スタンダードから始めよう!まずできることから。
最近では、膣まわりの治療や若返りに新しいレーザー機器が次々と開発され、最新機器を導入する婦人科や泌尿器科のクリニックも増えてきました。しかし、「うちの家の近くにはない。」「予算がない。」など、まだまだ導入しているクリニックが都市部に集中していることや、自費診療の範疇で、それなりにお金がかかることなどを考えて、本日は、日本中どこでも実行可能で、データもある膣ケアについてお話ししたいと思います。
「老化」とは、乾いて硬くなること。
膣の萎縮と乾きは、放置していても良くはなりません。進む一方です。
萎縮と乾きは、痒みや痛み、匂い、尿もれや頻尿、つらい性交痛の原因になります。
ひび割れの放置は、さらなる劣化に繋がります。
原因は女性ホルモンの低下。細い棒さえも入らなくなる。
40代、更年期以降の女性ホルモンの低下によって、膣の粘膜は薄くなり、乾燥、萎縮し、もろく傷つきやすくなります。ヌルヌルすべすべだった膣粘膜は渇き、膣は閉塞し、人によっては、子宮頸がんや子宮体がんの検査に挿入が必要な細い棒さえも入らなくなります。閉塞された水路を想像してください。衛生的にも問題が生じます。高齢になった時に膣内環境が良いように今から始めたいと思います。
これからの膣のトラブル対策は「産婦人科」と「自宅ケア」の二本立て。
「膣が乾く」「膣壁が薄くなり血が滲む。」「性交痛がつらい。」「ニオイがきつい。」これらは十分に産婦人科に通う理由になります。思わぬ病気が見つかることもあります。かかりつけておくことは、色々なメリットありなのです。それと家でするセルフケアを組み合わせます。
すぐにできる膣の乾燥萎縮対策ベスト4
① 膣だけに効かせるホルモン補充「エストリオール膣錠」は財布に優しいだけじゃなく、素晴らしく優れもの。
実は、女性ホルモンの主役であるエストロゲンには種類があります。E1、E2、E3と番号がついています。卵巣から分泌され、強力なパワーを持ち、閉経とともになくなるのがE2、副腎や脂肪細胞から分泌されているのがE1、そして、E1とE2から作られるのがE3。
このE3に注目します。エストリオールと言いますが、とてもマイルドで優しいタイプの女性ホルモンで、膣剤にして使うと、子宮頸部と膣の粘液を増やし、膣内を清浄に保ちます。膣粘膜細胞の生成を促進し、萎縮を改善してくれます。子宮内膜を増やす心配もほぼなく、膣だけに、局所に、安全に効果的を発揮させることができる女性ホルモンです。長い歴史もあり、産婦人科ではポピュラーな治療法です。元々「老人性膣炎」の治療薬なので、年齢がいっても長く使えるのです。
全身のホルモン補充療法(H R T)はやりたくないという方でも膣局所なら抵抗が少ないのではないでしょうか。そしてターゲットが!絞られているので、よく効きます。メリットが多く、デメリットが少なく、膣のことで困っている人にはとてもおすすめです。
乳がんなどご病気をして、女性ホルモンを止める治療をしている方にも使える可能性があります。主治医の先生に相談なさってみると良いと思います。エストリオールの膣錠は、エストリールとか、ホーリンVというお薬名で出ています。処方薬なので、産婦人科の先生の診察の元、出してもらってください。
このお薬、エストリオールの膣剤の薬価は1日分20円前後。保険適応3割負担で1ヶ月分のお薬代がコーヒー1杯分以下とは。ご高齢になっても役に立つ薬です。もっと知られて欲しいなと思います。
写真はエストリール膣錠0.5mg。こんなに小さい!
② 顔用、ボディ用の流用はN G。膣専用の保湿剤や潤滑剤を使いましょう。
膣に使える保湿ジェルや性交痛対策の潤滑剤の使用をお勧めします。外陰部に使えるものはたくさんでていますが、膣内に使えるものはまだまだ少ないような気がします。香料などを含まず、できるだけシンプルな処方で、安全を一番に掲げ、保湿を一番の目的にしたものを選んでください。最近は、膣内環境を整える乳酸菌を配合したジェルなども出ています。産婦人科で扱いがあると思います。
写真は、私が使っているものです。データをしっかりとっているブランドのものを選んでいます。世界113カ国で使われ、イギリスの産婦人科では処方箋で出されているものです。石油由来成分を使わず、グリセリンフリーです。グリセリンは、肌には良い原料ですが、粘膜には刺激になるからです。写真左は膣の保湿用ジェル。右はサラサラとした粘液のような性交痛対策専用ジェル。使い分けます。舐めても、口に入っても良い成分でできています。
写真は、アワエイジの最近のコラムでも書きましたが、外陰部の保湿に使う「ホホバオイル」です。ジェルが手に入らない方は、ホホバオイルを膣の保湿に使っても良いと思います。主成分のワックスエステルは人の体が本来持っている保湿成分です。余計なものが入っていないピュアなホホバオイルをお探しください。
こちらの記事も参考ください。
③ 膣が狭くなっているなら、広げる努力を!
長い間、定期的に使用していなかった。または、ご病気の治療が元で、膣がとても狭くなってしまっている場合があります。放置するとさらに狭くなってしまい、検診や診察もできなくなってしまいます。「ダイレーター」と呼ばれ、膣を少しづつ、元の長さ深さに戻していくものです。少しづつ元に戻るように練習していくものです。①の膣のホルモン補充や②の保湿潤滑ジェルと組み合わせてお使いになると良いと思います。産婦人科でも取り扱っていると思います。
写真は、ダイレーター。海外では一般的ですが、日本ではあまり知られていません。このダイレーターは産婦人科でも扱われています。通販でも探せます。
ダイレーターでなく、膣トレボールを代用してもいい!
また、ダイレーターまではいかないが、膣を狭くしたくない方には、膣トレボールもおすすめです。尿もれ対策や骨盤底トレーニングのために使う、膣トレボールをダイレーターの代わりに使っても良いと思います。膣トレボールも色々なものが売られていますが、体の中に入れるものですので、アレルギーを起こしにくい、素材の安全性をしっかりうたっているものをお選びください。
私の使っているドイツ製の膣トレボールです。私は、夜の歯磨きの時、鏡の前にいる15分間、立ったまま膣内にボールをホールドしています。これなら皆さんにもできると思います。保湿ジェルを塗ったものを使います。私が発明した!保湿も兼ねる便利な使い方です。
④ 膣環境を整える「膣用サプリメント」も有益です。
膣内は、乳酸菌が環境を守っています。膣に入れるものを吟味するのも乳酸菌が働く環境を悪化させないためでもあります。年齢とともに、菌のバランスが崩れ、善玉菌が減り、悪玉菌が増え、膣の免疫力を落とす原因になります。
膣により良く働く乳酸菌の種類は、腸内細菌よりもぐっと種類が少なく限定されています。膣内環境に効果が実証されている乳酸菌を「口」から「サプリメント」で摂りましょう。口から腸、直腸、肛門、そしてデリケートゾーン周りへ乳酸菌は効果的に移動していきます。尿と膣と肛門と便、これらの問題は、高齢になり、その最後まで、深刻な問題ですが、プロバイオティクスという目に見えない微生物の応援で、Q O Lが良くなるなんて!本当に喜ばしいはなしです。
写真は私が摂っている膣用乳酸菌サプリメントです。デンマークのクリスチャン・ハンセン社のUREX®という膣に良いとデータが出ている2種類の乳酸菌「GR-1」と「RC-14」が配合されています。UREX®は他社でも扱っていると思います。探してみてください。信頼できる乳酸菌です。
⑤最新レーザーだってトライしていい!
まずやってみて、それでも解決しなければ、レーザーや最新の機器もトライしてみると良いと思います。お顔に当てる美容医療のレーザー機器と同様、粘膜の深層から自らの力で、うるうる、ぷるぷる、潤いと弾力ある粘膜を作り出すことができます。数ヶ月から半年、長くて1年。持続期間はまちまちですが、効果は消滅しますので、繰り返し行います。
お金はかかるものですが、自分の何に費用や時間をかけるかは、その人なりで良いと思います。諦めていたことに希望の光が見えるのは良いことです。
最後に。やはり温活。
どんな時でも冷えはよくありません。最近は、デリケートゾーン用の温熱シートも売られています。お腹もそうですが、かつて生理ナプキンを当てていた辺り、温めてあげてくださいね。
「更年期から始めるシニアケア」、今日は、膣の乾燥と萎縮対策!を書かせていただきました。