更年期症状が出るメカニズムについて、婦人科医で女性の更年期のスペシャリストである小山崇夫先生に教えていただく第2回。
今回は症状に個人差がある理由をお聞きしました。
つらい症状が出る仕組みを知るだけで、不調が改善!?
なぜ、更年期症状の強さや現れ方に個人差があるかというと、
「卵巣機能の低下という直接的な原因に加え、その人の気質や、置かれている環境が複雑に絡み合っていると考えられます。
例えば環境要因は人間関係の問題。職場や隣近所、家族との関係がハッピーでない人は症状が出やすいということですね。
でも、カウンセリングで更年期のメカニズムを説明すると、それだけで不調が軽くなる人が多いんですよ」
また、この時期、心療内科などを受診して、抗うつ剤を処方されることが、問題をさらに大きくしてしまうと言います。
抗うつ剤を飲み続けると、更年期というシンプルな原因を隠してしまうからです。
また、多数の症状があるからといって、頭痛は脳外科、動悸は内科…と複数の科を受診すれば、薬の量も医療費もかさみ、原因がわからないまま数年が経過してしまうことも。
婦人科を受診して、HRT(ホルモン補充療法)を始めたらすべて解消されたというのもよくあるエピソード。
更年期の不調かも、と気づいたら、まず最初に婦人科へ行くのが理想です。
女性ホルモンは誰より働き者だった!
最後に、女性ホルモンの役割について知っておきましょう。
【女性ホルモンのおもな役割】
- 肌の潤いを保つ
- 髪のツヤを保つ
- 女性らしい体をつくる
- 骨を強くする
- 血管をしなやかに保つ
- 物忘れを予防する
- 自律神経を正常に保つ
- 動脈硬化を予防する
- 代謝を促して肥満を予防する
- 悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす
女性ホルモンは、想像以上に働き者。
美容と健康に関するあれもこれも、「そーんなことまでやってくれているのね!」と思わず感謝したくなるほどです。
上のような役割をしている女性ホルモン、更年期にはこれが減少していくのですから、いろいろな支障が出てくるのは当たり前。
骨粗鬆症、動脈硬化、脂質異常症(悪玉コレステロール・中性脂肪の増加)、尿もれ、もの忘れ…それらのリスクが高まります。
一見、老化や生活習慣病と片づけがちですが、女性ホルモン量の変化と関わっていることを理解しましょう。
更年期の不調だけでなく、深刻な健康問題に発展しないよう、生活習慣の見直しやセルフケアにも力を入れていきたいものです。
小山崇夫
婦人科医。小山崇夫クリニック院長。
更年期と加齢のヘルスケア学会および日本サプリメント学会理事長。
専門は内分泌(ホルモン)で、特に女性の更年期に詳しく、日本のHRTの第一人者。
著書に『遺伝子を調べて選ぶサプリメント』『女性ホルモンでしなやか美人』(ともに保健同人社)、
『40歳であわてない!50歳で迷わない!もっと知りたい「女性ホルモン」』(角川学芸出版)など