絵梨さん(仮名) 49歳・専門職
【HISTORY】
■23歳〜28歳:職場のストレスから無月経となり、薬を服用して治療
■40歳:体調不良の日が増え、精神的に不安定なことも多くなる
■45歳:生理周期が不安定になる。夫婦で東京から北海道へ移住
■47歳:原因不明の腹痛が続き、いくつかの病院を転々とした後、婦人科で腟カンジダと診断される。血液検査で閉経間近であることが判明し、HRTを開始
40代になってからメンタルや体調にさまざまな変化が
40歳を過ぎた頃から、体調のすぐれない日が増えたという絵梨さん。周囲からの指摘で、自身のメンタルの変化にも気づいたそう。
「ある日、同僚が『最近、なんだかつらそうだけど大丈夫?』と声をかけてくれて。自覚はなかったのですが、言われてみれば急に悲しくなったり不安になったり、精神的に不安定になっていたかも…と気づいたんです。でも、当時は“年齢やストレスのせいかな”とあまり気にしていませんでした」
その後、45歳頃から生理周期が不規則になり、およそ2カ月に1度のペースに。体調に異変が起きたのは、47歳のときでした。
「2カ月おきにきていた生理がこなくて、“閉経が近いのかな”なんて思っていたら、肋骨から脇腹にかけてシクシクと痛み出しました。その症状自体は若い頃からあって1〜2週間もすれば治まっていたのですが、そのときは1カ月たっても痛みが引かず、鎮痛剤も効かない状態。内科や泌尿器科などいくつもの病院を受診しましたが、原因はわからずじまい。同じ頃、変な色のおりものが続いていたので、もしかしたら婦人科系の病気かも?と婦人科を受診しました」
訪れた婦人科で腟カンジダ(カンジダ症)と診断され、治療するうちに腹痛も解消。ところが、血液検査の結果、数値が高いほど閉経が近いことを示す「FSH(卵胞刺激ホルモン)」の値がかなり高いことがわかりました。
「二度見してしまうくらい高くてびっくりしました。ただ、当時は自分なりに『OurAge』の記事や美容家・吉川千明さんの本などで更年期について調べていて、“自分もそろそろかな”と覚悟していたのでショックはなかったですね。医師のすすめもあって、そこからHRT(ホルモン補充療法)を始めました。昔は『HRTは乳がんのリスクが高まる』というイメージがあったけれど、今はそのリスクも低いとわかったし、むしろメリットのほうが大きいと思ったので迷いはありませんでした」
HRTを開始して数カ月で、気持ちがみるみる前向きに
現在は、1日おきに貼り替える貼り薬(エストラーナテープ)と、黄体ホルモン製剤の「エフメノカプセル」を併用しています。
「当時は何をするにもしんどくて、人に会ったりおしゃれをしたりする気にもなれませんでした。ところが治療を始めて2〜3カ月たった頃から、自分でもわかるくらい気持ちが前向きになったんです。そして、年齢のせいだと思っていた手のこわばりもすっかり消えました」
肉体的にも精神的にも落ち着きを取り戻したとはいえ、頭痛や肩こり、腰痛、目の乾きといった小さな不調は今も継続中。
「ホットフラッシュやめまいはないけれど、絶好調といえる日が少ないのも事実です。でも、他人と比較しても仕方がないので、あまり気にしないようにしています。それから、何でも病院の先生任せにしないよう、自分でも更年期の対処法やセルフケアを調べて実践しています」
絵梨さんが情報収集やセルフケアの重要性を意識するようになった大きなきっかけは、2020年に移住したことでした。
「夫婦で東京から北海道へ移住したのですが、まず驚いたのが病院の少なさでした。私たちが暮らす地域には婦人科がないので、今はふたつ隣の街まで通っています。婦人科はどこの街にもあるものだと思っていたけれど、地域によっては選べる状況にないんですよね。だからこそ、自分でケアできることは実践しなきゃと思って」
更年期不調改善のため、好きな香りを取り入れて自分をいたわる
普段からバランスのいい食事を心がけ、毎日1時間〜1時間半のウォーキングを実践していた絵梨さん。更年期の体調ケアのために、睡眠と規則正しい生活リズムも意識するようになったといいます。
「夜勤が週1〜2回ある仕事でしたが、体調を整えるために夜勤から外してもらいました。若い頃は、ハードワークで眠れない自分に酔っていたけれど、睡眠を意識するようになって昼夜逆転の生活がいかに体に負担だったかという当たり前のことに気づけたし、体の調子もよくなっている気がします」
スキンケアやバスタイムに使うアイテムは、好きな香りのものにスイッチ。
「日々の積み重ねで自分をいたわりながら、小さな不調を解消していけたらいいなと。柑橘系の香りが好きなので、スキンケアは『N organic』を中心に、ヘアケアは『ザ パブリック オーガニック』を愛用しています。昔は、更年期=女性じゃいられなくなるというイメージから、更年期の話題はなんとなくタブー視されていましたが、今はオープンに話せる時代だし、情報収集もしやすくなってありがたいなと感じます」
HRTを始めて2年がたった今、絵梨さんが悩んでいるのは「HRTのやめ時」について。
「婦人科の先生からは、『HRTをやめるのもやめないのも本人次第』と言われているので、自分で判断しなければならないことに不安があります。骨粗しょう症予防も兼ねて、あと10年は続けようと思っていますが、年齢によって薬の種類を切り替えたほうがいいのかどうかわからなくて。女性の先輩たちがHRTを続けている理由や、薬を替えた・やめたタイミングや理由について知りたいなと考えているところです」
イラスト/白ふくろう舎 取材・文/国分美由紀
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