早期発見が難しく、自覚症状のない「卵巣がん」にどう対処する?
卵巣がんの罹患率は増加傾向で、更年期から増え始め、罹患のピークは50~60代。卵巣がんが怖いのは、サイレントキラーと呼ばれるほど、自覚症状がなく見つけにくいことです。
【閉経前後から要注意!卵巣がん、子宮体がん、子宮頸がんの罹患年齢分布】
↑グラフを見ると、子宮、卵巣のがんにかかりやすいのは、更年期世代からということがよくわかります。子宮体がんだけでなく、卵巣がんも更年期から増える、注意すべきがんです
出典/国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)2019年
卵巣がんの初期症状は、ほとんどないといわれていますが、自分で気づくことはできないのでしょうか?
「卵巣がんは、初期にはほとんど自覚症状がありません。腫瘍が大きくなると、服のウエストがきつくなる、下腹部にしこりが触れる、お腹が張る、不正出血、下腹部や腰の痛みなどの症状をきっかけに受診して、卵巣がんがわかることもあります。
また、がんが大きくなると、膀胱や直腸を圧迫し、頻尿や便秘が起きたり、脚がむくむことも。進行して腹水がたまると、大変苦しくなることもあります」(上坊敏子先生)
【卵巣がんの自覚症状】
参考資料/2021年9月「一般女性における『卵巣がん』に対する認識および知識レベルの把握、婦人科検診の受診状況の把握」アストラゼネカ実施「卵巣がんに関する意識調査」
早期発見しづらい卵巣がん。定期的な婦人科受診を
卵巣がんは、ほかの女性のがんに比べて治療成績が悪く、生存率の低いがんでもあります。怖さを少しでも回避するために、私たちはヘルスリテラシーを高めることが大事です。何か対策は、ないのでしょうか?
「残念なことですが、卵巣がんには、確実な予防法も検診法もありません。しかも、卵巣がんは進行が速く、診断も難しくて、卵巣を摘出して初めてがんと診断されることもあります。
ただ、有効性は不明ですが、閉経後も年1回は婦人科を受診して、経腟超音波検査で卵巣の腫れや腫瘍の有無を見たり、血液検査でCA125という腫瘍マーカーを調べることが役に立つかもしれません。CA125は卵巣がんのⅠ期で50%、Ⅱ~Ⅳ期で90%が陽性になります。
また特に、血縁者に卵巣がんや乳がんの人「がいたり、乳がんを経験したことのある人は、卵巣がんのリスクが高いことを自覚して、定期的な検診を受けましょう。けれども、経腟超音波検査やCA125による検診での、卵巣がんの診断精度は高くありません。検診で異常なしと言われても、気になる症状があれば、受診してください。
また、重要なことがあります。更年期以降、特に50歳以上や閉経後の卵巣腫瘍、40歳以上で大きくなる卵巣の子宮内膜症(チョコレート嚢胞)はがんの危険性が高いので、注意が必要です」
【こんな人は卵巣がんに要注意です!】
・妊娠、出産歴がない、少ない
・子宮体がん、乳がんの既往
・40歳以上で卵巣の子宮内膜症(チョコレート嚢胞)が大きくなっている人
・50歳以上や閉経後で、卵巣腫瘍がある人
・遺伝性乳がん卵巣がん家系(生涯卵巣がんリスクが40%以上)
・リンチ症候群家系(生涯卵巣がんリスクが12%以上)
【教えていただいた方】
北里大学病院教授、社会保険相模野病院婦人科腫瘍センター長を経て現職。産婦人科専門医、婦人科腫瘍専門医、細胞診専門医。著書に『新版 知っておきたい子宮の病気』(新星出版社)、『卵巣の病気』(講談社)ほか多数
【美加から今回のまとめ!】
更年期以降、特に閉経したら、婦人科への受診を怠りがちです。卵巣に腫瘍がある人はもちろんですが、腫瘍のない人も年1回程度の定期的な婦人科受診は大切ですね。
増田美加さん
Mika Masuda
女性医療ジャーナリスト。1962年生まれ。35年にわたり女性の医療、ヘルスケアを専門に取材。自身が乳がんに罹患してからは、がん啓発活動を積極的に行っている
イラスト/かくたりかこ 構成・文/増田美加