使いすぎている「咬筋(こうきん)&側頭筋」ほぐしで呼吸をしやすく!
「頭痛がする人、歯ぎしりやくいしばりの癖がある人は、首や肩を使って呼吸し始めています。口呼吸になっている人もいると思います。
嚙んでいれば一応頭部が安定するので安心できるのですが、その代わり肩や首の筋肉が硬直して、さらにそれらの筋肉を使って呼吸をするようになっていきます。そうすると交感神経優位な呼吸となり、さらに嚙む。嚙む筋肉をたくさん使えば、頭部への圧力が増して頭痛も起こり得る、という図式です。
このループを断ち切るためにも
まず“嚙む筋肉”をほぐしてみましょう。それだけで頭も顔もすっきりします。でも、きっと痛いと思いますよ!」と大貫さん。
何はともあれ、さっそく筋肉ほぐしをやってみましょう。
ほぐすターゲットは2カ所。咀嚼(そしゃく)に関わる筋肉のうち「咬筋」と「側頭筋」です。
最初は、咬筋から。
咬筋は歯をくいしばったときにあごの外側で硬くなる筋肉で、硬い食べ物を嚙み砕くときなどに働きます。
頬骨(きょうこつ)を下側から触って、外側にたどっていき、もみ上げにぶつかったあたりが咬筋エリア。
いつもくいしばっていたり一日のなかで歯と歯が接触している時間が長い人はここがこっているはず。そして、こっている人は押してみたときに痛いと思います!
咬筋エリアを中指と薬指で、グリグリとほぐしましょう。
30秒ほどほぐしたら、指を押し当てたまま口を大きく開けます。
これを何回か繰り返します。
続けて、側頭筋ほぐしです。
側頭筋は 下あごを上に上げることで嚙んだり、あごを後ろにひいたりする筋肉。普段から押すと痛い、張っていると感じている人も多いと思います。
咬筋エリアをそのまま上へ行き、こめかみのあたりが側頭筋です。
咬筋と同じように、ほぐして口を開ける…を繰り返しましょう。
これが習慣になるだけで、頭痛が解消され、歯ぎしりやくいしばりも軽くなる人もいます。
最初は痛くても、気づいたときにほぐしていると、徐々に痛くなくなってくるので、ぜひ頑張って続けてみて!
寝る前の1分、気づいたときの1分…、呼吸に集中を!
さらに大貫さんの「きほんの呼吸」を定着させ、自律神経を整え、体調を底上げしていきましょう。
大貫さん曰く「自分の呼吸のクセはなかなか改善できないものですが、寝る前の1分、気づいたときの1分…を繰り返すことで、変えていくことができるものなんです。
きちんと呼吸を意識して、続けてみてください。
大貫さんの「きほんの呼吸」は…
第2回、第3回で詳しくお伝えしています。
ポイントは、横隔膜をリラックスしてしなやかに動かすこと。
そのために…
●必ず鼻呼吸すること。
●息を吐く時間を長くし、吐ききること。
●吸いすぎないこと。呼吸の数をとことん減らすこと。
具体的な呼吸は…
【吐いて】8〜9秒かけて、鼻から(すぼめた口を使ってもOK)ゆっくり息を吐き
【止めて】3秒息を止めて
【吸う】少なめに(短いほどいいのですが、目安は3秒程度)息を吸う
秒数は絶対ではなく、吐いて:止めて:吸う=3 : 1 : 1を目安に。
苦しくてたくさん吸ってしまう人は、自分のできる秒数から始めます。
例えば、3 : 1 : 1であれば、6秒2秒2秒でもかまいません。
下あご「アイーン」で、あごを後ろ側にリセット
「余裕があれば、簡単なあごのエクササイズもやってみてください。
いわゆる『アイーン』のあごですね(笑)。
アイーンで下あごを前に出したまま、左右に動かすエクササイズであごの位置をリセットします」
「実は、先ほどほぐした『側頭筋』なんですが、下あごを後ろに引くことができます。姿勢を正す際によく『あごを引いて胸を張って』って言われませんでしたか? これはあごを引いて『下を向く』というイメージですが、こうなるとあご自体もさらに後ろにいって、普段の嚙みしめやくいしばりで、さらに後ろに行きます。となると顎と首の間にある気道が狭くなって呼吸しにくくなる。それは嫌だから頭を前に出してストレートネックにして口呼吸…汗 そんな図式ができてしまうのです。
ですから、姿勢のためにも呼吸のためにも、頭とあごを分離し、別々に動かすことがとても重要。
スマホやデスクワークで頭が前へ出てしまう姿勢では、バランスをとろうとして自然にあごを後ろに引いてしまいがち。これは気をつけたいところですね」
「アイーン」とあごを前へ突き出し、そのまま下あごだけ左右へずらします。
ゆっくりでよいので、1分間ほど繰り返しましょう。
ただし、前へ出すのは下あごだけ。
亀のように首を前に出したりあごを引きすぎては元も子もないので気をつけて。
あくまで「首は普通、下あごだけ前へ」がコツです。(ちょっと上を向いているくらいがちょうどいいかもしれませんね)
これも楽にできる人は、一歩進んで!
さらに、目玉と下あごを一緒に動かす練習をしてみます。
これらが余裕でできるようになった頃、頭痛が軽くなり、くいしばりも楽になることを期待?しましょう。
下あごの位置が自由になって前にも来れるようになったら、もう嚙みしめなくてもいいですし、気道が広がって呼吸もしやすくなりますよね。
ぜひ、「きほんの呼吸」と一緒に取り組んでくださいね!
■■まとめ■■■■■■■
首が前に出て下あごが後ろに引かれた姿勢は、さまざまなトラブルの原因に。
嚙む筋肉、咬筋・側頭筋ほぐしを習慣に。
下あごを突き出す「アイーン」は万能!
【教えていただいた方】
1980年神奈川県生まれ。呼吸コンサルタント。アスレティックトレーナー。京都にある呼吸専門サロン「ぶりーずぷりーず」主宰。大阪大学大学院医学系研究科 健康スポーツ科学講座スポーツ医学教室 特任研究員。呼吸に関連した企業研究や商品開発など法人向け呼吸コンサルティング事業を展開し、アスリートから高齢者まで呼吸目線でのコンディショニングに従事。著書に『きほんの呼吸 横隔膜がきちんと動けば、ムダなく動ける体に変わる!』(東洋出版)など。
【呼吸についての悩みや質問、大募集】
呼吸について、大貫さんへの質問を募集しています。
●レッスンの内容でよくわからなかったこと、うまくできなかったこと
●自分の呼吸についての悩みや困ったこと
●呼吸についての素朴な疑問
内容についての感想などもOKです。大貫さんにお答えいただく予定です。
こちらからお気軽にどうぞ!
撮影/露木聡子 イラスト/きくちりえ 取材・文/蓮見則子