Z世代男子のセックスの目的は、「相手の快楽」
OurAge読者の皆さん、こんにちは。富永ペインクリニック院長、富永喜代でございます。
先日、思わず「ほぉー!」と唸ってしまった出来事がありました。
それは、Z世代男子を対象とした「セックスに対する意識調査」結果(ちなみにZ世代とは、18〜26歳までの世代の人たちのことです)。
「セックスにおける快楽の目的は何ですか」という質問に対して、彼らの回答の第1位は何やったと思います? それはなんと、「相手が性的快感を得ること」。
つまり自分自身の快感よりも、「相手が性的快感を得ること」を大切にする男子が多数だった、というわけなんよ。
対してY 世代(36〜42歳)、ロストジェネレーション世代(43 〜51歳)、バブル世代(52〜57歳)の男性が、Z世代の年齢だった頃のセックスにおける目的第1位は、「挿入すること」(2位は「自分が快感を得ること」)。下のデータも合わせてご覧くださいませ。
出典:「月刊TENGA」 第49号「Z世代男性の性生活・性意識白書」より
OurAge世代の皆さん。この調査結果を見て、どう思いました?
これはね。「Z世代だし、若いからね」とかそんなことではなく、性に対する考え方がもうまったく変わってきている、ということなんですよね。
「相手を快楽に導くことこそが、セックスの喜び」っていうふうに、最初からZ世代の彼らはとらえている。それは、性に対する教育、生育環境、価値観がじわじわと変化してきたからにほかならず。
それにしても、「(性への)タブー、押しつけがない」というだけで、男子はこうも素直に育つものなのか〜と、非常に感慨深い思いになったのでした。
40代、50代女性の3割がセルフプレジャーに「興味なし」
若者世代と、40代、50代の私たち世代。性の価値観の違いは、いったいどこに端を発しているのでしょうか。
先述の意識調査が掲載された「月刊TENGA」とは、セルフプレジャートイを開発するメーカーTENGAが発行する刊行物(わたくし富永も時々寄稿させていただいているメディアです)。
で、この「月刊TENGA」の第50号では、「『女性の性』白書2023」と題し、セルフプレジャーに対する女性の意識調査も行われていて、これまた興味深い結果が出ているのでご紹介しますね。
セルフプレジャーは「ストレス解消」「気持ちいい」という、どちらかといえばポジティブなイメージを持つ人が多いZ世代。対して40代、50代女性は、「興味がない」という回答が第3位にランクインしとるんですわ(Z世代にはなし)。
「興味がない」ということは、「自分自身で性の快感を得る」ということに対して、「それははなから、自分とは関係のないもの」として線引きをしとる…っちゅうことですよね。
じゃあ、なぜ私たち世代の多くは、そうなっていったのか。
それは、「気持ちのいいことを追求してみたい」という姿勢の前に、育った環境とか、親や教師などの大人の教育によって、「してはいけないこと」(なぜなら、はしたないことだから)という価値観を強烈に刷り込まれた世代だからですよね。性に対して興味を持つこと自体も、「禁止事項」となっているのではなかろうか、と思うわけです。
特に日本は性をタブー視する傾向が強くて、親や教師から、「あそこに手を持って行ってはいけません」とか「見たりしてはいけません」とかいうふうに「教育されてしまった」人が少なくない。
で、そういったことを刷り込まれた女性の多くは、「性教育に触れない」まま、その価値観で大人になって。
自分の体の一部である性器がどうなっているのかも知らないままだから、「セックスで気持ちよくなろうなんてとんでもない」状態だよね。
ところが結婚した途端、「早く子どもを産め」と急かされる。その結果、「セックスなんて、子どもを産むための手段ですから」ととらえるようになった。
でもそうなってしまったとて、なんら不思議ではないですよね。
ましてや昨今のフェムテックブームに至っては、「フェムケアなんて知りたくない!」「セルフプレジャーなんて信じられない!」となり、「とにかく、シモの話なんて見るのも聞くのもイヤ。ほっといてほしい」となってしまうのも、よくわかるんです。
一方で、使ったことがあるフェムテック・フェムケアアイテムランキングでは(「『女性の性』白書2023」)、ロスジェネ世代、バブル世代ともに、第1位特になし、第2位月経管理アプリなんですが、第3位に“デリケートゾーンケア化粧品”がランキングインしています。 ということは、今の40代、50代の女性たちは、フェムケアを知っている人はまだ少数派ですが、知っている女性はもうすでにフェムケアを始めている、ということです。
40代、50代も、性の「正しい知識」を知る権利がある
私の動画やSNSのライブでも、フェムケアやセルフプレジャーについて、「そんなことは誰も教えてくれなかった」「幼少期に外性器を触っていたら、はしたない!と言って手をたたかれた」という人は少なくない、という話をしとったんですよ。そうしたら、おそらくOurAge世代と思われる女性が、こんなコメントをくださったんです。
「思春期に母親から、局所に手を持っていくのはプロ、いわゆる玄人の女性であって、それ以外の女性がすることではない、と教え込まれました。その結果、トイレで拭くことはしても、お風呂でデリケートゾーンを洗うこともはばかられてしまい、湿疹、かぶれ、においなど、大変なことになりました」
本来、Z世代の人たちのように、自分の幸せや快感に対して、真っすぐ素直に進むスイッチは自然に押されて然るべき。けんど。
「押されずにきた」人たちもいるんよね。セルフプレジャーやセックスをする・しないに関しては個人の自由ではあるけれど、なかにはコメントをくださった方のように、性にフタをすることで、QOLが著しく低下してしまうリスクはある…。
そういう性の全体像について、知識としてはやっぱり知っていてほしいな、とは思うんですね。
でね。先日NHKで放送された「松本人志と世界LOVEジャーナル」という番組がとても参考になったんですわ。
「性の情報が閉鎖されすぎてきたために、価値観がアップデートされていない。だから現代にアップデートしようよ」というテーマの番組だったんですが、私がいちばん感動したのが、オランダの小学校の性教育。
授業では、外性器の形状をあいまいにすることなくちゃんと表示して、子どもたちに教えているんよね。日本の性教育も、しっかりとした情報があったうえで、「その後の判断は本人に委ねる」というような成熟した教育、アップデートがそろそろ必要なのではないでしょうか?
そういう教育を受ける機会がなかった世代は、もちろんその人たちのせいではない。けんど、いつまでも親や古い世代のせいにしていたって仕方がない。それでQOLが勝手に向上することはないからね。
それに、Z世代においてはすでに、我々親世代の頑張りによって、性のタブー視による負の連鎖は断ち切られているわけじゃないですか?
だから、自分以外の人、世代、世界は今、どう変わっているのかということに、まずは目を向けてみませんか、というのが富永からの提案です。
それだけでも、自分の意思とは裏腹に閉じられていた性への意識が自然とアップデートされて、心も体も、解放へとつながっていくかもしれませんよ。
【教えていただいた方】
富永ペインクリニック院長。医学博士。日本麻酔科学会専門医。 1993年より聖隷浜松病院などで麻酔科医として勤務、2万人を超える(通常1日2名のところ、1日12名)臨床麻酔実績を持つ。2008年愛媛県松山市に富永ペインクリニックを開業。痛みの専門家として全国でも珍しい性交痛外来を開設し、1万人超のセックスの悩みをオンライン診断している。性に特化したYouTubeチャンネル『女医 富永喜代の人には言えない痛み相談室』は、チャンネル登録者数28万人、総再生数は6600万回超。SNS総フォロワー数44万人。真面目に性を語る日本最大級のオンラインコミュニティー『富永喜代の秘密の部屋』(会員数1.6万人)主宰。『女医が教える性のトリセツ』(KADOKAWA)など著書累計98万部。
撮影/天日恵美子 角守裕二(花) 取材・文/井尾淳子