体を覆う浅筋膜を整えることが近道
もはや国民病ともいえる肩こり、さらに40歳を過ぎた頃からは腰痛に悩む人も増えてくるようです。こうした慢性的な痛みの主な原因は、骨盤の歪みからきていることが多いそう。「この骨盤の歪みは、重症でなければ自力で治すことができます」と片平悦子さん。
その理由は
私たちの体は60~70%が水で成り立つ水風船のようなものだからです。
「体液が約60~70%で固形物が約30~40%ということは、私たちの体は人の形をした水風船の中に、骨や筋肉、内臓、脳、脊髄などが入っていて、水の中でプカプカ浮いている状態だともいえます。
重症でなければ、骨盤の歪みを自力で治すことができる理由は、水風船の形を整えるだけならセルフケアでできるからです」(片平悦子さん)
その方法は前の回で紹介した「モゾモゾ体操」にプラスして、「浅筋膜(せんきんまく)」と呼ばれるボディスーツのように全身を覆う膜を緩めるのがポイントだそう。
モゾモゾ体操のやり方は第4回参照。
「モゾモゾ体操は足を小さく動かすことで、仙骨を微妙に動かして、脳脊髄液の生成・循環を正常化する体操です。この動きにより、脳脊髄液だけでなく、仙腸関節(せんちょうかんせつ)を緩めることができます。仙腸関節は骨盤を形成する仙骨と腸骨の間にある関節で、上半身の重みを支え、下半身が受ける衝撃を吸収する役割があります。
仙腸関節は骨盤で最も重要な関節なので、ここが緩むだけで、腰痛が改善するケースも少なくありません。
さらに水風船のような全身を覆う浅筋膜の歪みをとることができたら、もっと骨盤の歪みが改善し整いやすくなります。
浅筋膜は皮膚の下の脂肪を取り去ったところにある、体を守るボディスーツ、またはウェットスーツのように全身を覆う膜です。よく聞く『筋膜』は深筋膜を指すことが多く、浅筋膜はその深筋幕を全体的に覆うようにあります。
この浅筋膜の歪みを整えることが、肩こり・腰痛の改善に役立ちます」
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浅筋膜の歪みをとるセルフリリース
立った状態と座った状態で体を回して、下半身と上半身の歪みを確認。
立位で回しにくかった側の足を一歩前に出し、座位で回しにくかった側の腕を上げます。とてもシンプルな動きですが、効率よく浅筋膜の歪みを整えることができます。
検査1・下半身の歪みをチェック
骨盤の回旋具合をみて、下半身(骨盤から下)の歪みを確認します。
左右の足をそろえるか、こぶしひとつ以内に開いて立ちます。
おへその前で左右の手を合わせて、上半身を右に回し、続いて左に回します。動きにくいほうをメモします。
検査2・上半身の歪みをチェック
肩の回旋具合をみて、上半身の(骨盤から上)の歪みを確認します。
回転しない椅子に座り、胸の前で腕を伸ばし左右の手を合わせます。
骨盤が動かないようにしながら、上半身を右に回し、続いて左に回します。動きにくいほうをメモします。
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浅筋膜をリリースする
検査1で動きにくかった側の足を一歩前に出し、検査2で動きにくかった側の手を上げます。
【1】下半身の歪みをとる
検査1で動きにくかった側の足を10~30cmほど前に出します。イラストは検査1で右に動きにくかった場合を想定しています。
【2】 上半身の歪みをとる
そのまま、検査2で動きにくかった側の手を上げます。上げたほうの胸郭を広げるイメージで行います。イラストは検査2で右に動きにくかった場合を想定しています。
【3】 深呼吸をする
その姿勢のまま、ゆっくり3回深呼吸して、4回目の吸気のときに元に戻します。
再検査
再度、1と2の検査を行い、左右差がなくなりバランスがとれていれば、骨盤をはじめ全身の歪みが解消しています。
「今日は仕事をしすぎて心身がつらいな…と思う日に試してみてください。寝る前に行うと熟睡でき、朝起きたときに行うと、寝ている間の体の歪みがとれるので、快適に仕事や家事に取り組めると思います。これを毎日行うことで、肩こり・腰痛の改善に役立つはずです」
【教えていただいた方】

イラスト/かくたりかこ 取材・文/山村浩子