股関節内転筋群をほぐし、股関節外転筋群を強化する!
特に現代の人は、床に座る姿勢が苦手な人が多いのではないでしょうか?
正座はもちろん、あぐらをかいたりぺたんこ座り(女の子座り)、体育座り、どれも長時間行うのは苦痛を伴います。
しかも、これらはどれも股関節や膝にとても負担がかかる姿勢なので、注意が必要だと高平尚伸先生。
「特に、あぐらをかいたり、脚を組むと痛む人は、股関節を外旋するのが苦手です。外旋とは、大腿骨(太ももの骨)を長軸として、足を外側に回転させる動きです。つま先を外側に向けるような、いわば『がに股』の状態です。
このような人は、股関節内転筋群が拘縮して、股関節外転筋群の筋力が低下しています。
股関節内転筋群とは、脚を内側に引き寄せる働きをする筋肉の総称で、恥骨筋、短内転筋、長内転筋、大内転筋など、太ももの内側にあります。ここの筋肉が硬くなっていると、脚を外旋させる動きがしにくくなります。
股関節外転筋群とは、足を外側に開くときに働く筋肉の総称で、中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋など、お尻部分にあります。主に、歩くときや階段を昇り降りする動きにかかわっています。
こんなタイプにおすすめなのが『脚パタパタストレッチ』です」(高平尚伸先生)
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「脚パタパタストレッチ」で股関節の内側の筋肉をほぐす
「股関節を外旋するのが苦手な人は、股関節内転筋群が拘縮しています。また、4大筋膜(ファシア)ラインでいうと、特に体の側面を覆うラテラルラインが拘縮しているか弱っているので、ここを意識してストレッチするといいでしょう。
※4大筋膜(ファシア)ラインについては第3回参照。
※ぺたんこ座りが苦手な人のストレッチは第8回参照。
【脚パタパタストレッチのやり方】
【1】 あお向けで膝を立てる
床にあお向けになり、両膝を閉じたまま立てます。両手は自然に床に置きます。
【2】両膝をパタパタさせる
両足の裏を合わせ、両膝を左右にゆっくり開き、限界まできたら20秒キープ。ゆっくり元に戻し、【1】の姿勢に戻します。これを10~15回繰り返します。これを、1日3セットを目安に行います。
床に横になったときに、腰が反らないように気をつけます。最初は両膝があまり開かなくても、痛まない範囲でOK。無理をしない程度に限界まで開き、脚の付け根の内側が気持ちよく伸びているのを意識するのがポイントです。
硬くなった股関節内転筋群をほぐし、外転筋群を強化するのに役立ちます。
【ストレッチの5つの注意点】
〇硬い関節を無理に伸ばさない
各関節には可動域があり、個人差もあります。無理やり伸ばすと思わぬ痛みを発症することがあります。
〇呼吸を止めない
呼吸を止めると筋肉が硬くなり、ストレッチ効果が薄れます。自然な呼吸をしながら行いましょう。
〇強く反動をつけない
小さな動きから始めていくことが大切です。反動をつけると関節に無理な負荷のかかることがあるので注意が必要です。
〇いきなり行わない
体が冷えた状態だと関節がうまく動きません。あらかじめ体を軽く動かして、筋肉を温めておくことが大切。お風呂上がりに行うのもよいでしょう。
〇やりすぎない
やりすぎると筋肉や関節を痛めることがあります。決められた回数やタイミングを守って、無理のない範囲で行うことがとても大切です。痛みを感じたときには中止してください。
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【教えていただいた方】

北里大学大学院 医療系研究科整形外科学教授。日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本リウマチ学会認定専門医および指導医、日本人工関節学会認定医。専門は股関節で、最小侵襲手術 (MIS)、運動器リハビリテーション、スポーツ医学に精通。著書に『股関節痛 こわばり・ だるさ・ 脚長差 自力で克服! 名医が教える最新1分体操大全』(文響社)など多数。

イラスト/green K 取材・文/山村浩子


