屋内での熱中症は気づきにくい
熱中症というと、炎天下で作業や運動をしている人がなるイメージですが、最近は部屋の中で発症するケースが増えているそう。
「外で起こる熱中症は、一般的には健康な人や子どもが多く、室内での熱中症は高齢者や病気療養中の人に多い傾向です。
症状は、外での熱中症の場合は、動いていることが多いので、脚がしびれたり、こむら返りなど、主に下半身に不調が現れやすい傾向です。
一方、室内での熱中症では、頭痛がしたり、意識が遠のくといった頭部の症状や、食欲の低下や吐き気など消化器系に不調を感じやすいのが特徴です。そのため、熱中症と思わず、食あたりなのかと思い、対応が遅れる場合があるので注意が必要です。
特に高齢者が室内で熱中症になるケースでよくあるのは、エアコンを適切に使用していないことです。
そもそもエアコンがない、あっても電気代がかかるといった経済的な問題もありますが、高齢者は、暑さや喉の渇きを感じにくくなっていて、体が脱水症状になっていることに気づかないことが大きな要因です。
熱中症を予防するには、本人が暑さを感じていなくても、常に室温を一定に保っておくことが大切です。一般的に温度28℃・湿度60%以下が適切です。エアコンの設定温度が必ずしも、そのまま室温になっていないこともあります。できれば別途、温度・湿度計を設置することをおすすめします。
エアコンで室内を涼しくしておくと、体の表面だけでなく、呼吸で涼しい空気を吸うことで、体の中からも冷やすことができ、体温調整がしやすくなります。
【高齢者が熱中症になりやすい原因】
〇暑さを感じにくい
〇喉の渇きを感じにくい
〇食事量が減ることで水分摂取量が減る
〇腎機能の低下
〇トイレが近くなるので水を控えてしまう
水分補給は喉の渇きを感じなくても、定期的に飲む習慣をつけてください。最低でも1回180㎖(約コップ1杯)ずつ、1日8回の水分補給をするように推奨しています」(谷口英喜先生)
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エアコンは暑がりの人に合わせるべし!
エアコン問題では、40代、50代に多いのが、「暑がりの夫に合わせると、いつも部屋が寒い」といった声です。そんな場合は、どちらに合わせるべきなのでしょうか?
「もちろん各家庭での話し合いによりますが、熱中症予防という観点からすると、室温は暑がりさんに合わせるほうがいいでしょう。寒いと感じる人は服などで調整してください。
これは夜寝る場合も同様です。熱帯夜には、エアコンをタイマー設定ではなく、一晩中つけっぱなしにすることを推奨しています。
タイマーが切れて部屋が急激に蒸し暑くなると、良質な睡眠がとれないばかりか、夜間は水分をとらないので、熱中症のリスクが高まります。寒さを感じる場合は、パジャマや布団で調整を!」
熱中症が心配なら「熱中症計」を置く方法も!
遠くに住む高齢の親族などがいる場合は、きちんとエアコンをつけているか? 水分をとっているか? と心配になりますね。そんな場合、持っていると便利なグッズなどはあるのでしょうか?
「暑さ指数が測れる熱中症計はあると便利かもしれません。これは熱中症の危険指数である温度や湿度などを簡易的に測定して、リスクが高まるとアラーム音で知らせてくれるものです」
光、イラスト、アラームで室内環境をお知らせ!
イラストとLEDの点滅で、暑さ指数と乾燥指数を表示。暑さ指数が「危険」のときにはアラーム音で知らせてくれるので、目でも耳でもわかりやすいのがうれしい。部屋になじむかわいいデザイン。温度・湿度・時計の機能を備えています。コンディションセンサー TC-422 ¥5,500(オープン価格・価格は編集部調べ)/タニタ https://www.tanita.co.jp/product/hygrometer/5296/
「事前にリスクを知ることで熱中症予防ができるので、こうしたものを活用するのもいいでしょう」

済生会横浜市東部病院患者支援センター長。福島県立医科大学医学部卒業。横浜市立大学医学部麻酔科に入局し、2011年に神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部教授。2016年より現職。現在、東京医療保健大学大学院客員教授、 慶應義塾大学麻酔科学教室非常勤講師を兼任。専門は麻酔学、集中治療学、周術期管理、栄養管理、経口補水療法、脱水症対策など。著書に『熱中症からいのちを守る』(評言社)など多数。テレビや雑誌、Webでも活躍。
イラスト/内藤しなこ 取材・文/山村浩子