1月下旬頃から、世の中は新型コロナウィルスによる肺炎の話題で持ちきりです。
ワクチンがない今、私たちにできるのは感染を防ぐことしかない。
私もマスクをし、マメに手洗いをしていますが(洗いすぎてもうガサガサ!)、漠然とした不安がいつも心のどこかにある感じです。
「いつ私や家族が患者になるかわからないし、なってもおかしくない」と。
ただ最近そんな気持ちをちょっと軽くしてくれ、今回の肺炎に限らず、患者になったときの心構えを教えてくれる本を見つけました。
それが『医者が教える正しい病院のかかり方』。
著者は「医師と患者の垣根をなくしたい」をモットーに、「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を開設している医師・山本健人さん。
この本では「何科に行ったらいいかわからないときどうすればいい?」「人間ドックと自治体の検診、どちらを受けるのがいい?」といった基本的なことから「医師を替えてほしいときどうすればいい?」「ガンは切ったほうがいい?」などシリアスな問題まで、具体的にわかりやすく説明されています。
まず私が「なるほど!」と思ったのは、「後医は名医」という言葉について。
これは「最初に診た医師より後から診た医師のほうが、より正確に診断しやすいため、患者さんにとって“名医”になりやすい」という意味。
医師の間では「正確な判断ができなかった“前医”を批判してはならない」という戒めに使うこともあるのだとか。
もちろん私たち(患者)は、最初から正確な判断をしてもらいたい。そして少しでも早く回復したい!
ただ医師は「何度か診察し、治療の反応を見ながら軌道修正し、その間に蓄積した情報からより確度の高い判断に近づいていく」と考えるのが基本。
そういう意味でも「処方された薬が効かないからこっそり別の病院に」という行動は患者側に不利益が大きいのだそうです。
(医師と相性が合わず、治療に対して意欲を持ち続けるのが難しい場合は別。複数の医師がいる病院で担当を替えてほしいときは、まず外来看護婦に相談してみるといいとのこと)
実は私の家族が以前近くの病院で風邪と診断され、薬を処方されたものの、なかなかよくならなかったことがありました。
結局しばらくして「肺炎です」と言われ入院したのですが、「なぜ最初から肺炎を疑わなかったの!?」というのがそのときの本音。
この本にまったく同じ症例が書かれていたのですが、そういう場合医師は「最初の医師が診たときはまだ肺炎ではなかった可能性」をごく自然に考えるのだそうです。
「あのとき医師に本音を伝えていればすぐにモヤモヤは解消したかも」とちょっと後悔しました。
とはいえ、面と向かって「最初から肺炎と思わなかったんですか?」とたずねるのは結構勇気が要りますよね……。
そのほかにもここには“私たちがなんとなく信じていること”の間違いや医療現場の現実がいろいろと挙げられています。
たとえば
●病状や病気をググってもネット上の医療情報は間違いだらけだから意味がない。
●セカンドオピニオンは他の医師の意見を聞くだけ。その場で新たに検査を行うことも治療を始めることもない。
●専門医の肩書きがないと信用できないわけではない。
●「何もせずに様子を見る」のは医学的にはとても重要な診療行為。
●がんの「標準医療」は「並の治療」ではなく、現時点で考えられる「最も有効な治療」。
●執刀医は病院にまかせたほうが患者の利益が大きい可能性が高い。(有名教授や院長を指名すればいいわけではない)
●点滴で風邪が治るというのは間違い。
などなど。
読み終えて、患者としての知識があまりにも足りなかったことに気づいた私。
病気は医師が患者から丸投げされて治すものではない、まずは患者本人が賢明でなくちゃと痛感しました。