【教えていただいた方】
1973年生まれ。日本医科大学卒業後、産婦人科医に。その後、美容皮膚科治療、栄養療法、点滴療法、ホルモン療法を統合したトータルアンチエイジング理論を確立。2008年「日本機能性医学研究所」を設立(2009年に法人化)。2017年、スーパーフードとしての牧草牛(グラスフェッドビーフ)の普及を目指し、日本初の牧草牛専門精肉店「Saito Farm」をオープン。2022年、機能性医学と再生医療を融合させた治療拠点として「斎藤クリニック」を開設。著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館)、『病気を遠ざける! 1日1回日光浴 日本人は知らないビタミンDの実力』(講談社+α新書)ほか多数。斎藤クリニック、Saito Farm
骨を丈夫にするだけじゃない、ビタミンDの底力に注目
ビタミンDと聞けば、一般的には「骨をつくるのに重要なアレね」という人がようやく増えてきたところ。
一方、専門家の間ではここ10年ほどで、他に類を見ないほど研究が活発になっている栄養素です。
ここまで注目されているのは、ビタミンDがほぼすべての身体機能にかかわっていることがわかってきたから。
「免疫の調整機能の関係をはじめ、健康を支えるビタミンDの働きが次々に解き明かされています。
コロナ禍では、ビタミンDとCOVID-19の研究が前面に出てきました。感染予防はもちろん重症度や死亡率との関連についての論文も多数。新しいところでは、不妊治療や再生医療にかかわる研究も。
健康寿命を延ばそうというこの時代、ビタミンDを利用しない手はありませんね」と解説してくれる斎藤糧三先生。
ビタミンDのおもな働きを簡単にチェックしておきましょう。知らなかった作用もあるのでは?
都内で検診を受けた人、ほぼ全員がビタミンD不足という衝撃!
斎藤先生は2007年頃からビタミンDの重要性に注目してきた一人。長年「日本人のほとんどはビタミンD不足。花粉症が多いのもそのせい」と説いてきました。
ビタミンDは日光を浴びることにより、皮膚で合成されるという珍しいビタミン。限られた食物にしか含まれないため、食べて充足させるのが難しい特殊なビタミンです。
特に女性の私たちには、ここ、とても重要です。
「SPF値の高い日焼け止めを使い続けているとビタミンDの合成は完全に停止してしまいます。
日傘、アームカバーまで動員して紫外線をガードしている日本人女性は、残念ながら世界一ビタミンDが不足しているはず。日本人に花粉症や骨粗しょう症が多いことと関係がないとは言いきれませんね。
2013年の国内の研究(注1)でも、8割の人がビタミンD不足とされていました」
(注1)国内の大規模コホート研究 ROAD Study.Osteoporos Int. 2013;24(11):2775-87.
ところが、2023年、東京慈恵会医科大学から発表された調査報告結果は、さらにショッキングな数字だったのです。
これは、2019年4月〜2020年3月までの期間に、東京都内で健康診断を受けた5518人を対象にビタミンDの充足度を調査したもの。血液中のビタミンD、血清25(OH)Dを測定しています。
その結果、男女ともに日本代謝内分泌学会・日本整形外科学会が提唱するビタミンDの基準濃度30ng/mLに達したのはわずか2%のみ。
98%の人(ほぼ全員と言っても過言ではない)がビタミンD不足に該当していることが判明。本研究の成果はアメリカ栄養学会が発行する学術誌(注2)に掲載されました。
ビタミンDの不足・欠乏は感染症や心血管疾患など命にかかわる病気、COVID-19の重症化因子としても注目され、いよいよ世界的に関心が高まっています。
(注2)The Journal of Nutrition誌Volume 153, Issue 4, p1253
あなたは大丈夫? ビタミンD不足度テスト
本来、ビタミンDの充足度の目安になるのは血液中の濃度です。上の調査のように採血により「血清25(OH)D」(25-ヒドロキシビタミンD)を測定して判定されます。
ここでは斎藤先生に、今すぐできるセルフチェックを考えてもらいました。まずは、以下のチェックをやってみましょう。
当てはまる数でビタミンDの充足・不足度を推測します。
あなたのビタミンDレベルは…
■当てはまるのが2つ以下
→ビタミンDは足りています。その調子です!
■当てはまるのが3つ〜7つ
→たぶんビタミンD不足でしょう。増やす努力を少しでも!
■当てはまるのが8つ以上
→欠乏レベルと推測。今日からビタミンDを意識しましょう!
【解説】なぜ、その項目がビタミンDと関係があるの?
■屋内にいる人(たとえガラス越しでも)は、ビタミンDがつくられません。
■外出時に紫外線対策をしている人も同じく。
■ビタミンDが多い食品は数少なく、多いのは鮭やイワシです。
■風邪、体調をくずしやすいのはビタミンD欠乏による、免疫調整が不良の可能性。
■睡眠の質が悪い人は、ビタミンD不足でセロトニンの合成が減っているのかも。
■気分が落ち込みやすい人も同様にセロトニンが減っている影響あり。
■花粉症などのアレルギーはビタミンD不足により症状が出ていることが多い。
■日光浴以外でビタミンDを充足させるには、やはりサプリメント。
■骨折しやすいのはビタミンD欠乏により骨質・骨密度が低下している可能性大。
■ビタミンDが不足すると筋肉の合成もうまくいきません。
■腰痛はビタミンD欠乏による骨軟化症の場合も考えられます。
■年齢を重ねるほど皮膚でのビタミンD合成量が減少します。
イラスト/内藤しなこ 取材・文・画像制作/蓮見則子