口呼吸をしがちな人は慢性上咽頭炎になりやすい!
風邪のひき始めなどに喉が痛くなることがあります。この喉と呼んでいるのは、実は鼻の奥の「上咽頭」です。これは細菌やウイルスの感染による急性の上咽頭炎です。それがさまざまな要因で慢性化することがあります。これが慢性上咽頭炎です。
上咽頭炎が慢性化すると、全身に冒頭に挙げたさまざまな症状が現れることがあります。なかにはIgA腎症、ネフローゼ症候群などの二次疾患に発展することも。
慢性上咽頭炎の症状については第1回参照。
上咽頭炎を慢性化させる要因もさまざまありますが、日々の癖や生活習慣がそれを助長することがあるといいます。
慢性化させてしまう要因については第2回参照。
その大きな要因は口呼吸による弊害です
例えば、顔の特徴では、下あごが小さく、後退している人は、舌の位置が低く、しかも後方にいきがちなので、構造的に鼻呼吸がしにくく、口呼吸になっていることが多いようです。
【正常な歯並び】
【狭窄歯列弓の歯並び】
また、あごが小さいと歯の収まるスペースが狭いので、歯列弓の形がV字形に変形する「狭窄歯列弓(きょうさくしれつきゅう)」が生じることもあります。これにより、歯並びが乱れたり、噛み合わせに問題が生じたりする可能性があります。こうした人も口呼吸になりやすいので注意が必要です。
また、話をすることが仕事の人は、しゃべっている時間が長いので、どうしても口呼吸になりがちです」(堀田修先生)
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寝ているときの舌の位置に要注意!
日中は意識して鼻呼吸をしている人も、寝ているときは知らないうちに口呼吸になっていることがあるそう。
「朝起きたときに口が乾いている、喉が痛い、いびきをかく人は睡眠中に口呼吸になっている可能性大です。
いびきの原因のひとつが、寝ているときの舌の位置です。舌根が喉の奥のほうに沈んで、気道を狭くしていることです。これを『舌根沈下(ぜっこんちんか)』といいます。舌や咽頭周囲の筋肉の衰え、肥満、飲酒などが原因と考えられます。
舌の位置は通常、上あごの前歯の上あたりについているのが理想です。しかし、舌の先が下前歯を押している状態を『低位舌(ていいぜつ)』といい、この状態の人も口呼吸になっていることが多いですね。低位舌の人は、舌の側面にデコボコとした歯型がついているのが特徴です」
ほかにこんな人は要注意!
〇冷たいもの、軟らかいものが好き
冷たいものが好きな人は喉が渇きやすい人が多く、特に氷をガリガリ食べる人に慢性上咽頭炎の人が多い傾向です。喉まわりを冷やすことも、上咽頭炎を慢性化しやすい要因なので、冷たいもののとりすぎには注意が必要です。軟らかいものを好む人は口のまわりの筋肉(口輪筋)の力が弱く、口呼吸の習慣を持っていることが多いといえます。
〇口臭が気になる
口呼吸が習慣化していると、口腔内が乾燥するので、雑菌が繁殖しやすくなります。これが虫歯や口臭の原因になります。
〇食事中クチャクチャ音を立てて食べる
音を立てるのは口を開けて食べているから。普段から口呼吸になっている可能性大といえます。
「口呼吸が慢性化していると、疲れやすかったり、風邪をひきやすい、アレルギー体質になるリスクも高まります。鼻呼吸を意識することが大切です」
【教えていただいた方】

防衛医科大学校卒業。2011年に仙台市にて、医療法人モクシン堀田修クリニックを開業。認定NPO法人日本病巣疾患研究会理事長。IgA腎症・根治治療ネットワーク代表。日本腎臓学会功労会員。2001年、IgA腎症が早期の段階であれば扁摘パルス療法により根治治療が見込めることを米国医学雑誌「AJKD」に報告。その後は同治療の普及活動と臨床データの集積を続ける。また、扁桃、上咽頭、歯などの病巣感染(炎症)が引き起こすさまざまな疾患の臨床と研究を行う。監修本『慢性上咽頭炎を治せば不調が消える』(扶桑社)など。ほかに著書多数。
イラスト/green K 取材・文/山村浩子