座り姿勢が将来の健康を左右する
日本人は世界一、座っている時間が長いといわれています。まずはそれをやめて、生活の中に適度な運動を取り入れるのがよいのですが、その前に、普段何気なく行っている、座り姿勢が重要だといいます。
「1週間は24時間×7日=168時間。肩がこる、腰が痛いと言って、毎週整体院に通ったとしても、168時間のうち1時間程度です。『整体院に行っているから姿勢なんて気にしない!』と思っていると、体は徐々にその癖によって変形し、70歳を過ぎたあたりから、体のあちらこちらに痛みを感じることになりかねません。
どんな家電や機器にも取説があるように、私たちの体にも取説があります。手足や首の可動域、その動きを支える肩甲骨や骨盤、背骨といった骨や関節。その動きの法則を無視して体を使っていると、その負荷が積み重なり、やがて本来の動きができなくなり、痛みになっていきます。
私は長年、鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師として多くの患者さんをみてきました。70歳を過ぎてあちこちにガタがくる人は、本来、私たちの体を正しく使う『取説』を、まったく無視している人がとても多いですね。
とはいえ、その取り扱い方を教えてくれる人は、なかなかまわりにはいないものです。そこで、私は患者さんによく『日々の座り姿勢に気をつけること』を提案しています」(片平悦子さん)
あなたは普段、どんな座り方をいていますか? これだけはやめるべき「座り癖」がこの3つ!
【これだけはやめたい座り癖】
1 脚を組む
2 横座りをする
3 あぐらをかく
「これらの座り癖がある人は、やがて骨盤が歪んできます。1と2は左右に歪み、3では腰が後ろに倒れてきます。するとその骨盤とのバランスをとるため、全身が少しずつ歪んでいきます。その歪みが、肩こり、腰痛、四十・五十肩、頭痛といった痛みになっていきます。
例えば、ぎっくり腰は、骨盤の歪みがひどくなり、まわりでサポートしていた腰や背中の筋肉が支え切れなくなって、 仙腸関節(骨盤を構成する仙骨と腸骨の間にある関節)が炎症を起こした状態です」
さて、あなたは大丈夫でしょうか?
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「これ以外にも、時々、電車の中で足を前に投げ出し、尾骨で座っている若者を見かけます。すると『将来、老後には腰痛になるだろうな』と見ていてヒヤヒヤします。取説を知らずに、間違った体の使い方をしていると、結局、老後に痛みやしびれという形で代償を払うことになります。
では、骨盤の正しい位置とはどこでしょうか?
まず、立った状態で尾骨の先端に指を当ててみましょう。その位置より肛門はもっと下にありませんか? 確認してみてください。そして、肛門よりも下に坐骨があります。
ということは、正しく座ったときは、座面に坐骨はついているけれど、肛門はほんの少し浮いているのが正解です。もちろん尾骨は座面にはついていません。
このことを踏まえていれば、椅子に座ったとき、自分は正しく座っているかを確認できると思います。
正しい座り方をするには、まず浅く椅子に腰かけて、坐骨で後ろ歩きをしながら、背もたれと座面の角まで移動します。すると、骨盤が起きた状態で腰かけることができます。そうしたら、そのまま背もたれに寄りかかれば完璧です」
【足指ニギニギ】
「ただ、反り腰になっている人は、上記の座り方をしても背もたれに腰椎(ウエストあたりの背骨)がつかない場合があります。
そのような場合は、椅子に座ったあとに、足の指をギュッと曲げて、グーを作ってみましょう。すると、へそが腰椎を後ろに押してくれるので、腰部が背もたれにつきやすくなります。反り腰の人は、この『足指ニギニギ』を時々意識するといいでしょう」
正座やあぐらはタオルでサポート、脚組み矯正は両膝をしばる!
では、床に直接座る必要がある場合はどうしたらいいのでしょうか?
「横座りはNGです。正座がいいでしょう。その場合、お尻の下に正座椅子か丸めたタオルを置いて、お尻の位置を膝よりも高くすると、腰がすっと伸びます。あぐらも丸めたタオルなどをお尻の下にかませて、お尻の位置を膝よりも高くするのがおすすめです。
脚を組む癖が直らない人は、矯正方法として、椅子に座ったときに両膝をタオルなどでしばる方法があります。家にいるときにエクササイズだと思って実践すると、次第に内股(内転筋)に力がついて、脚を組まずによい姿勢を保てるようになると思います」
【教えていただいた方】

イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子