて煮沸することがポイント。
ミネラルウォーターや浄水器の水を使う場合はこれらが含まれていないため、煮沸は不要。50~60℃になったらOKです」
白湯は飲むときの温度も大切。煮沸させた場合は、湯呑みやカップに注いだら50~60℃くらいまで温度を下げ、やけどをしないように注意しながらゆっくり飲んで。
「ぬるいと腸の活性化や温め効果が下がってしまうので、“ごくごく飲める”温度ではぬるすぎます。温かくて気持ちよいと感じるうちに飲みきるのがいいですね」
電子レンジや電気ケトルでもOK!
ミネラルウォーターや浄水器の水で白湯を作る際は、電気ケトルや電子レンジなどで温めてもOK。
「ただし、水道水の場合は煮沸させる必要があるため、やかんで沸かすことをおすすめします。
IHでももちろん大丈夫。アーユルヴェーダでは、白湯を火・風・水のバランスがとれた飲み物として扱うため、火で沸かすことが重要とされますが、一般の方はそうでなくてもかまいません。ガスコンロではない家庭も多いですし、手軽で続けやすい方法が一番です」
取材・文/遊佐信子 イラスト/きくちりえ(Softdesign)