更年期症状の改善のためにHRT(ホルモン補充療法)を受けたい。でも子宮筋腫がある場合、HRTにより筋腫が大きくなったり症状が悪化してしまう危険があります。そんな状況の解決策として考えられるのが子宮を全摘出するという選択肢。そのメリットとデメリットとは? 前回に引き続き、OurAgeで実施した子宮筋腫についてのアンケート(※)の疑問や悩みに対して、専門医にアドバイスをいただきました。
※2021年12月1日~2022年1月5日に実施したOurAgeアンケートに1011人が回答。回答者の平均年齢は48.9歳。
HRT(ホルモン補充療法)を受けたいから「子宮は取る」という選択肢も!
◆閉経前後なら、子宮は取る? 残したい?
40代で妊活している人は別として、子宮が妊娠の役目を終えたのであれば、子宮全摘に対する考えを改めてみませんか。全摘出するメリットとデメリットを挙げてみると、どうしてもメリットが多くなります。
なかには「妊娠するリスクがなくなったから、セックスが楽しめる!」と考える人もいるほどです。
全摘出するメリット
- ● 月経がこなくなり、過多月経や月経不順から解放される
- ● 子宮筋腫の症状が完全になくなり、再発の心配がない
- ● 子宮筋腫だけ摘出するより、手術時の出血量が少ないことが多い
- ● 子宮がんになるリスクがなくなる
- ● HRT(ホルモン補充療法)が受けやすい
全摘出するデメリット
- ● 妊娠する可能性がなくなる
- ● 気分的に喪失感が残る人もいる
Q 子宮を取ると、更年期のような不調が出ますか?
女性ホルモンを分泌しているのは卵巣です。卵巣をふたつとも摘出すればホルモンが急に出せなくなり、不調も現れます。でも、子宮はホルモンを出さないので取ってもホルモンに影響が及ぶことはなく、症状も出ません。
もし出るとしたら、なくなったという喪失感からくるストレスによるものかも。子宮は赤ちゃんを育てるための子袋なので、なくても大丈夫、と発想を切り替えてみませんか。
Q 子宮を取ったら性生活に支障はありますか?
結論から言うと、性行為に支障はありません。子宮を全摘出すると腟の奥が塞がれ、行き止まりになります。
例えばパートナーとの性交において、子宮頸部の性感がとても大事だったのであれば、支障がないとはいいきれません。
ただ、基本的には子宮がなくなっても大丈夫な人が多いものです。子宮腟上部切断術であれば、性感は変わりません。
Q 子宮全摘することになりました。術後、内臓はどうなるの?
もともとの子宮の大きさは鶏卵ほど。筋腫ができたことにより、こぶし大、あるいはグレープフルーツ大に大きくなっていたとします。たとえそれを摘出しても空洞ができるわけではなく、もともとあったはずの腸が自然に戻ってきます。
「空洞ができて、胃などの内臓が下に落ちてくる」と思っている人もいるのですが、それもあり得ません。
お話を伺ったのは
対馬ルリ子さん
Ruriko Tsushima
1958年生まれ。対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿理事長。産婦人科医、医学博士。女性の生涯にわたる健康推進活動に積極的。『「閉経」のホントがわかる本 更年期の体と心がラクになる!』(集英社)が大好評。
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八田真理子さん
Mariko Hatta
産婦人科医。1998年、千葉県松戸市で女性のためのクリニック「ジュノ・ヴェスタクリニック八田」を開業。著書に『産婦人科医が教えるオトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』 (アスコム) など。
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イラスト/かくたりかこ 構成・原文/蓮見則子