多くの女性がつらい症状に悩む更年期。
そもそも更年期には、なぜいろいろな症状が出るのでしょうか。
更年期が起こるメカニズムついて、婦人科医で女性の更年期のスペシャリストである小山崇夫先生にうかがいました。
美と健康の守り神、女性ホルモンがなくなる!
女性ホルモンには、「エストロゲン」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の2種類があります。
一般的に女性ホルモンと言えば、ご存じエストロゲン。
女性の美と健康に、とても大きな影響を与えているほうです。更年期には病的な不調が先に取り上げられがちですが、実際問題、まず誰もが更年期に感じるのは美容面の変化でしょう。肌の乾燥やシワ、体のあちこちのたるみ、ボディラインのくずれ、髪の弱り具合…、これ全部、女性ホルモンが減ってしまった証拠。
しかも、更年期には肌だけでなく目も口も女性器も、全身が乾燥します。太りやすく痩せにくくなります。骨量が減って骨粗鬆症になりやすくなります。これもみんな女性ホルモンが少なくなったせい。
女性ホルモンの分泌量は、一生分を集めてもわずかティースプーン1杯程度なのに、この働きっぷりは、おみごとというしかありません。
さて、更年期特有の不快な症状と言えば、一般的に多汗やホットフラッシュが代表的と思われています。でも実際は千差万別。同時にいくつものはっきりとした症状を抱えている人もいれば、説明できない心身の不調に悩まされている女性も多いものです。
「日常生活に支障をきたすほどの状態(更年期障害)」が現れる人は2〜3割ですが、何らかの症状を感じている人は9割もいて、そしてその症状はバラエティに富んでいます。不眠、頭痛やめまい、ドライアイ、手指のこわばり、あちこちの痛み…など、婦人科系とは一見関係がなさそうな症状をはじめ、あまりにも多岐にわたる種類の不調です。
そもそも、卵巣の機能が低下して女性ホルモンが少なくなると、どうしてさまざまな症状が現れるのでしょう?
更年期には「脳」がパニック! 諸症状が出るのはそのため
「それは、脳が混乱してしまうためです。
脳は卵巣が老化していることに気がつかず、女性ホルモンを出せ出せと信号を出し続けます。卵巣が全然応えてくれないので、脳はパニックに陥るんです。
脳は全身を司っていますから、さまざまな機能に支障をきたします。特に自律神経系に影響することでホットフラッシュや動悸、めまいなどが起こります。イライラや不安感、疲労感などの症状が出るのもそのため。
長年この年代の女性を診てきた経験からすると、身体症状よりも精神症状、“うつ気分”を訴える人が多いですね」
では、症状の強さや現れ方に、個人差があるのはなぜなのでしょう。
次回は、その理由を解き明かしていきます。
小山崇夫
婦人科医。小山崇夫クリニック院長。
更年期と加齢のヘルスケア学会および日本サプリメント学会理事長。
専門は内分泌(ホルモン)で、特に女性の更年期に詳しく、日本のHRTの第一人者。
著書に『遺伝子を調べて選ぶサプリメント』『女性ホルモンでしなやか美人』(ともに保健同人社)、
『40歳であわてない!50歳で迷わない!もっと知りたい「女性ホルモン」』(角川学芸出版)など