女性ホルモンが減少する更年期に、乱れやすくなるのが自律神経。実はこれが更年期不調の大きな原因でもあります。でも、毎日の過ごし方次第で自分で整えることができるのも自律神経。不調の改善につながる「自律神経ケア」、ぜひ実践を!
お話を伺ったのは
梶本修身さん
Osami Kajimoto
1962年生まれ。東京疲労・睡眠クリニック院長。医学博士。医師。大阪大学大学院医学研究科博士課程修了。2003年より産官学連携「疲労定量化および抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者を務める。著書に『すべての疲労は脳が原因』(集英社新書)シリーズなど
更年期と自律神経の関係は?
更年期の不調と自律神経の関係について、医師の梶本修身先生に伺いました。
「私たちの体には、体をつねに安定した状態に保つ“恒常性”が備わっていますが、これは、①自律神経系、②内分泌(ホルモン)・免疫系というふたつの機能によって保たれています。
でも、更年期になると女性ホルモンの分泌量が急激に減るので、内分泌・免疫系の機能がガクンと落ちます。
すると体を安定した状態に保つのに自律神経系に頼らざるを得なくなりますが、自律神経系も加齢によって機能が低下するので、自律神経に過剰に負荷がかかります。このように内分泌・免疫系と自律神経系の機能低下がダブルで起こるのが更年期です。
そのため、ほてりやのぼせ、動悸、不眠、冷え、イライラ、肩こり、頭痛などといった自律神経失調症のような、さまざまな不調が起きるのです」
トータルパワーが大切!
「自律神経には、活動時に働く交感神経と、休息時に働く副交感神経があり、このふたつの活動量の合計が自律神経のトータルパワー。これは、呼吸・心拍・体温を細かく制御して体を安定させる力。
また“ばてにくさ”の指標でもあり、体力・持久力の高さも意味します。ですから自律神経で重要なのは、このトータルパワーなのです」
自律神経も老化する!
下のグラフのように自律神経のトータルパワーは加齢とともに低下。
「自律神経のトータルパワーは、10代をピークに右肩下がりで低下し、50代になると、20代の頃の3分の1にまで低下します。しかも一度低下すると回復しません。
だからこそ、40代50代以降はなるべく自律神経に負担をかけない生活を心がけたほうがいいのです」
年代別の自律神経のパワー
自律神経を錆びさせないコツは?
「交感神経が優位なときは、自律神経中枢の細胞がフル稼働。すると細胞内で活性酸素が発生して細胞が錆びつき、蓄積すると自律神経の老化が進んでしまいます。
これを防ぐには、激しい運動やハードワーク、ストレスなど交感神経を過剰に働かせることを避け、日中の自律神経への負荷を減らすことです。また、自律神経の疲労は睡眠中にしか回復しないので、夜は十分に睡眠をとることも大切です」
構成・原文/和田美穂