大笑いしながら大人も目ウロコの「お茶」の性教育動画、知ってますか?
「マジでこれ最高!笑える!」と話題。しかも世界中の教育機関で、性教育に採用されている動画をご存知ですか?
2015年の発表以来、世界中でバズって見られている「お茶と同意(Tea Consent)」がそれ。
お茶を誰かにいれようとする場面が次々出て来ては
「でも無理にお茶を飲ませてはいけません」
が繰り返されるこの動画。
お茶にたとえて、「その気がない人」「途中で気が変わった人」「意識のない人」「途中で意識をなくした人」などに、同意なくセックスしてはいけないことをユーモラスに説明していて、大人が観ても大笑いさせられ、しかも目ウロコなんです!
英国ではほぼすべての学生が観ると言われており*、アメリカでも多くの学校や職場で「性教育」や「セクハラ防止」のオリエンや研修のツールに採用、日本でも大学や高校などの授業に利用され、「女子高生が体育館の床を叩いて大ウケする」のだそう。
*英紙「THE TIMES」より
動画「お茶と同意」。Youtube画面右下の⚙(設定)マークから日本語字幕が選べます ©️Emmeline May, Blue Seat Studios
動画を作ったのは、元教師で3児の母、アニメーターのレイチェル・ブライアンさん。
右がレイチェル さん。4月に来日されて開かれたトーク・イベントの場で自著を手に。左はこの本の翻訳者の中井はるのさん
イギリスで話題を呼んだブログ**の著者エメリン・メイさんと作った上記の動画が大ブレイク。
その後、当時7歳の娘さんが学校で同級生にキスされる事件が起きた際に、相手の子に一方的に怒るだけの先生を見て「子どもに同意の知識を教えるいい機会なのに…」と思い、動画「Consent for Kids!」を作るや、また大ヒット。その動画を元にさらに詳しく同意を紹介する絵本、『子どもを守る言葉「同意」って何?』が生まれました。
**2015年、メイ氏のブログで発表
「Consent for Kids!」 の動画より。こちらも世界中の家庭や教育機関で見られています。函館性暴力防止対策協議会の作製した日本語吹き替えバージョンも。 ©️Blue Seat Studios
絵本も大人気!『子どもを守る言葉「同意」って何?』(レイチェル ・ブライアン著、中井はるの訳 集英社 1760円)
このかわいい動画と本で、レイチェルさんは「同意」を交わすためのノウハウを、子どもにもわかるように示しています。それは次の3つ。
1 自分のからだは自分のもの。だから「決めるのは自分」(からだの自己決定権)
2 他の人に何をOKするか、の一線(境界線/バウンダリー)は人それぞれ。相手&その時ごとに変わるから、いつも同意を確認
3 何かを進める人は、相手が心から「同意」してるか聞く。黙ってたり、固まってる人は「同意」してない。(同意の基本)
文字にすると難しそうですが、動画や本では感覚的に伝わります。これを知っていると、不審なことや暴力の気配に気づきやすいし、逆に人の同意を無視して相手を傷つけたり、トラブルになるようなことも避けられそう。そんな知恵を知らなかった大人にも好評です。
その「同意」といえば、まさにレイチェルさんの来日された時期に日本の国会では性犯罪を裁く法律の改正案、「不同意性交罪」の審議のタイミングでした。そこで、レイチェルさんを囲み、「同意」をテーマにトークイベントを開催することに!
『おうち性教育はじめます』のフクチマミさんも質問。「性教育に抵抗が強いのは日本だけ?」
当日来場されたのは、性教育や性暴力予防に関わる皆さん。大ヒット中の漫画エッセイ『おうち性教育はじめます』の作者、フクチマミさん***もそのひとり。素敵なお着物姿でご登壇、漫画を描く中で気づいたことを質問されました。
***性教育の専門家、村瀬幸浩氏との共著
フクチ:日本人は性教育に不慣れで抵抗感も強く、生殖の話にばかり偏りがち。『同意』もその一部だと知らない人も多いです。アメリカでは抵抗ないのでしょうか?
フクチさんのご著書に「その本、すっごくクールですね!」とレイチェルさん♪ 「『同意』についてはレイチェルさんの絵本や動画に学んだことも大きい」と言うフクチさんの『おうち性教育はじめます」シリーズ第二弾、「思春期と家族編』も大人気!
レイチェル(以下R):アメリカでも一般的には性教育に抵抗があり、できれば何もしたくない人も多いです(笑)。でも、今の子どもたちはネットで不適切な情報に触れてしまいます。なので、性的なことを知る以前に、性教育で健全な人間関係を築く基礎を伝えることは、とても大切だと思っています。
「日本だけでなく、アメリカでもそうだとは知りませんでした!」。
と、フクチさんも驚き顔。
R:そうなんです。家庭によっても全然違いますよね。でも、性の話や同意の話を子どもたちとしておくといいことのひとつは、何かあったときに、子どもたちが話しやすくなることです。悪いことや理解できないことがあったときに、恥ずかしがらず、安心して家族に話せるようになります。あなたの本も、その力になっていると思います。
同じ方向に向かう作者同士、通じるものがあるようです。世界でも性教育はまだまだこれから、と聞いたフクチさん、ますます励みにされたご様子でした。
直球の質問!「『同意』って聞きにくい。どうすればいいですか?」
学生や20代で、同世代の意識の更新に関わる方も多くご参加! 関西や、留学先からのオンライン参加もある中、エディターで、10代向けメディアの運営にも携わるKai(カイ)さんからは“直球”の質問が。
10代向けのコミュニティ・メディアを運営する中で、10代から多く聞かれた声を届けてくれたKaiさん
Kai:相手に直接「していい?」って聞くのは難しいという声が10代には多いんですが、どうしたら「同意」を聞けるのか知りたいです。
そこ! 知りたいですよね。若者にこそ「ちゃんと同意の確認しようよ」と言いたいけど「無理!」とか言われそうで。確かに大人だって難しいのだから…。さて、レイチェルさんはどう考える?
R:そう、それはもちろん、誰だって聞きにくいんです。でも、たとえば横断歩道のあるところを車で横切る時は、人がちゃんと渡り終わったかを確かめてから車を進めますよね? それと同じなんです。ちょっと手間と時間がかかるけれど、間違えたらひどく人を傷つける事なので、相手が自発的に同意しているかを必ず聞くべきです。
人の命と同じく、絶対に守るべきなのが性的な「同意」の確認、というレイチェルさんの考えにKaiさんも深くうなずきました。
「横断歩道のたとえ、すごくしっくりきました。どういう言い方がいいのかは、お互いの関係性の中で考えて行けたらいいですね」と納得。10代にも「同意の確認は命の問題と同じ」だと、共有されるといいですね。
楽しく盛り上がったイベントの後半はさらに、深く掘り下げたお話も。期待の「後編」については、次回の投稿でお届けしますので、ぜひお楽しみに! 2023年に大きく動いた性暴力を裁く法律、「不同意性交罪」についても「後編」ではより詳しく語られます!
◇このトークの動画(コラム版ショート)は、↓こちらです。Youtube・OurAgeチャンネルでも公開中。全体の動画と質問ごとのミニ動画も公開予定です。twitter:「子どもを守る言葉「同意」って何?【公式】@Consent4kidsJp にて告知・紹介しますので、ぜひぜひご覧くださいね!
※本記事は、公開時以降の状況に合わせて、内容を一部更新しています