ユーミンと私のヒストリー
高校生のとき、オフコースとユーミンが好きな友達の影響で『昨晩お会いしましょう』ツアーの名古屋公演を観たのが私のユーミン初体験。
大学で上京し、武道館で観たYUMING VISUALIVE(ビジュアル+ライブの造語ですね)『DA・DI・DA』では、ステージに4台のエスカレーターが設置され、その派手な演出にド肝を抜かれたものです。
集英社に入社して配属されたノンノでは、16ページのとじ込み付録で「ユーミン・ソングブック」という企画もありました。1989年のことです。
おしゃれな写真やイラストとともに歌詞を掲載し、じっくり読んでその言葉やストーリー性を味わいましょう・・という記事がウケていた時代。
その付録の表紙には「デビュー当時の『ひこうき雲』から最新ヒット『リフレインが叫んでる』まで、厳選された19曲と特別インタビュー。そして各界のスターが選んだユーミンのベストソングガイド」と書かれていました。
ユーミンのライブで特にすごかったのは、1999年、2003年、2007年と4年に一度行われてきたYUMING SPECTACLE SHANGRILAシリーズ。
ロシアからサーカス団やシンクロナイズド(現アーティスティック)スイミングのチームを招き、ステージ上にプールやアイススケートリンクを設置して、ユーミンの音楽を軸としながら、誰も観たことのない規模で素晴らしいショーが繰り広げられていました。
構想4年、総製作費40億円とも50億円ともいわれているシャングリラシリーズは、リハーサルに2年かけていたそうで、終わってすぐに次を考え始めても、4年に一度が精一杯だったようです。
こちらは、シャングリラⅠのパンフレット。
中には5つのシーンに沿ったイメージイラストやステージ写真、出演者のプロフィール、そしてコメントなどが、それぞれ薄い冊子になって入っていました。
イラストも色使いも、今見てもおしゃれです!
こちらはⅡとⅢのパンフレットなのですが、出版社にいると、このボックスタイプのカバーにするだけで、いかにお金がかかっているかがわかります(笑)。
普通のライブであれば、より狭い会場で、より近い場所で演奏してもらえることが嬉しかったりしますが、ユーミンに限っていえば、私はホールよりもアリーナツアーのほうが好きかもしれません。
1972年7月5日にシングル『返事はいらない』でデビューしたユーミン。もともとは作曲家志望で、自分で歌うことは考えていなかったのだそう。
2018~19年にかけて行われたデビュー45周年を記念してのTIME MACHINEツアーは、これまでのコンサートの名場面を再構築するという試みで、ハイライトの連続。
私は5歳上の姉と一緒に名古屋の日本ガイシホールで観たのですが、ユーミンのライブは初という姉も、何度も観ている私も、共に大満足な内容でした。
「こんなショーにしてしまったら、これで引退か?なんて思う人もいるかもしれませんね。言っておきますけど、これで終わりかと思ったら大間違い! まだまだ聴いてもらいたい作品や観てもらいたいショーのアイデアはたくさんありますからね。次のショーでまたお会いしましょう」
そんなMCのとおり、2020年の12月には39枚目のオリジナルアルバム『深海の街』をリリースし、2021年9月から2022年7月9日まで計63公演のホールツアーを敢行。
と同時に2022年7月5日にデビュー50周年を迎え、2023年5月13日の横浜・ぴあアリーナMMから12月28日の名古屋・日本ガイシホールまで全54公演、57万4000人を動員するという『50th Anniversary 松任谷由実コンサートツアー The Journey』に突入するのです。
69歳にして(2024年1月19日には、なんと70歳に!)、ほぼ毎週末の土日に大規模なライブを行い、ふと見るとテレビにもガンガン出演しているユーミン。影武者でもいるのでしょうか⁈
いよいよライブ会場へ
私が行ったのは、9月24日(日)の横浜アリーナと
10月28日(土)の日本武道館。
実はこの2か所の席が対照的で、抽選で外れまくり、第5次先行申込でようやく当てた横浜アリーナは、スタンド席の一番上。
ファンクラブに入っている友人に取ってもらった武道館は、なんとアリーナ席な上に、入退場するユーミンが真横を通っていくというスペシャルな席でした。
(電子チケットなので、スマホの種類によって微妙にサイズが違うようです)
会場はセンターステージで、海賊船のセットが斜めに配置されています。
(上の図は武道館のアリーナ席の案内図です)
海賊船の船首と船尾に立てられたマストにはそれぞれ1人乗りの小さなエレベーターがついていて、1曲目は船尾のてっぺんからスタート。横浜アリーナでは、むしろ目の前。暗い中、エレベーターで昇っていくユーミンの姿も観ることができました。
(ここからはネタバレ注意!)
以前、「私は『高所平気症』なの」と言っていたユーミン。
クライマックスの『LOVE WARS』では、口から火を吹いて動き回るドラゴンの頭に乗って、実に凛々しいパフォーマンスもありました!
9人のダンサーによる、上から吊るされたロープやサークルを使ってのアクロバティックなパフォーマンスは、シャングリラのサーカス団を彷彿させたりもします。
デジタル全盛の時代に、映像を駆使するのではなく、ある意味アナログな、肉体や人の力の素晴らしさを見せてくれる演出は、やっぱりユーミンらしいなぁと思うのでした。
衣装を手掛けたのは、ニューヨーク在住の世界的なファッションデザイナーANNA SUI(アナスイ)。
ブルーのストライプを効かせたユーミンの海賊ルックだけでなく、ミュージシャンもダンサーもステージの世界観に合わせた衣装が実に決まっていました。
ユーミンは途中、マーメイドを思わせるアシンメトリーでフェミニンな水色のドレスも披露。
透けて揺れる薄いカーテンに囲まれ、せり上がった円形ステージの中央でマーメイドのように横座りのまま、しっとりと『TYPHOON』を歌い切るのは、地味に腹筋と背筋がきつそう・・。いや、そもそも大きな帽子の海賊ルックで歌い踊っているんだから、ユーミンの鍛え方、ハンパないですね。
武道館のアリーナ席で見る原寸大(笑)のユーミンにはもちろん感激したけれど、横浜アリーナの一番上の席から会場全体を俯瞰して観るのも、それはそれで良かったです。
さらに、どちらの席も後ろにお客さんがいなかったので、心置きなく立ち上がってノルことができました。
ユーミンのお客さんもまぁまぁな世代なので、スタンド席でもアリーナ席でも、できれば座って観たい人もいるんですよね。
が、しかし!『埠頭を渡る風』からの『真夏の夜の夢』で座ってるなんて、ありえない‼ 最上段の席では「怖っ!」と思いつつ、思う存分、楽しみました。
「今の私が歌っていれば、過去の作品であっても古びない。聴いてくれるみんなの中で上書きされて、どんどん更新されていくと思うから」
デビュー40周年の年に、自分の体でパフォーマンスすることの大切さをユーミンは雑誌のインタビューで語っていました。
「変わらないために変わり続ける」ことが人生のモットーだとも。
こんなにカッコイイ人生の先輩。これからもライブを観続けていきたいなと思うのでした。