食欲の秋本番、胃腸を大切に！
旧暦の1年を24等分して、季節の移り変わりとそれに伴う生活の知恵を結びつけた「二十四節気」の養生法。この考えは紀元前の中国で生まれ、日本でも古くから親しまれています。
二十四節気はまず1年で昼の時間が最も長い日を夏至（6/21）、最も短い日を冬至（12/21）と決め、そこに昼と夜の長さがほぼ同じになる日である春分（3/20）と秋分（9/22）を加えて、1年を春夏秋冬の4つの季節に区分。さらにその中を、気温の変化や気象現象、動植物の様子などで6つに分けたものです。（詳しくは第1回参照）
※日にちは国立天文台発表の2024年のもので、年により多少前後します。
「二十四節気は長年の生活経験や知識で導き出した、農作業の目安にするための『気候・天気の予報』であり、それに従った養生法は、『人は自然の一部で、自然と調和して生きることが大切』という考え方に基づいた健康管理の知恵です。これらは漢方の陰陽論や五行説ともつながっています」（齋藤友香理さん）
「寒露」は草木に降りる、冷たい露を表した言葉。
現代では10月でも暑い日がありますが、少しずつ寒さが増し、朝夕はひんやりと肌寒さを感じることも増えてきます。空気も澄み、夜空には美しい月や星が輝いています。
「『鴻雁来（こうがんきたる）』として、南に帰るツバメと入れ違いに、北から雁などの渡り鳥がやってきます。『菊花開（きくのはなひらく）』と、菊の花が咲くのもこの頃。各地でみごとな菊の展示や品評会などが行われます。
菊には不老長寿の薬効があるとされ、菊の花を浮かべた菊花酒を飲む風習があるところもあります。
また、『蟋蟀在戸（きりぎりすとにあり）』というように、キリギリスなどの虫が鳴き出す時期でもあります。
きのこや栗、柿、秋サバや秋鮭など秋の恵みのおいしいものがいっぱい。冬に向けて栄養を蓄えようと、食欲が増す時期です。
また乾燥するのは肌だけでなく、内臓、特に胃腸の粘膜も同じです。胃がシクシクしたり、便秘やコロコロうんちになったりといった不調が現れがち。
食欲に任せた食べすぎには要注意。栄養バランスのよい食事をゆっくりと嚙んで食べ、乾燥で弱くなっている胃腸をいたわることが大切です。
特にこの時期は潤い食材を積極的に食べるといいでしょう。例えば、旬の柿やいちじくをはじめ、れんこん、きくらげ、ごま、松の実、くるみ、ほうれん草、イカ、ゆり根、豆腐、ナッツ類などです」
お腹のマッサージで胃腸をいたわって！
「つい食べすぎてしまったときや、腸の動きが鈍っているときなどは、腸をいたわるマッサージがおすすめ！ 両手のひらを腹部に密着させて、“の”の字を描くようにさすって、大腸の働きをサポートします。手のひらをこすったり、お湯で手を温めてから行うと、腹部が温まってより効果的です。
秋は収穫の季節で、味覚の秋、読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋ともいいます。自分自身が実りを得るために、読書で知識や見聞を広げたり、絵画や音楽、スポーツを自分で楽しんだり、美術館やコンサートホール、スポーツ会場に出向いて鑑賞・観戦するなどもよいでしょう。
こうした心を豊かにすることも、心身を健康にするためには大切です」
【教えていただいた方】
東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務め、多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら外部セミナーも担当し、漢方を学ぶ楽しさを広めている。また「養生を指導できる人材」の社員育成、『薬日本堂のおうち漢方365日』『薬膳・漢方検定 公式テキスト』など、書籍監修にも多く携わっている。
イラスト／河村ふうこ 取材・文／山村浩子
