猫背だと腕の可動域が狭くなる!
「先日、私のところにこんな質問が届きました。
『一日中のパソコン作業と長時間の車の運転、夜は隣に猫が寝るので、寝返りが打てずにいます。そのため、首から背中にかけてガチガチにこり固まっています。楽になる方法はありませんか?』というものでした。
今回の質問者は相当ハードワークのようで、1週間に1度整体院でほぐしてもらっているようです。しかし、日々、自分でできる『猫背解消ストレッチ』を行うだけで、かなり楽になると思います。
肩こりを引き起こす大きな原因に姿勢の悪さがあります。肩こりのある人の多くは、猫背の人が多いですね。猫背の人は両腕の可動域が極端に狭くなっているケースがあります。
姿勢のいい人でも、わざと猫背の姿勢を作って、両手を上げてみてください。すっと背すじが伸びた状態だと、両手は真っすぐ上まで上がりますが、背中を丸めた状態では、腕は斜め上までしか上がらないと思います」(片平悦子さん)
では、猫背の人の姿勢の特徴を見てみましょう。
【猫背の姿勢の特徴1】骨盤が後傾している
よい姿勢の人(イラスト左)は、肋骨が少し上向きになり、首は緩やかなS字カーブを描いています。骨盤もすっと真っすぐに立っています。
一方、背中が丸まっている人(イラスト右)は、骨盤が後ろに倒れた状態で生活していることが多いです。そのせいで、骨盤とのバランスをとるために、肋骨が前に傾きます。さらに、その肋骨とのバランスをとるため、あごが上がって首は前に傾きます。
こうなると、頭の重さを上手に分散できずに、首や肩にその重みがそのまま伝わります。さらに、両肩の可動域が狭くなり、腕の動きが悪くなるので、肩や肩甲骨まわりの筋肉が硬直します。
「椅子に座っているときの土台である骨盤がよい位置にあることが、肩こり撃退の大きなポイントのひとつです」
【猫背の姿勢の特徴2】肩甲骨の位置がずれている
普段からパソコン作業などで背中を丸めていると、肩甲骨が正常な位置からずれてきます。
「左右の肩甲骨が開き(外転)、肩甲骨の下角が外に広がった形(上方旋回)に歪んでしまいます。こうなると、腕の動きに制限がかかってしまいます」
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「猫背解消ストレッチ」で肩こりを撃退する!
「肩こりはこった部分をグイグイ押したりもむだけでは、根本的な解決になりません。悪い姿勢で可動域が狭くなった肩甲骨の動きを柔軟にすることが大切です。
そのために重要なポイントは、1.骨盤を立てること、2.肩甲骨の位置を正常に近づけることです」
1 骨盤を立てる
まずは、骨盤を正しい位置にセットします。
椅子に浅く腰かけ、両手を座面についてお尻歩きで、座面と背もたれの角まで移動します。すると骨盤が立ちます。これだけで、背中は伸びて、頭の重みがすっと背骨を通過する感覚になると思います。首や肩も軽くなります。
2 肩甲骨の位置を正常に近づける
方法は、組んだ両手のひらを胸に引き寄せてから、両腕を前に出し、そのまま天井に向けて上げるという動きを行います。
【1】胸の前で両手を組む
手のひらを自分のほうに向け、両手の指を内側で組みます。指がすべて自分側にある状態です。通常、両手の指を組むというと、手の甲側に組みますが、この場合は手のひら側で組みます。
この状態で一度、胸元に引き寄せます。
【2】腕を伸ばす→上げる
引き寄せた手のひらを向こう側に返しながら、腕を伸ばします(イラスト右)。このとき、親指が下を向き、自分から見えるのは手の甲だけです。ここで左右の肩甲骨が開いているのを感じてください。
続いて、両腕をいったん体に近づけてから、斜め上へ上げます(イラスト左)。このときも肩甲骨がストレッチされていることを意識してください。これをゆっくり1回行いましょう。
「腕が肩の高さより上に上がらない場合は、肩甲骨がかなり固まっていると考えられます。しかし、腕が高く上げられなくても問題はありません。高く上げることが目的ではないので、『これ以上は無理』というところまででOKです。
ゆっくりと気持ちいいと思う範囲で行い、肩甲骨の緊張を緩めていきましょう。
これなら、仕事中でもできると思います。疲れたとき、肩がこったとき、夜寝る前などに、たった1回行うだけでも効果があります。日常の隙間時間に取り入れて、肩すっきり生活をエンジョイしてください」
【教えていただいた方】

イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子