取るか取らないかで悩む子宮筋腫も、閉経移行期であればさらに悩みどころがいっぱいです。治療法の選択肢が増えているので、医師の意見も分かれるところ。自分の考えをしっかり持つことが大切。いわゆる「逃げ込み療法」は、経験豊富な医師との連携プレーでこそ成功します。
治療の選択肢が増えた分、最後に決めるのは自分自身
子宮筋腫を持っている人、あるいは見つかった人、まずはどんな治療法があるのかを理解することから始めて。
●閉経前後の子宮筋腫■治療チャート
40代以降で妊活中の人は、子宮の温存が条件になるため、不妊治療と子宮筋腫の治療、両方に詳しい医師に巡り会うことが理想。筋腫の状態を細かに把握し、起こりうるリスクを一緒に考えながら、限られた期間を有意義に
●子宮筋腫と診断●
- ◆GnRHアゴニスト(スプレキュアなど)
注射薬や点鼻薬でGnRHを抑え、偽閉経状態に - ◆GnRHアンタゴニスト(レルミナ錠)
下テーマにてご紹介します - ◆黄体ホルモン放出システム(ミレーナなど)
過多月経に適用。ただし粘膜下筋腫には禁忌 - ◆LEP製剤(低用量エストロゲン・黄体ホルモン配合剤)
低用量ピルのこと。保険では月経困難症適用
筋腫は“逃げきる”時代に⁉
注目されるGnRHアンタゴニスト「レルミナ錠」とは?
2019年3月、偽閉経療法に新しく登場した「GnRHアンタゴニスト」。「レルミナ錠」という飲み薬です。
素早く女性ホルモンを下げ、症状緩和と筋腫の縮小効果が画期的だと称賛されています。やはり保険で処方できるのは6カ月で、続ける場合は自費に。
医師が一人一人の状態に合わせ服用指示をしていきます。
手術をしたくない人のためにあの手この手の薬物療法
子宮筋腫は、できることなら手術をしないまま閉経を迎えたい、と望む人が多いもの。筋腫を小さくするにはホルモン値を下げたい、でもホルモン値を下げて更年期の症状が出るのは困る…というジレンマに陥ることに。
「最近、よく使われているのが月経を止める偽閉経療法。副作用として更年期の症状が出たり骨粗しょう症のリスクが上がってしまうので、ホルモン値や子宮の状態、出血の期間などを管理して、薬をマイルドに減らしていったりするんです。マニュアルがあるわけではないので、さじ加減は医師の裁量ということになりますね」(八田真理子先生)
「偽閉経療法で更年期様の症状が出た場合には、アドバックという方法も。月経を止めながらもエストロゲンを少し補うんです。ホットフラッシュだけなら漢方薬でもいいし、一人一人オーダーメイドでいろいろな薬を組み合わせます。快適なまま自然に閉経に持ち込めるといいですね」(対馬ルリ子先生)
筋腫を縮小する「偽閉経療法」
薬を使って女性ホルモン(エストロゲン)値を下げ、月経を止めるのが偽閉経療法。保険での使用は6カ月と決められていて、閉経が近い人はそのまま自然閉経を待ちます。
使う薬は「GnRHアナログ製剤」。GnRHとは脳から分泌される性腺刺激ホルモン放出ホルモンのこと(■ 知ってる? 閉経前後に病気や不調が集中する理由/女性のライフステージと病気(前)参照)。
従来はこのホルモンを注射や点鼻薬で抑え、偽閉経を保つ「GnRHアゴニスト」が使われていました。医師にとって偽閉経療法はホルモン値の管理もジャッジも容易ではなく、患者にとっては飲み薬でないこともハードルを上げていたようです。
お話を伺ったのは
対馬ルリ子さん
Ruriko Tsushima
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長。産婦人科医、医学博士。女性の生涯にわたる健康推進活動に積極的。『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が大好評。
ホームページはコチラ
八田真理子さん
Mariko Hatta
産婦人科医。1998年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』 (アスコム) など。
ホームページはコチラ
イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子