五感を使って、その感覚に集中するワークを紹介します。好き嫌い、良い悪いなどの評価や感想は持たず、感覚をありのまま受け止めるのがポイント。これが、ストレス反応の原因となるストレッサーを手放す「マインドフルネス」の練習になります。最初からうまくはいかないかもしれませんが、コツは、“頑張りすぎず適当に”集中することです。
教えていただいたのは
伊藤絵美さん
Emi Ito
1967年生まれ。公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士。カウンセリングの専門機関「洗足ストレスコーピング・サポートオフィス」所長。クライアントへのカウンセリングのほか、企業研修やセミナー、ワークショップを積極的に開催。『セルフケアの道具箱 ストレスと上手につきあう100のワーク』(晶文社)など著書も多数。
五感を使うとマスターしやすい「マインドフルネス」
最近、よく耳にする「マインドフルネス」。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、メンタルヘルスや仏教、ビジネスの世界などでも、ストレスケアの技術としてにわかに注目されています。
国連でも、職員に指導しているとか。でも、そもそも、マインドフルネスってなんでしょう?
「自分が今、体験していることに気づきを向け、評価や判断を加えずにそのまま受け止めて、味わい、そして手放すことです。ポイントは『評価や判断を加えない』という点。好きも嫌いも、良いも悪いも感じてはいけません。『ふ〜ん』とただ受け止めるのです。
このマインドフルネスを習得できれば、ストレッサーに気づいても不快に感じることなく、『ふーん、今の私のストレスってこうなっているんだ』と客観的に眺めることができます。ただ、マインドフルネスは誰でもすぐ簡単にできるものではありません。何しろ、不快なものも不快と思わずに受け止めなくてはならないのですから。
まずは、今回から5回に分けてご紹介するいろいろなワークで練習してみましょう。特に自分の五感を使う練習はとても手軽にできる方法なので、おすすめです」(伊藤絵美さん)
※1回目「触る」2回目「嗅ぐ」3回目「見る」4回目「聞く」5回目「味わう」
自分の思考に意識を持って行かれないよう、目の前のことに集中する習慣をつけましょう。ただし「適当に集中する」こと。頑張りすぎると続かないので、楽に構えて、できそうなワークにチャレンジしてみてください。
1回目は、「触る」です。
「触る」
いろいろなものの感触を確かめる
身のまわりにあるいろいろなものの表面に触れて、触った感覚に意識を向けます。机の上に手を置いて「冷たい」「表面がつるつるしている」などの感触を感じます。「冷たくて嫌だな」というのは感想が混じっているのでNG。
ただただ感触だけに集中するのがポイントです。まわりに何もなければ、自分の体や身につけているものに触ってみましょう。
イラスト/雨月 衣 指導・監修/伊藤絵美(洗足ストレスコーピング・サポートオフィス) 構成・原文/蓮見則子