更年期の手指の不調には3つのタイプがある

更年期世代の女性に起こりやすい手の不調(メノポハンド)には「痛み、しびれ、こわばり」の3タイプがあり、症状が起きる場所によってその名称が異なります。「『ばね指』は指の付け根に、『ドケルバン病』は手首の親指側に痛みが出ます。親指から薬指にしびれや痛みが出るのが『手根管症候群』、痛みやこわばりが第1関節に出るのが『へバーデン結節』、第2関節では『ブシャール結節』、親指の付け根では『母指CM関節症』と呼びます」(下江隆司先生)
指の関節の痛みから始まり、やがて関節が変形する

瓶の蓋を開けようとすると親指の付け根が痛い、指の関節がボコッと出て指輪が入らなくなった、こんな悩みを抱えていたら指の関節が変形し始めているのかもしれません。
「膝の軟骨がすり減って痛みが起こる『変形性膝関節症』という病名を聞いたことがある方も多いと思います。手の関節の痛みもメカニズムは同じ。指の関節の軟骨がすり減り、炎症が起きて骨のとげ=骨棘(こつきょく)が生じ、痛みを感じるのが手の変形性関節症です。
70代~80代になると男女関係なく誰でも何カ所か変形性関節症が起きていますが、痛みを訴えることが多いのは更年期世代の女性です。そのため、手の変形性関節症の痛みや変形は女性ホルモンが影響していると考えられています。
手の変形性関節症は、腫れて痛みが出たり、関節がこぶ状に膨らんで手指を強く握れなくなる人もいて、日常生活に不便を感じる人も少なくありません。この痛みや変形が現れる場所によって症状の名称が異なります」
記事が続きます手の関節の痛みでいちばん多いのが、第1関節に症状が出る『へバーデン結節』です。
命名した人の名前をとって名付けられています。第2関節に出る症状は『ブシャール結節』。もうひとつは親指のつけ根に症状が現れる『母指CM関節症』です。瓶の蓋を開けたり、物をつまんだりするときに親指の付け根に激しい痛みを感じることがあります。
親指はほかの指と違って、親指を使わずに日常生活を過ごすことが難しいため、常に負荷がかかるので変形すると痛みが長引きます。『へバーデン結節』や『ブシャール結節』は痛みが数年間で自然に治まることが多いのですが、『母指CM関節症』は痛みが治まりにくく、長続きするのが特徴です」
症状の出ている関節に外用薬を貼って痛みを軽減する

指の関節は痛みから始まり、放置するとやがて変形へと進行します。
痛みは生活の質を下げるだけでなく、変形した指の関節が目に入るたびに落ち込むことも…。そこで痛みを感じた時点で早めに医師に相談することが大事!
「一度変形した関節は、残念ながら元に戻すことはできません。ですから治療は痛みを軽減することが主な目的です。痛みの治療は、内服薬、外用薬がありますが、副作用を避け、できるだけ体に優しい治療方法ということで外用薬から始めます。外用薬には痛みが起きている場所に湿布を貼る、ゲルなどの塗布薬を塗る、近年は上腕などにパッチを貼ることで内服薬と同じように全身に作用する、全身作用型貼付薬も使用されるようになりました。
記事が続きます
また、痛みが出ている関節を安静にするためにテーピングや装具をおすすめすることもあります。さらに更年期世代の女性には、更年期症状への有効性が示されているエクオール成分入りのサプリメントを使用することも。
痛みが強い、痛みが長く続くなど状態によっては、関節の形を整える関節形成術や、関節を人工物に入れ替える人工関節置換術、あるいは関節を動かなくする関節固定術という手術もありますが、それはかなり少ないケース。手の変形性関節症になったからといってすぐに手術が必要だと思う必要はありません」
【教えていただいた方】

手外科専門医・指導医。和歌山県立医科大学整形外科学講座講師。医学博士。日本整形外科学会専門医、日本足の外科学会認定医、厚生労働省認定臨床研修指導医。診察を行いながら、更年期と女性の手指の不調に関する疫学調査や臨床研究に積極的に取り組んでいる。
イラスト/てぶくろ星人 取材・文/山本美和


