第三の呼吸法、「背中呼吸」とは?
「呼吸は生まれたときから無意識に行っています。そのため、『深呼吸をしましょう』と言われて、意識的に行わないと、肺の上のほうの1/3~1/5くらいしか使わない、浅い呼吸になってしまいがちです。
今回は、胸式呼吸でも腹式呼吸でもない、第三の呼吸法ともいえる「背中呼吸」を紹介します。生活に上手に取り入れると、体の調子が変わり、心も落ちついてきます」(片平悦子さん)
私たちは普段、どのようにして呼吸をしているのでしょうか?
「呼吸というと、息を吸うことだと思っていませんか?
しかし、肺の機能からすると、その逆です。肺の空気を吐き切ると、その分、自然に空気が入ってくる仕組みになっています。
ちなみに、喘息の人はうまく呼吸ができずゼイゼイする理由を伺うと、息が吸えないのではなく、息が吐けないから苦しいとおっしゃいます。このことからも、吸気ではなく、呼気が大事であることがわかります。
普段、私たちは無意識に呼吸をしているので、呼吸の仕組みやありがたみを感じていませんが、呼吸をするときは、まずは、息を吐き切ることがとても大切です。
深呼吸をするとき、大きく動いているのは横隔膜です。肺は風船のようなもので、それを膨らましたり、縮めたりするように働くのが横隔膜です」
ではその仕組みを見ていきましょう。
「呼吸は横隔膜が上がる動きで、肺から空気を押し出し、横隔膜が下がる動きで、肺が広がり空気が入ってきます。
このように、呼吸は横隔膜や肋骨のまわりの筋肉を動かすことで、肺に空気を出し入れしているわけです。
横隔膜は肋骨のいちばん下から第6肋骨の高さまで、ドームのような形をしてついています。実際に自分の肋骨の下部分を、前から後ろまで触ってみてください。第6肋骨はちょうどブラジャーの下あたりになります。
横隔膜はドーム形になっていて、これを動かすには12対ある肋骨の下半分の肋骨が動く必要があります。その肋骨の下半分を積極的に動かす方法が『背中呼吸』なのです」
背中側を意識的に動かす「背中呼吸」にトライ!
「『背中呼吸』は背中を膨らませるように意識して行う呼吸法です。
最もシンプルな方法は、背もたれのある椅子に座り(座り方は【1】参照)、背もたれに背中を押しつけるように行う方法があります。しかし、意外と背中に意識を向けるのが難しい人もいるので、もっと背中を意識できる方法を紹介します」
テーブルに手をつく「背中呼吸」
【1】 椅子に正しく座る
テーブルを前にして、背もたれのある椅子に、肛門が椅子の座面と背もたれの角にくるように座ります。
【2】 両手を広げる
姿勢を正して、両手を左右に広げます。
【3】 両手をテーブルにつく
両ひじを直角に曲げてテーブルに手をつき、上体を斜め45度に前傾させます。
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【4】 口から息を吐く
この姿勢で、口から息を吐き切ります。
【5】 鼻から息を吸う
姿勢を維持したまま、鼻からゆっくり大きく息を吸います。このとき、足の裏と太ももの内側に力を入れると、背中を意識して膨らませやすくなります。これを3~7回を目安に繰り返します。
これと「モゾモゾ体操」をセットで行うとさらに効果的!
「モゾモゾ体操」のやり方は第4回参照。
「呼吸をコントロールする横隔膜は背中側までつながり、体幹の筋肉(インナーマッスルである大腰筋)と連動しています。背中を意識することで呼吸が深くなり、体が中から動き出します。
背中に空気を送り込むように行う『背中呼吸』なら、どんなトレーニングよりも確実に横隔膜とインナーマッスル(大腰筋)を鍛えることができる画期的な健康法です。ぜひ試してみてください」
【教えていただいた方】

イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子