放っておくと痛みは治まっても、手指の症状は進行することも

手に痛みやしびれなどの不調を感じている更年期世代の女性のなかには、病院へかからずに放置している人が多いといいます。
「手は痛いけれど病院に行くほどではないと感じている人や、痛くて病院に行きたいけれど、どこに行っていいかわからないために受診していない人がたくさんいます。実際に私たちが和歌山県で手の痛みについて調査をしたところ、更年期世代の女性の1割くらいが手に痛みを感じているという結果になりました。しかし、痛みを感じていても病院にかかっていない方が大多数です。
更年期世代の女性は年代的に仕事、子育て、介護などご自分以外のことが忙しく、自分のことは後回しにしてしまうことが多いことも受診が遅くなっている要因のひとつだと思います。
しかし、手指の痛みはそのうち治まっても、放っておくと手の動きが悪くなるなど生活に支障をきたすことがあります。例えば、連載第3回でご紹介した『手根管症候群』の場合。痛みやしびれが治まっても、治療をしないと親指の付け根がどんどん痩せてきてボタンかけができなくなったり、親指と人差し指をつけたOKサインができなくなることも。このように痛みは止まっても、症状は進行するケースが少なくありません。早期に治療を始めれば、痛みだけでなく症状の進行を抑えることもできるのです」(下江隆司先生)
自己判断は禁物! 手の不調は関節リウマチの可能性も
「もうひとつ手の不調を感じたら早めの治療をおすすめする理由は、関節リウマチの可能性を見極めるためです。関節リウマチは治療を急ぎます。関節リウマチと診断されると関節が変形する前にそれを抑える薬がありますが、変形してしまってからでは元には戻せません。更年期世代だからメノポハンドだろうと勝手に自己判断をしたり、痛みやむくみをマッサージでケアしてもらおうと整骨院などに漠然と通ったりする前に、その痛みがメノポハンドなのか関節リウマチなのかを、整形外科医や手外科専門医にしっかりと診断を受けることが大切です」
1カ月痛みが続く、痛みを繰り返すなら、医師に相談を!

手の痛みの受診は早めがベター。でも我慢できる痛みの場合、受診のタイミングはいつがいいのでしょう?
「1カ月ほど同じような痛みやしびれが続いたり、症状が強くなっていたら受診してください。また、月に1回2週間だけ手がしびれて一度改善するけれど、その後また手のしびれの症状が出る方もいます。このように痛みやしびれを繰り返している場合も受診をおすすめします」
記事が続きます近くの整形外科医か手外科専門医に相談してみよう
手の痛みを感じたら、整形外科? 手外科専門医? どこに相談をすればいいのでしょうか?
「まずは近くの整形外科への受診をおすすめします。関節リウマチやメノポハンドの鑑別をしてもらい、それに適した治療を始めることが大切です。手外科専門医は全国に約1200名いますので、通院しやすい場所に手外科専門医がいれば、初めから手外科専門医を受診するのもよいでしょう。全国の手外科専門医の名簿は、都道府県ごとに所属医療機関を含めて日本手外科学会のHPに記載されていますので参考にしてください」
【教えていただいた方】

手外科専門医・指導医。和歌山県立医科大学整形外科学講座講師。医学博士。日本整形外科学会専門医、日本足の外科学会認定医、厚生労働省認定臨床研修指導医。診察を行いながら、更年期と女性の手指の不調に関する疫学調査や臨床研究に積極的に取り組んでいる。
イラスト/てぶくろ星人 取材・文/山本美和



