3月末にリモートワークをはじめた私が、最大の危機を迎えたのは2日目の夕方のことだった。
出社していれば、1日1万歩以上歩くはずが、この時点で1300歩。
普段は電車通勤や取材、ときにはランチに出ることに加え、OurAge編集部が、フロアのトイレから一番遠い位置にあることの重要性に、このときはじめて気付いた。トイレに行くだけでも運動量を稼いでいたのだ。自宅だとPCを置いたテーブルからトイレまで7歩…。キッチンまで5歩。なんてこった!
18時時点で、体はガチガチ、気分はどんより。朝からものすごい集中力でやったつもりなのに、まだ予定の仕事が終わらない。
ギャー、と叫びたい気分だ。
もちろん、分別ある50代だから叫ぶまい。
とりあえず前日と同じく、軽装にリュックとスニーカー、マスクをして外へ。ざわざわしたものを胸に抱え、3月末の肌寒い夕闇の中、少し離れた公園を目指す。公園は工事中で塀で囲われているが、1周出来ることは、前夜にわかっていた。
今のマンションに引っ越して17年。駅方向と逆側にある公園には、これまで数回しか行ったことがなかった。
公園の外周の歩道をとぼとぼと歩いていると、ランニングしている人に抜かされる。前夜もそうだった。
とぼとぼ、とぼとぼ、と、と、と、と、タッタッタッタ…私は腿を上げて走り出していた…
え? 私は、なぜ走っている?
中高生時代、持久走がなにより苦手の根性なし。
3年前にスポーツジムに入会しても、ランニングマシーンだけは1度もやる気なし。
足を取られてベルトに顔をしたたか打ち付ける図が目に見えているから。運動音痴だし。
そんな私が遅刻でもないのに走り出す!?
ギャーっと叫ぶ代わりに、私がしたのは50年間避けてきた「走る」ことだった。
今、あの晩の自分に「走る」ことがあってよかった、としみじみ思う。
私は公園を一周したのち、下弦の月を眺めながら家に戻った。
さて、ここからは、いつもの口調に戻りましてつづきを。
家に戻って手を洗いながら、心地よさと達成感を感じ、ガチガチの体と心が一気に解放されたのがわかりました。
おなかもすいて、夕食を作るのが、また楽しい。
そういうといっぱしのランナーのように聞こえますが、もちろん、そんなはずはありません。
公園の1周は1.6kmで、家からの往復を含めてたったの2.4km。それすら完走できない軟弱っぷりです。
それでも雨でなければ、夕方、走りに出るのが楽しみに。
公園や土手の散歩やランナーの「密」状態が報道で心配されていましたが、この公園は工事中で中に入れないこともあって、そもそも人が少ない。18時台だと、1周で10人程度しかいないと思われます。
夕方までに仕事が終わらない日は、走り&夕食後にまたPCを開くけれど、走った後はうつうつが解放されているので、ふんふーんって鼻歌交じりのことすらあります。
さて、毎日走っているとだんだん欲が出てきます。その欲は残念ながら「速く長く走れるようになりたい」とは違った方向に。
3日に1度、帰りにスーパーに寄るから走りやすいバッグがあるといいな、季節が進んで暑くなってきたから乾きやすいトップスが必要だな、日没が遅くなって夕日がまぶしいから人生初キャップにトライだ、などなど。手持ちのスポーツジムウエアとの組み合わせを考えながら、ちょこちょこと購入してしまいました。今年は春夏ものの服を買っていないからいいよね、と自分に言い訳しつつ。
こちらが「ユニクロ」セットで「帰りにスーパーに寄りやすいコーデ」。本格ランナースタイルのレギンス+ショートパンツに憧れますが、もう少し速く走れるようにならないとかっこ悪くて、今は手が出せません…。
こちらはゴールドウインセット。ヨガウエアを愛用してきた「ダンスキン」のトップスと「ザ ノースフェイス」の帽子とボディバッグです。バッグにエコバッグ2つとスマホとお財布とミニタオルを入れて斜め掛けに背負い、マスクをして走ります。
50代にして、どんよりした体と心を救ってくれる新しい趣味ができ、さらに自粛期間に公園一周を完走できるようになろう、という目標まで持てたことに、ニンマリほくそ笑むことも。ま、根性なしなので、緊急事態宣言が解除された今も、目標には到達できそうにありませんが。
今回の「50代 あるある(かもしれない)川柳」は、秀吉オマージュで。
鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス
叫ぶなら 走ってみせよう ステイホーム
◆50代、ジョギングはじめてみたら、だいたいの悩みは解決した!?
◆はじめてのランニングシューズ「アシックス ゲルカヤノ27」で、私、跳びました!?