【お守りプチテク紹介者】
エビデンスに基づいた健康情報&患者視点に立った医療情報について執筆、講演を行うほか女性誌やWEBでの連載も。乳がんサバイバーとして、がんの啓発活動を行うなど多方面で活躍中。
原因不明の不安や落ち込みに苦しんだ更年期前半
漢方薬の上手な取り入れ方や未病対策を多くの人に知ってもらいたいと、NPO法人「みんなの漢方®」の理事長をつとめる増田さん。
ご自身でも年齢とともに変化する体調に合わせて、少しずつ種類を変えながら漢方薬を取り入れて、不調と付き合っているといいます。
「これといった原因が思い当たらない不安や憂うつ、落ち込みを更年期に入った45歳ころから経験しました。メークをしてマスカラまでつけたのに、ソファから起き上がれずに、約束をドタキャンしたことも。他にも関節痛、冷え、むくみ、めまいなどたくさんの不調を経験。症状はバラバラに出て、消えてはまた始まり、交互に出たり、何種類か一度に出たり、を繰り返しました。
いずれも更年期に経験しましたが、50歳で閉経して、55歳になったころから更年期の不調は終りました。私の更年期はまさに教科書通り、閉経(50歳)の前後5年ずつ合計10年でした。最後まで残っている症状で今も継続しているのは、憂うつ感です」
更年期前半の不安と憂うつは「加味逍遙散(かみしょうようさん)」でケア
「当時からバランスの良い食事、運動、規則正しい生活リズムを心がけていましたが、最終的に頼ったのは漢方薬。更年期障害の治療はホルモン補充療法(HRT)を行なうことで改善できるのですが、私は乳がんの経験(43歳で罹患)があるため、HRTは禁忌で行えません。そのため、漢方薬に頼りました。漢方薬も年齢によって変わっていきました。漢方専門医に診察してもらいながら、そのときの体質や体調に合った漢方薬を処方してもらってきています。
当初(45歳~50歳ころ)は「加味逍遥散」を毎日朝晩1包ずつ継続。漢方薬とヨガやランニング、ピラティスで不安や憂うつ、関節痛、冷え、むくみ、めまい、動悸などたくさんの不調を乗り越えました。メンタル維持のために、運動は欠かせませんでした」
年齢による体質の変化に合わせた漢方薬がお守りがわりに
「その後、50歳になってからは「加味逍遥散」で下痢などの副作用が出始めたため(漢方薬にも副作用はありますし、年齢を重ねて体質の変化により適切な漢方薬は変わってきます)「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」に変更。
毎日朝晩1包ずつ。「補中益気湯」はお守りのように毎日1包は飲んでいますが、その後、憂うつ、落ち込みなどのメンタルによる食欲低下、下痢、胃腸カタルなども起きたため、食欲が不振で胃の調子が悪いときに「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」を1包飲んでいます。
こちらはお湯に溶いて飲むのがコツ。すると20~30分でスーッと胃の調子がよくなり、お腹が空いたときのようにグーッとお腹が鳴り、食欲OKサインが出て、食事をとります。するとご飯も美味しく食べられます。
タンパク質をとって、運動して、筋肉量を増やすと、メンタルにもよく、疲れにくく、冷えも軽減できました。便秘はもちろん、肩こり、腰痛、不眠にもいいし、めまい、動悸もなくなってきました」
「私は健康保険が使える『補中益気湯』を飲んでいます」
メンタルの落ち込みがひどくなる前に「半夏瀉心湯」
「60代になった今も「補中益気湯」を1日1包継続。体調が落ちていると感じたときは、不調が出る前に、朝晩1包ずつ、1日2包にします。すると、疲れもとれます。漢方薬を長年続けていると、自分の体の変化に敏感になり、体の声がよく聴こえるようになります。未病のうちに対処できるようになるのです。
1昨年、猫が亡くなってから、落ち込み、憂うつになることが増えました。「半夏瀉心湯」はしばらく飲まないでいましたが、最近はまた「半夏瀉心湯」のお世話になっています。食欲が出て、ワインもおいしく飲めて、落ち込みや憂うつが減ります。朝「半夏瀉心湯」、夜「補中益気湯」の毎日です」
「医療用医師処方薬の『半夏瀉心湯』。1か月分1000円しないくらいです」
「左の子はミーシャ(2019年没)、右はチー(2023年没)。ともに19歳で亡くなりました」
記事が続きます風邪をひきそうなとき飲むと20分で効きます
「また、風邪をひきそうなときは、すごく早い段階(私にはちょっと目の奥が痛い、昼でも眠くてしょうがないなどのポイントがあります)で気づくことによって未病の段階で予防できます。
漢方薬は、飲むタイミングが非常に大切です。
私の体質に合っているのは「麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)」。お湯に溶いて1包飲むことで、約20分で改善します。水で飲むより効果が高いです。おかげで風邪知らず、インフルエンザにも一度もかかったことがありません。
「薬理学的にも、“麻黄”の抗ウイルス作用(ウイルスの増殖を抑える作用)が明らかにされています」
大事なのは、自分の体質に合った漢方薬を処方してもらうこと。私に合う漢方薬が、みなさんに合うとは限りません。また医師処方なら健康保険が使えるので安価です。そのため、漢方専門医を主治医にして乳がん以降、更年期症状と加齢によるさまざまな不調を乗り越えています。漢方薬は女性のさまざまな不調が得意種目です。
60歳を過ぎた今、更年期症状がほぼなくなって快適!!!な生活を送っています。もちろん、運動の効果は絶大。食事をきちんととって、筋トレ、ストレッチ、有酸素運動を組み合わせると体のバランスがよくなり、筋肉量が増え、疲れにくくなり、自分に自信がもてるようになりました」
取材・文/山本美和