福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 特任教授。日本産科婦人科学会・日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医・指導医。専門は更年期医療学、女性心身医学、女性ヘルスケア。相談やカウンセリングを中心としたケアサポートとともに、最新のテクノロジーや視点を取り入れて、更年期を取り巻く環境や文化を積極的にアップデート。
始まりは頭痛&めまい。
HRT(ホルモン補充療法)各種を試しました
激しい頭痛が心配になり、脳の検査を受診
初めに「おかしいな?」と感じたのは、閉経前の49歳頃のこと。講演を行っている最中に、今までなかったような強い頭痛に襲われました。その後も緊張すると頭痛がたびたび起こるようになり、頭痛薬を飲んでも全然効かず。「このまま仕事を続けられるのだろうか」と不安になり、父が脳卒中で亡くなっていることもあって脳の検査を受診したところ、結果は異常なしでした。
次にやってきた不調はめまいです。でもそのときは「これは更年期症状だ」とは思わず、何が起きているのかよくわからなかったですね。産婦人科医になり、早いうちから更年期外来にかかわっていたので、知識はあると思っていたのですが…。自分が更年期の症状に悩まされているのだと気づくまでには、時間がかかりました。その後、ほてりや閉経前の月経不順が出てきたので、ようやく自覚するに至ったのです。
HRT(ホルモン補充療法)は貼っても塗っても効果の差は感じなかった
現在54歳で、更年期の後半ぐらいかなというところ。不調が完全になくなったわけではありませんが、頭痛などは薬に頼ることは少なくなりました。ほてりなども落ち着き、調子はいいです。それはきっと、更年期症状に気づいたあと、さまざまな種類のホルモン補充療法(HRT)を試したからではと思います。
以前から、患者さんに出す薬などは本当にいいのか確認したい思いがあり、ピルも飲むとどうなるのか、自分で飲んで試しました。HRT(ホルモン補充療法)も同様、貼り薬の「メノエイドコンビパッチ」や「エストラーナ」、錠剤の「ジュリナ」、天然型黄体ホルモン、塗り薬の「ル・エストロジェル」など、新しいものが出るたびに試しました。
「メノエイドコンビパッチ」は閉経前後の女性は少量の出血が続くとか、「プレマリン」と骨粗しょう症治療薬「ビビアント」の組み合わせはあまり出血がないなど、いろいろなことはわかりましたが、体感としては、「効果は同じ」。
年齢や症状によっては、「経皮投与のほうが錠剤よりも血栓症のリスクが低い」という決定的な違いがあるので、そこは注意が必要ですが、それ以外はライフスタイルや好みで選んでよいのではと思います。
私が今使っているのは、塗り薬の「ル・エストロジェル」。血中濃度が不安定にならないように、一日一回、必ず決まった時間に塗布するようにしていますが、今後も続けていく予定です。
併せて検診についても、乳がん検診と子宮がん検診、血液検査は年に一度、欠かさずに行っています。
不調は、「無理をしないで」というシグナルだと思って
これから更年期を迎える方、真っただ中の方は不安も大きいと思いますが、悪いことばかりではありません。私も女性ホルモンの揺らぎが安定し、感情面についても以前より穏やかに過ごせるように。あまり無理をしないようにもなりました。更年期症状は、頑張り屋世代に向けた「いったん立ち止まって」というサインかもしれませんね。
更年期の不調は治療ができるので、ぜひ婦人科の門をたたいて、相談をしてほしいと思います。
MY更年期STORY
49歳の頃、仕事中に激しい頭痛に襲われる。その後も緊張すると頭痛が起こるようになり、頭痛薬を飲むが効かず。脳の検査では異常なし。同時にめまいも起こり始める。半年後にほてり、月経不順があり、更年期症状だったと気づく。さまざまな種類のHRT(ホルモン補充療法)を試し、症状が軽減。54歳の今も、HRTは継続中。
構成・原文/井尾淳子