Book Reviw
角田光代など14人の小説家が「とあるひととき」を描いたエッセイアンソロジーほか、大人女性におすすめの4冊をご紹介します。
14人の人気作家それぞれの過ごし方
『とあるひととき 作家の朝、夕暮れ、午後十一時』
花王プラザ 編/平凡社
1,540円
角田光代、重松清、森絵都、吉本ばなななど14人の小説家が、一日の3つの時間帯について思うことを書いた、エッセイアンソロジー。今の生活に絡める人もいれば、過去の忘れられないひとときを教えてくれる人も。「誰かの時間」を疑似体験できる楽しさが詰まっています。
父娘の距離感が愛おしい物語
『ルコネサンス』
有吉玉青 著/集英社
2,035円
著者の自伝的小説。大学院生の珠絵は、実の父親と二十数年ぶりに再会する。想像以上に魅力的だった彼に、珠絵は恋にも近い感情を抱くが…。迷い、時にはけんかしながら心地よい距離感を探り合う父娘の心の描き方がこまやか。こんな人間関係もアリと思わせてくれます。
京都の下町の人情が伝わるエッセイ
『天使突抜(てんしつきぬけ) おぼえ帖』
通崎睦美 著/集英社インターナショナル
2,200円
京都の下町、天使突抜で暮らす著者の、地元話。幼い頃の記憶、日々の習慣や人情を大切にしていたご近所さんたち、マリンバ奏者である著者が出会ったお弟子さんとの交流。明るく、時に涙を誘うエピソードは、自分自身の故郷やルーツを振り返るきっかけにもなりそう。
人生の悲哀がしみる連作短編集
『ゴールドサンセット』
白尾 悠 著/小学館
1,650円
中学生の琴音は、生きることに疲れ果てていたが、偶然出会った奇妙な老人から、人生とは舞台、人間は役者だと諭されます。中高年限定の劇団を軸に、若者から高齢者までの悲喜こもごもを描いた連作小説。日々の中で悩み、とまどい、それでも生き続ける姿に共感する一冊。
取材・原文/石井絵里