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60年変化なしだった介護の時の「下の世話」に革命!フィトテラピー(植物療法)による陰部洗浄液が誕生

植物療法士・森田敦子さんは最新著書『私のからだの物語』(ワニブックス)にて、「腟ケアは、老年期や介護の質にまでも影響を及ぼす」ことを伝えています。ビジネスパートナーでもある医療法人社団 八千代会の副理事長・姜(かん)慧(へ)さんとは、フィトテラピー(植物療法)ケアブランド「Mesoins(メソワン)」で、陰部洗浄液の製品化という新たなプロジェクトもスタート。

 

OurAge世代も気になる介護の未来について、お話を伺いました。

 

森田敦子:株式会社サンルイ・インターナッショナル代表。日本における植物療法の第一人者。植物療法に興味を持ち渡仏、フランス国立パリ第13大学で植物薬理学を学ぶ。帰国後、デリケートゾーン&パーツケアブランド「アンティーム オーガニック」の処方・開発や、「ルボア フィトテラピースクール」、フェムテック・ウェルネスメディア「WOMB LABO」を主宰。2022年、日本女性財団理事に就任。世界45の国と地域で刊行されている女性誌「ELLE」にて、「100 Women CHANGE MAKERS (エルが選ぶ世界のチェンジメーカー100)」に選出。 姜(かん)慧(へ) Kang hye:医療法人社団 八千代会 副理事長、鍼灸師。大手医療機器メーカー入社後、医療法人社団 八千代会 八千代病院開設時に携わる。2010年植物療法(フィトテラピー)との出会いにより、看護・介護現場の実践に取り組み、2021年自分自身と大切な人のためのケアブランド「Mesoins(メソワン)」を立ち上げる。2022年Mesoinsを一般販売し、新たな展開へと取り組んでいる。

森田敦子
株式会社サンルイ・インターナッショナル代表。日本における植物療法の第一人者。植物療法に興味を持ち渡仏、フランス国立パリ第13大学で植物薬理学を学ぶ。帰国後、デリケートゾーン&パーツケアブランド「アンティーム オーガニック」の処方・開発や、「ルボア フィトテラピースクール」、フェムテック・ウェルネスメディア「WOMB LABO」を主宰。2022年、日本女性財団理事に就任。世界45の国と地域で刊行されている女性誌「ELLE」にて、「100 Women CHANGE MAKERS (エルが選ぶ世界のチェンジメーカー100)」に選出。
姜(かん)慧(へ) Kang hye
医療法人社団 八千代会 副理事長、鍼灸師。大手医療機器メーカー入社後、医療法人社団 八千代会 八千代病院開設時に携わる。2010年植物療法(フィトテラピー)との出会いにより、看護・介護現場の実践に取り組み、2021年自分自身と大切な人のためのケアブランド「Mesoins(メソワン)」を立ち上げる。2022年Mesoinsを一般販売し、新たな展開へと取り組んでいる。

 

 

──── 今回お話を伺ったのは、高齢者の医療や介護をトータルでサポートする医療法人社団 八千代会が運営する広島の介護付きホーム(メリィハウス西風新都)。
施設内各所には森田さんと姜さんが立ち上げたブランド「Mesoins(メソワン)」のルームスプレーが置かれるなど、患者さんの緩和ケアに、積極的にフィトテラピー(植物療法)が取り入れられていることを感じました。

 

森田:フランスのパリ13大学薬学部でフィトテラピーを学び、日本に帰国して、26年が経とうといています。フランスでは、がん専門の病院や終末期医療の施設などで、フィトテラピーを取り入れた素晴らしい緩和ケアを数多く見ました。これを日本にも広めたい! と思いながら活動をしていましたが、なかなか仕組みにならない中、「一緒にやりましょう」と手を挙げてくださったのが医療法人社団 八千代会の姜さんだったのです。

 

姜:森田さんのお力を得て立ち上げたケアブランド「Mesoins(メソワン)」は、「こういうものが必要だよね」という、医療介護の現場の声から生まれました。がんで闘病していた私の母も術後のむくみに悩んでいましたし、患者さんの中には肌が乾燥して、「でも、何を使ったらいいの?」と困っている方も多くいました。そんな現状を変えたくて、術後の方が使っても問題のない、フィトテラピーによるスキンケア用品を森田さんと製品化したのです。
それは肌トラブルの改善だけではなく、患者さんのモチベーションを高める力も秘めていることがわかってきました。

医療介護の現場でも使用されている「Mesoins(メソワン)」のプロダクツ

写真左:ルームスプレー300ml ¥4,400 気になるニオイをマスキングする独自のブレンド。写真右:バス リラクゼーション 500ml ¥6,380 肌に潤いとハリを与えてすこやかに保つ入浴剤は、森田さんと姜さんが最初に作ったプロダクツなのだそう。

写真左:ルームスプレー300ml ¥4,400 気になるニオイをマスキングする独自のブレンド。
写真右:バス リラクゼーション 500ml ¥6,380 肌に潤いとハリを与えてすこやかに保つ入浴剤は、森田さんと姜さんが最初に作ったプロダクツなのだそう。

 

──── スキンケアの延長線上には、患者さんの陰部のケアもあります。いわゆる「下の世話」といわれる問題は、これまではあまり改善がなされてこなかった部分。そこでもお二人の新しい取り組みが始まったと伺いました。

 

森田:はい。「Mesoins(メソワン)プロジェクト」と題して、フィトテラピーを使った陰部洗浄液を、八千代会さん、そして東大研究者の方々とともに開発しました。すでに製品化はされていていずれは商品化もしたいのですが、まずは医療介護の現場に届けたいと考えています。そのために、今は必要なエビデンスを取るという、実証段階にあります。

 

姜:今回のプロジェクトについて、ご協力をいただいた東大医学部の教授の方々のお言葉がとても印象的でした。それは、「これまで60年間変わることがなかった介護の問題が、いよいよ改善しますね。介護の未来が変わります」というもの。
つまり長い間、おむつ交換の際の陰部のケアがずっと変わってこなかった、ということですね。

──── 医療介護の現場では、これまではどのような陰部ケアが通常だったのでしょうか。現場の声として、八千代会が運営するメリィホスピタル副院長、看護部長の浜崎忍さんに伺いたいです。

 

浜崎:私たち看護師は、患者さんが若い方でも高齢者の方でも、陰部のケアについては約60年前からずっと同じ方法を教わってきています。それは、入浴できない方に対する陰部洗浄というケアの方法で、ボトルに入れたお湯を流しながら洗浄する方法です。それをずっと続けてきたのですが、でも果たしてこのやり方は本当に効果的なのだろうか?という疑問を現場は抱えていました。そこで森田さんに、「もっといい方法がないのでしょうか?」とご相談をしたのが、今回の開発の始まりでした。

 

写真は、広島で行われた森田さんの新刊記念イベント。写真右が、メリィホスピタル副院長・看護部長の浜崎忍さん。浜崎 忍:八千代会グループ看護統括、メリィホスピタル副院長・看護部長・メリィデイズ管理者。フランスにおける医療・看護の視察時、補完代替療法として植物療法が日常的に行われている事を学ぶ。森田敦子さんと開発を重ねたトリートメントオイルを標準的なケアに活用、2018年メリィホスピタル開院時「看護でも選ばれる病院」をめざし植物療法を取り入れる。

写真は、広島で行われた森田さんの新刊記念イベント。写真右が、メリィホスピタル副院長・看護部長の浜崎忍さん。
浜崎 忍:八千代会グループ看護統括、メリィホスピタル副院長・看護部長・メリィデイズ管理者。フランスにおける医療・看護の視察時、補完代替療法として植物療法が日常的に行われている事を学ぶ。森田敦子さんと開発を重ねたトリートメントオイルを標準的なケアに活用、2018年メリィホスピタル開院時「看護でも選ばれる病院」をめざし植物療法を取り入れる。

 

森田:誰もが目を背けてきたことに対して疑問を持ってくださった看護部長の浜崎さん、そして共に動いてくださった姜さんのパワーは、私にとっても本当に希望そのものでした。
ドイツでは、「寝たきりになりおむつの中に排泄をするようになると、人は自分の尊厳を守るために、自己防衛本能から認知症になる」という論文も多く出ているのです。姜さんはじめ、八千代会の現場の方々とはずっと、「これからの医療介護は、そういった人間の本能も考えたケアを取り入れていくべきではないか」「下の世話という言葉自体も、変えていきたいですね」と話し合い、ようやくここまでたどり着くことができたのです。

 

植物療法の第一人者の森田敦子さんと、医療法人社団 八千代会副理事長の姜(かん)慧(へ)さん

植物療法の第一人者の森田敦子さんと、医療法人社団 八千代会副理事長の姜(かん)慧(へ)さん

 

──── フィトテラピーによる陰部洗浄が一般にも広がれば、ケアする側の人の負担もラクになると言えますね。具体的には、どんな成分のものになるのでしょうか。

 

森田:植物が持つ抗菌力に加えて、構造が尿路感染症にも効果があると言われる特殊なペプチドを配合しました。それにより抗菌活性が期待できると同時に、菌の抑制効果、そして肌の保湿効果も目指しました。洗浄液は泡状になっているのですが、泡の界面活性もまた、抗菌力を発揮します。陰部にのせるだけで自然に液状になって汚れが落ちるというもので、災害時に使用されるような、水を使わないシャンプーをイメージしていただくとわかりやすいかもしれません。今回の陰部洗浄もまた、災害時など、水が使えない場合にも活用できるものになればと考えています。

 

浜崎:森田さんには、「効果的な洗浄もしたい」「保湿もしたい」という欲張りなリクエストをさせていただきました。
一般的なボディソープの泡は、肌に乗せるとそのままの形状で残るのですが、今回開発された陰部洗浄は、局部につけると大陰唇の間から肛門までスーッと流れ、液状になった泡がなめらかに汚れを落としていきます。私たち看護師は、大体1日に1回陰部洗浄を行うのですが、1日1回のケアよりも、おむつ交換をするたびに今回の陰部洗浄液でケアをしてさしあげた方が、患者さんもスッキリしてきれいになるし、炎症などのトラブルも少なくなるのではないかと考えています。毎回、外陰部を広げて洗われなくても清潔に保つことができたなら、患者さんにとっても、医療者にとっても陰部のケアそのものが変わるのではと期待しています。

 

姜:今回のような取り組みを続けながら、緩和ケアのありようを新たにしていくことで、これまでの日本にはなかった緩和専門のフィトテラピーを確立していきたいですね。そこでマッサージやスキンケアなど、看護師たちの「もう一つのスキル」を作っていきたいとも願っています。それは患者さん、またその家族の方の立場に立った時、「ちょっとこの部分はどうしていいかわからないし、足りていないね」という部分でもあります。そういうニッチなところから介護を変えていかなければ、医療側も、働き手がどんどん失われていくのではと思うからです。

 

森田:腟ケアも介護における陰部のケアも長らくタブー視されてきましたが、やっぱり人間の尊厳に直結する部分ですから、「見て見ぬふり」のままではいけないと思いますね。フィトテラピーを応用したこういった取り組みが、今後どれほど私たちのQOLを高めていくのかを、ぜひ多くの方に知っていてほしいと思います。

 

──── 腟ケアに続く、大革命が起きそうですね! 誰もが迎える老後。でも、介護の未来を変えていこうとしている方々がいることを知るのはとても心強いです。

 

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撮影/石原写真事務所 石原慎太郎 取材・文/井尾淳子

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