【答えてくださった方】
幅広い世代の女性の診療・カウンセリングを行う地域密着型クリニック「 聖順会 ジュノ・ヴェスタ クリニック八田」院長。著書に『思春期女子のからだと心 Q&A 資料ダウンロード付き』(労働教育センター)、『産婦人科医が教える オトナ女子に知っておいてほしい大切なからだの話』(アスコム)ほか。
♦雑菌が繁殖しやすい肛門。でも洗いすぎもNG
お尻のかゆみはよく聞く訴えですが、これ、とても難しいんですよ!
肛門周辺は血流が多いところで、アポクリン汗腺というにおいを発生させる汗腺も多いし、大腸菌にいつもさらされ、雑菌が繁殖しやすい場所でもあります。
ボディソープや洗剤の残り、トイレットペーパーや下着の接触や摩擦などによって、肛門周囲に物理的に炎症がある場合もあるでしょう。
便が通過するところなので、いくらきれいにしたつもりでも雑菌が残りやすいところなので、対処法としてはまず肛門周囲をきれいにすることなんですけれど。
だからといって頻繁に洗いすぎ、強く拭きすぎ、おしり拭きなどのケア用品を使いすぎるのもNG。
皮脂膜が減って皮膚のバリア機能が低下すると、かゆみを感じやすい皮膚になってしまいます。
そう、肛門のまわりに「かゆみセンサー」ができてしまうんですね。
かゆみを感じる感度が上がってしまい、少しムズッときたのをかゆい!と感じすぎるパターン。
かゆみには、発疹など皮膚に変化が起きていることが原因のものと、目立った異常がないのにかゆみだけがあるものがあります。
かゆみは、皮膚の表面に分布している神経から脳に伝わってかゆみ物質が作られるといいますが、まだ明らかになっていないことも多いんです。
ただのムズムズ感、モゾモゾ感だったものが、かゆみを感じてかいたり、かかないまでも紙でこすったり強く洗ったりすると、何もなかったところに傷ができて炎症を起こし、さらにかゆみを招いているのかもしれません。
トイレットペーパーで拭く場合は、決してこすらず、ポンポンと優しく押さえるように。
ちゃんと拭き取れないときは、便を出しきれていない可能性もあります。
♦便利な温水洗浄便座。でも使い方には注意
特にありがちなのは、温水洗浄便座(ウォシュレットなど)の使いすぎ。
特に強すぎる水流には気をつけて。
強くガーッとやる人が多いようですが、この刺激によって逆に粘膜が荒れたり、乾燥したりすることもあるので、優しい水流で洗いましょう。
さらには、温水を出す管の中だって雑菌だらけかもしれません。
温水洗浄を過信しないことです。
それから、痔によるかゆみもありますね。
痔核、いわゆるいぼ痔のことですが、特に内痔核(肛門の内側にいぼ痔ができている状態)がある場合です。
奥にあると表面積が増えるので、そこが洗えずかゆみの原因になってしまう。
「私は痔なんてない」と思うかもしれませんが、50代くらいになると内痔核を含め、痔がない人はいないんじゃないかな。
痔も全然恥ずかしい病気ではないので、かかりつけの婦人科で相談してくれていいんです。
ひどい場合は肛門外科を紹介します。
そもそも、お尻にとっていちばん大事なことは「快便」。
便通を根本的に改善しなければ、どんな薬を塗っても対策をしても再発してしまいます。
便秘をしないこと、下痢をしないこと。
特に朝は、ちゃんとご飯を食べて、時間に余裕を持ってきちんと排便をすること。
この排便コントロールができていない人が意外と多いと思います。
そして、お風呂。シャワーですませないこと。
きちんと湯船に入って温まり、骨盤やお腹の中の血流をよくすること。
そして、前回も言いましたが、きつい下着やボトムをはかないこと。
そしてそして。
肛門にとってもおりものシート、尿もれシートの使いすぎはよくありませんよ。
取材・文/蓮見則子