免疫力を強化するビタミンDと亜鉛が大きな助けに!
「私たちの体には免疫機能が備わっています。免疫とは、ウイルスや細菌などの有害物質が体内に侵入しようとすると、それを排除して病気にならないようにするものです。上咽頭にはその免疫システムが備わっていて、有害物質をいち早く察知して、免疫機能を発動する第一関門の役割があります。
上咽頭の炎症が慢性化する『慢性上咽頭炎』を引き起こすきっかけになったり、悪化させる要因には、ウイルスや細菌の感染、過剰なストレス、睡眠不足、空気の汚染や低気圧などの環境が関係しています。
こうした要因から上咽頭を守るためには、日頃から栄養バランスのよい食事、良質で十分な睡眠、適度な運動、ストレスの軽減などで、総合的に健康を底上げしておくことが大切です」(堀田修先生)
慢性上咽頭炎が引き起こす不調については第1回参照。
慢性上咽頭炎を悪化させる要因については第2回参照。
では、意識して摂取したい栄養素はあるのでしょうか?
「基本的には、タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、フィトケミカルなどをバランスよく摂取することが大切です。
その中で、意識したいのはビタミンDです。ビタミンDは骨や筋肉、精神面の健康の維持、免疫機能を正常に保つ働きがあり、特に呼吸器感染症のリスクを低下させるという研究結果もあります。

ビタミンDは日光を浴びることにより皮膚で作られます。1日20~30分程度の散歩やウォーキングなどを習慣にするといいでしょう。また食品ではサバやイワシなどの青魚や鮭、ウナギ、きのこ類に豊富です。
ほかに、免疫力を正常に保つのに役立つ栄養素では亜鉛があります。亜鉛は体内で合成できない必須ミネラルで、体のさまざまな細胞を健康に保つ働きがあります。特に慢性疲労を感じる人は、亜鉛不足を疑うといいかもしれません。魚介や肉、卵、豆類などに含まれます。
ビタミンDも亜鉛も、食事からの摂取で足りない場合はサプリメントや製剤でとる方法もあります」
冷たいものより温かいものを!
「また、慢性上咽頭炎を悪化させる要因として、口呼吸の習慣化も挙げられます。そんな人は口が乾きやすいため、冷たいものを好む傾向があり、中には氷をガリガリ食べるのが大好き! という人も多く見受けられます。

冷たいもので喉を冷やすと、慢性上咽頭炎をさらに悪化させるという悪循環に。慢性上咽頭炎が疑われる場合は、冷たいものを避け、温かいものをとるようにしましょう。
また、甘いものの食べすぎは免疫力を低下させ、上咽頭の炎症を悪化させます。口呼吸の習慣を治すためには、柔らかい食べ物よりも、噛み応えのあるものを食べて、口まわりや舌の筋肉を鍛えるようにするといいでしょう。
【慢性上咽頭炎を予防する飲食物】
〇タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル、フィトケミカルなど、栄養バランスのよい食事をベースに!
〇特にビタミンDと亜鉛が欠乏しないように心がける。
〇冷たい飲食物よりも温かいものを!
〇甘いものを食べすぎない。
〇柔らかいものより、噛み応えのあるものを!
毎日の食事で私たちの体はできています。ちょっとしたことですが、意識するとしないとでは大きな差が生まれます。
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【教えていただいた方】

防衛医科大学校卒業。2011年に仙台市にて、医療法人モクシン堀田修クリニックを開業。認定NPO法人日本病巣疾患研究会理事長。IgA腎症・根治治療ネットワーク代表。日本腎臓学会功労会員。2001年、IgA腎症が早期の段階であれば扁摘パルス療法により根治治療が見込めることを米国医学雑誌「AJKD」に報告。その後は同治療の普及活動と臨床データの集積を続ける。また、扁桃、上咽頭、歯などの病巣感染(炎症)が引き起こすさまざまな疾患の臨床と研究を行う。監修本『慢性上咽頭炎を治せば不調が消える』(扶桑社)など。ほかに著書多数。
イラスト/green K 取材・文/山村浩子


